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ビジネスイネーブルメント人材に求められる「解像度をあげる力」とは?

自分自身がビジネスイネーブルメント人材を目指す、もしくはビジネスイネーブルメント人材を組織内で育成するにはどうすればいいか。今後しばらくは、その観点でのNOTEを書いていきたいと思います。

私自身は、これまでのキャリアが広告代理店やコンサルティングファームであったことからも、専門的な実務経験などを積み上げてきたからこそ体得することができる能力だと信じてきた時期がありました。ただ、結論は逆で、これからの事業開発や事業活動において重要なスキルになるビジネスイネーブルメント能力は、「反復することで習得できる=再現できる形でスキルやマインドを理解する」ことが何より重要でした。これは、私自身が自社の人材育成を担う中で実際に能力が身につく人、つかない人の差を見てきた結果であり、多くのクライアント企業の事業開発支援をする中で組織の事業開発能力の向上が果たされている企業に共通する特徴だった点です。

あらためて、ビジネスイネーブルメントとは、単に専門的なスキルを身につけましょうというのではなくて、これからのビジネスパーソンのベース能力として必要な人材要件になります。そして、基礎トレーニングのように繰り返しトレーニングすることで、一度身についたら失うことがないポータブルスキルになっていくのです。

ビジネスイネーブルメント人材にとって最も重要なスキルのひとつが「解像度をあげる力」です。この力は、単なる問題解決の能力ではなく、課題や顧客ニーズ、ビジネスの現状を細かく見極め、それを明確な行動に変える力を指します。

現代のビジネス環境は、複雑さが増し、解決すべき問題も一見すると曖昧で捉えにくいことが多くなっています。特に、大企業においては、組織全体の動きや利害関係者の視点を考慮する必要があり、ただの表面的な解決策ではなく、根本的な課題を発見し、その本質を捉えることが求められます。そのため、ビジネスイネーブルメント人材は「解像度をあげる力」を持つことで、より具体的で効果的な解決策を導き出すことが可能になります。

「解像度をあげる力」は、課題の整理や発見から、なぜその課題が未解決であるかを理解し、解決に向けたアクションプランを立てるまでの一連のプロセスにおいて特に成果を発揮します。本記事では、このプロセスに対応する3つのフレームワーク「課題発見マンダラート」「だとしたらフレームワーク」「未解決理由深堀りフレームワーク」について詳しく紹介し、それぞれが持つ役割や順番に考える意義について解説していきたいと思います。


解像度をあげるための第一歩:課題発見マンダラート

LiB Consulting「ビジネスイネーブルメント研修」テキストより抜粋

課題発見マンダラートは、問題や課題を洗い出し、特に重要なものを絞り込むためのフレームワークです。具体的には、まず自分たちが直面している課題や顧客が抱えている問題をリストアップし、それをマンダラート形式で整理していきます。この形式は、課題を中心に据え、その周辺に関わる関連する問題や要因を書き出すことで、全体像を視覚化するのに役立ちます。

なぜこのステップが重要なのか?

課題発見マンダラートを最初に使用する理由は、問題を包括的に捉え、細分化することで、解決すべき本質的な課題を明確にするためです。多くのビジネスパーソンが日常業務の中で遭遇する課題は、実際には一部の表層的な問題に過ぎません。例えば、売上が伸び悩んでいる場合、その原因としてマーケティング不足が挙げられることがありますが、それが本当に根本原因かどうかを検証する必要があります。

このフレームワークを使うことで、表面的な課題の裏に潜んでいる根本的な要因を探り、課題同士の関連性を可視化することが可能です。たとえば、新しいサービスの開発が進まない場合、その背景には技術的な制約や社内のコミュニケーション不足など、様々な要因が絡んでいることがわかるでしょう。

そして、実務をしている人が、このマンダラートを実際に作成すると痛感することがあります。身の回りの課題から見ていきましょうというと、「自分の業界や仕事についてはもうわかってるよ」というスタンスの人が基本的には多いです。ただ、いざ書き出してみるとこのフレームワークでは64個の課題を抽出していくことになるのですが、それだけ課題を幅広く考えることは普段はほとんどなくて、多くの人がこのワークを行うと想像以上に埋められないこと、書き出せないということを実感されます。大事なのは、検討すべき課題の量をまずしっかり出していくことなのですが、案外、日常の業務ではそういう課題を観察する力が鍛えられていないのです。

