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未熟な童話・そこに存在(ある)もの

 今日はとてもいい天気です。晴れ渡った青空には一つ白い小さな雲が浮かんでいて、その反対の向こうにはもう一つ、雨を降らす黒い雲が浮かんでいます。

 どちらも別に仲が悪いわけでもありませんし、喧嘩をしているわけでもありませんが、二つの雲は呑気にプカプカプカと、風に吹かれて気持ちのいい青空を、当て所なく黙って気ままに漂っています。

 ちょっと下を見れば、雀の家族が旅行へ出かける途中でしょうか。群れをなして気持ち良さそうに、羽を思い切り伸ばしてチュンチュンチュンチュンと、楽しそうに飛んでいます。黒い雨雲は、ちょっぴり羨ましそうに雀の家族の声に耳を傾けています。
 その時です。雀の家族は白い雲に向かって何やら挨拶がてら、言葉を交わしています。

「こんにちは。今日はどうか一日、このままいい天気でいてください。私たちは今日、家族皆でピクニックに行くのです」

 白い雲は笑顔で雀の家族を見送ると、また風に吹かれてプカプカプカプカと空を気ままに漂い出しました。雀の家族は、これから楽しいピクニックに行くというのに、雨に降られては大変です。黒い雨雲の方には何も言わず、そっぽを向いてさっと飛んで行ってしまいました。

 こんな光景は雀の家族に限らず、黒い雨雲にとってはいつものことでした。黒い雨雲を見る者たちの言うことは、いつも決まっていました。

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