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KPIはいくつ設定することが最適なのか?

ほとんどの会社が仕事や組織が仕事の成果を測定するためにKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指数)を設定しています。KPIは、組織が目標に向かって効果的に動くための重要なビジネスツールです。

しかし、多くの組織がKPIの設定や設計に苦労しているようです。よく耳にするのは「適切なKPIの設定ができない」「KPIが形骸化している」といった問題です。

KPIはビジネスの現場でひんぱんに使われる用語ですが、適切な運用はなかなか難しいものです。


KPIの基本

KPIは「Key Performance Indicator」の略で、日本では「重要業績評価指数」と訳されがちですが、この表現だけではその本質を誤解する恐れがあると思っています。より適切に意訳すると、「事業を成功させるためのカギとなる行為の成果を数値化したもの」と表現できると考えています。

通常、KPIはKGI(Key Goal Indicator:経営目標達成指標)と一緒に利用されることが一般的です。KPIとKGIの関係性については、本記事の後半でさらに詳しく説明します。

営業組織では、KPIを用いて、売上、成約件数、顧客提案数、見積り提出数、顧客アポ取得数、顧客架電数、受注率や失注率など、さまざまな営業の行動や成果を指標として管理していますが、これらが全て実際にKPIとして機能しているわけではありません。

KPIは「事業を成功させるためのカギとなる行為の成果を数値化したもの」です。この説明を踏まえてKPIを設定する際は、「事業を成功させるためのカギ」となる要素を明確にし、これを数値化することが求められます。

例えば、営業組織が月次売上げ1,000万円(KGI)を達成するには、一定数の顧客提案が必要である組織があります。この組織のKGIを達成するために、過去のデータから50件の提案が必要であると判明した場合、その提案数がKPIになります。商談から提案機会を見つけることが組織の主な課題であり、これを解決することがKGIの達成に直結します。

営業組織では様々な問題や課題が常に存在しますが、なかでも組織として解決すべき重要な行動が、事業を成功に導くカギとなります。

この例では提案数を増やすことがこの営業組織の課題でした。そもそも提案の前段階の顧客アポ数が少なく、それを改善することが最優先である組織の場合は、提案数の代わりにアポ取得数をKPIとして設定することが考えられます。

このようにKPIを設定するときには、何か自組織の「事業を成功させるためのカギ」であるかを明らかにした上でKPIを設定する必要があります。


KPIの運用で気をつけておきたいこと

KPIの運用ではいくつかの注意点があります。自分自身や当社で失敗した体験をみなさまに共有させていただくことで、みなさまのKPI設定・設計や運用のお役に立てますと幸いです。

KPIはKGIの先行指数であること

KPI設計においては、それがKGIの先行指標であるべきということが基本である、と考えています。先行指標とは、特定の結果が現れる前に動きを示す指標のことです。

効果的なKPIは、それが達成を目指すKGIに直接関連する業務プロセスに密接に関連している必要があります。例えば、特定の売上金額をKGIとした場合、KPIはその売上を生み出すプロセスに関連する指標でなくてはなりません。この選ばれたプロセスは、KGIの達成に不可欠なものであるべきです。

営業活動において、提案書の提出数は良い例です。コンサルティングのように、顧客に提出する提案書そのものが商品であり、提案書の提案書が必要不可欠である場合、提案書の提出は売上を生み出すための重要なプロセスとなります。そのため、提案書の提出数をKPIと設定すると、これは売上というKGIを達成するための有効な先行指標になります。

このように、KPIがKGI達成するための具体的な業務プロセスに関連している場合、KPIはKGIの達成を効果的に予測する先行指標として機能します。

KPIは自助努力で達成できるものであること

KPIは、日々の変化を注視し、必要に応じて適切な対策を講じることが重要です。KPIの数値を改善するためには、組織内での努力が不可欠です。事業成功のカギとなるプロセスの結果がKPIであるため、そのプロセスを改善することでKPIが向上するはずです。そのため、組織は日々のプロセスを見直し、継続的な改善を行う必要があります。

例えば、営業部門のKPIとして、マーケティング部門や他の部門からの商談依頼数を設定する場合があります。商談依頼数が増えれば、KGIである売上の増加が期待できるため、表面的には有望なKPIと考えられます。しかし、他部門からの商談依頼数を増やすためには、営業部門単独の努力ではコントロールが難しいため、このKPIを改善するためには他の部門の協力が必要です。

この例のように自助努力だけでは改善が見込めないKPIは、適切なKPIとは言えません。営業部門のKGIの先行指標として考えられるかもしれませんが、自助努力で改善が困難なため、KPIとしての運用が形骸化しやすくなります。したがって、これは営業部門が注視すべき指標ではあるものの、KPIとしての運用には不向きです。


KPIの時系列の変化にも着目する

KPIが予定通りの数値に達している場合でも、その数値が上昇傾向にあるのか、下降傾向にあるのかによって、組織の対応が異なる必要があります。

例えば、KPIが目標値の100%を示しているとします。このKPIが先週110%を達成していた場合と、先週が90%で今週が100%に改善した場合では、組織の対応は大きく異なります。

KPIが先週から下降気味の場合、次週に目標値を下回る可能性が高いため、直ちに対策を立てて実行する必要があります。つまり、KPIの現在の達成度だけでなく、その時系列における変化を捉え、上昇や下降の動きを分析し、適切な対応策を検討することが重要です。

この例の2つの状況ではKPIが目標値の100%という点は同じですが、その変化の様子が異なれば組織の対応は異なるということです。

KPIは事業成功のカギとなる行動の成果を数値化したものです。事業運営ではKPIの管理も含めて変化に特に注目し、KPIの数値管理を通じて適切な運用が求められます


KPIはいくつ設定することが妥当か?

KPIは事業成功のためのカギとなる行為の結果を数値化したものです。「カギ」となる要素は数おおく存在すべきではないため、多くのKPIを設定することは推奨されません。

基本的に、単一のKPIで十分な運用が可能ですが、KPIの変化の原因を特定するために、KPI以外の数値も積極的に管理することは必要です。ただし、管理すべき数値が多数あっても、KPIとしては必要最小限に絞り込むことを推奨します。

KPIが多数存在する場合、組織内での混乱を招くリスクがあります。1つのKPIに焦点を当てることで、組織全体の団結力や士気が高まります

例えば、営業組織が受注金額をKGIとして設定する場合、提案数をKPIに設定することが可能です。もちろん、提案成功率や受注成功率などもKPIになり得る指標ですが、その時点での営業戦略が行動の「量」を増やすべきであることを重視しているなら、提案数のような量に着目したKPIを設定すべきです。提案成功率などの質に関する指標は、この例ではKPIではなく、単なる追跡対象として数値を記録しておくことが適切です。

この例では、提案提出数が事業成功のための重要な行動量としてKPIに定められています。このように組織のメンバーにもわかりやすい指標を設定することで、組織の団結力や士気を高めやすくなります

また、量と質を同時にKPIとして設定すると、両方を満たすことが難しくなり、組織が混乱しやすく、KPIの形骸化が進みやすくなります。量と質はある意味で対立関係にあるためどちらかを優先せざるを得ない営業現場の判断が必要とされるからです。

このような理由からも、KPIはできるだけ少数に設定することが鉄則です。可能な限り、KPIを1つに絞ることが最も効果的です。量と質で悩んだ場合は、量を優先してKPIを設定することが一つの有効な戦略です。具体的な詳細は別の機会に説明する予定ですが、これもKPI設定の基本的な鉄則と言えます。


さいごに


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