「嚥下を助ける姿勢」
ふとした瞬間に水分が気管に入ってむせることがありませんか。飲み込むにも力やタイミングが重要で、老化や病気で低下することがあります。機能や能力を維持することはもちろん大切ですが、姿勢を調整することでリスクを軽減できる場合があります。
食事の時の良い姿勢というと・・
足底は床に、座面には両側の座骨をきちんとつけて下半身を安定させます。そうすることで上肢が使いやすくなり、楽に食べ物を口に運べます。また、頚部の嚥下筋が効率よく働くことで誤嚥を防ぎ、さらに舌と上顎で食べ物を押しつぶす力が高まることも期待できます。
嚥下機能、摂食能力が保たれている場合は上半身をしっかり起こし、飲み込んだものが流れやすいようにします。この時に円背があると顎が上がりやすく、相対的に頚部が伸展してしまいますのでクッションや椅子で調整しましょう。
頚部の屈曲(前屈)・伸展(後屈)の影響は・・・
頚部を屈曲することで、食塊の通路が広がる、喉頭蓋谷が広がり、食塊と粘膜の接触面積が大きくなるので嚥下反射が起きやすくなる、喉頭ひだのメカニズムで気道の保護が行われるなどの利点があります。
逆に頚部伸展位では、前頸筋群が緊張し嚥下反射が起こりにくくなったり、喉頭の挙上制限により誤嚥の危険が高くなります。
また、頚部は軽度屈曲位で気道へは前方に角度がついていて、流れにくくなっていますが、伸展することで気道が開き誤嚥しやすくなってしまいます。嚥下機能が低下している場合は特に注意が必要です。
誤嚥リスクを下げる為の姿勢を考えると・・
垂直位では咽頭に誤って流れ込んだ時に誤嚥の危険性が高くなるため、リクライニングの椅子やベッドの背上げ角度を30度~60度で調整することも考えます。
解剖学的に垂直位の座位では、気管が前で食道が後ろにあります。仰臥位に近づくほどに気管が上で、食道が下になるため重力の関係で飲食物が気管に入りにくくなります。
誤嚥しにくいことと嚥下しやすいことは違う・・・
前述の頚部の屈曲ですが、過度の屈曲や屈曲だけではうなずくような動作が行いにくい場合があり、下顎と胸の距離をとりながら顎を引いた姿勢を調整します。麻痺がある場合には麻痺側を上にして健側で嚥下がしやすいようにと考えたり、それぞれの身体機能や能力に応じて調整していきます。
参考文献
脳卒中の摂食・嚥下障害第2版 藤島一郎 著
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