論文ヲタク誌#2 【乾乳時治療:乳頭内シール+クロキサシリンの乳房炎に対する有効性】
はじめに
参考にする研究は2010年にD.J. Runcimanらによって報告された「The use of an internal teat sealant in combination with cloxacillin dry cow therapy for the prevention of clinical and subclinical mastitis in seasonal calving dairy cows」です。
和訳すると「季節分娩性の牛において、臨床性および潜在性乳房炎を予防するための、乳頭内シールとクロキサシリンを併用した乾乳時治療」ってとこですかね?わかりにくかったらすみません。
乳頭内シール(ITS:Internal Teat Sealant)とは乾乳時に乳頭口を封入するための製剤です。
乳頭の外部に貼り付ける乳頭シール(Teat Sealant)とは異なります。
分娩直後の乳房炎の発生は、乾乳期に環境性微生物が感染することが主な原因と言われています。これは乾乳期の移行期に乳頭が緩くなることで、病原菌が侵入しやすくなるためです。
ITSの使用の目的は乾乳期の病原体の侵入を物理的に阻止することにより、環境性微生物の侵入を防除することにあります。
さらに、抗生物質と組み合わせることですでに乳房内に侵入している病原菌を殺菌することができ、次の泌乳時の新規発生を予防することに繋がると考えられています。
今回はITSと抗生物質(クロキサシリン)の組合せによる乾乳処置の有効性について解説してこうと思います!
【本日の英単語】
teat:乳頭
antibiotic:抗生物質
Somatic Cell Count:体細胞数
relative risk:相対リスク
研究の概要
⚫︎オーストラリア・ビクトリア州・マフラに所在する6酪農場(2013頭)
⚫︎1日あたり平均30Lの泌乳量
⚫︎季節繁殖:乾乳期はどの牧場も5月から7月の間(オーストラリアの気候は5月から7月は冬)
⚫︎乳頭内シール+クロキサシリンの群(ITS+CL)と、クロキサシリンのみの群(CL)で分娩後の臨床性乳房炎の発生率を比較
⚫︎加えて、乾乳前の体細胞数を調べて25万を基準に高体細胞群と低体細胞群に分類し比較
⚫︎泌乳日数100日までの臨床性乳房炎発生率を記録
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