未来を見据えた課題設定:だとしたらフレームワーク

LiB Consulting「ビジネスイネーブルメント研修」テキストより抜粋

課題を洗い出したら、次に「だとしたらフレームワーク」を使います。このフレームワークは、5年後を想定し、未来のビジネス環境や社会の変化を予測しながら、解決すべき課題を再設定するためのものです。これは、現時点で解決しようとしている課題が、将来においても有効であるかを確認するための重要なステップです。

だとしたらフレームワークの活用方法

このフレームワークを活用する際には、以下のような質問を投げかけてみましょう。

  • 「5年後の技術や市場環境はどう変化しているか?」

  • 「その変化によって、現在設定している課題はどう影響を受けるか?」

  • 「この課題を解決するためには、どのような未来を見据えた解決策が必要か?」

例えば、現在の課題として「地方の高齢者向けの商品配送システムが整備されていない」という問題があったとします。これを5年後の未来に照らし合わせると、技術の進歩やモビリティサービスの発展によって、移動販売車や無人配送サービスが普及している可能性があります。このように、未来の変化を見据えて現時点の課題を再評価することで、より先進的かつ持続可能な解決策を導き出せるのです。

だとしたらフレームワークの意義

このステップが重要なのは、未来を考慮しない解決策は一時的なものでしかなく、長期的な視野で事業の発展に寄与しない可能性があるためです。ビジネス環境は急速に変化しており、技術や顧客ニーズも常に進化しています。そのため、現時点での課題を解決するだけではなく、5年後、10年後を見据えた解決策を提案できるかどうかが、ビジネスの成功に直結します。


解決策を見つけるための最終ステップ:未解決理由深堀りフレームワーク

LiB Consulting「ビジネスイネーブルメント研修」テキストより抜粋

最後のステップでは、「未解決理由深堀りフレームワーク」を活用して、なぜ特定の課題がこれまで解決されていないのか、その理由を深く掘り下げていきます。このプロセスでは、既存の取り組みがなぜ効果を上げていないのか、また、課題解決に向けたボトルネックがどこにあるのかを詳細に分析します。

未解決理由深堀りフレームワークの使い方

まずは、課題がなぜ解決されていないのか、その理由をリストアップします。次に、その理由に対して、なぜ既存のプレイヤーがその課題解決に取り組まないのかを考えます。例えば、コストや技術的な制約、組織内の抵抗などが挙げられるでしょう。そして最後に、それらのボトルネックを乗り越えるために、どうやって解決策を構築するかを考えます。

このステップは非常に重要で、解決策を導くための鍵となります。例えば、新しいマーケティング手法が取り入れられていない理由として「デジタルリテラシーの欠如」がある場合、教育やシステム導入の必要性を見極めることができます。こうして、ボトルネックを明確にすることで、実際のアクションプランが具体的に見えてくるのです。

このフレームワークを最後に用いる理由

未解決理由深堀りフレームワークを最後に使うのは、課題を発見し、その未来の可能性を評価した後に、実際に解決に向けて行動を起こすための障害を明確にする必要があるためです。このステップを飛ばしてしまうと、良いアイデアがあっても実現の段階で失敗してしまうリスクが高まります。ボトルネックをしっかりと把握し、現実的な解決策を見つけることで、事業開発が成功する確率を高めることができます。


まとめ

「解像度をあげる力」は、ビジネスイネーブルメント人材にとって不可欠なスキルです。課題を見つけ、未来を見据え、そして未解決の理由を深掘りすることで、より具体的で実行可能な解決策を導き出すことが可能になります。課題発見マンダラート、だとしたらフレームワーク、未解決理由深堀りフレームワークという3つのフレームワークを順番に使うことで、ビジネスの現場における課題を解決するだけでなく、長期的な成功を見据えたプロジェクトを推進することができるはずです。

私自身、様々なフレームワークや思考法、コンサルノウハウを使って日々の仕事をしていますが、つきつめれば何を常に考えているかといったら、この3つのステップで課題の解像度を高めて解決策を見出すということに集約されました。

これらのフレームワークでとにかく思考のトレーニングをしていくことで、「解像度をあげる力」は必ず向上していくことが可能です。ぜひ、取り組んでみてください。

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