縫製会社の社長、社内行事を考える。|#2 80歳へのバースデー・サプライズ
人生100年時代」と言われるようになって随分経つように思いますが、みなさんは何歳まで働くイメージをお持ちでしょうか?
今回はダイナンの最年長、百合子(ゆりこ)さんの80歳をお祝いしたバースデー・サプライズのお話です。ダイナンが考える「働く」について、何か感じていただければ嬉しいです!by ダイナンnote編集部
真昼間のサプライズ。
ダイナンnote編集部(以下、編) リニューアルした休憩スペース、大広間がみなさんに使われ始めて、もう半年くらい経ちましたかね。最近の使われ方はいかがですか?
ダイナン代表 但馬(以下、但馬) 月一の朝礼を、必ず大広間でやるようになったのと、「何かやるなら大広間」いう認識が定着してきた感じがありますね。あと、大広間でお昼を食べる人が増えたように思います。言ってみるなら、「借り物」と言う感じではなくなってきた感じかな。お昼、一人の人もグループの人も、思い思いに過ごせているような。
編 大広間、という名前に相応しくなってきましたね!では今回は、カレーパーティーに続いて行われたバースデー・サプライズのお話を伺いたいと思います。主役となったのは80歳のスタッフ、百合子さんですね。
但馬 そうですね。傘寿(さんじゅ)のお祝いしようと思いまして。
編 いつ思い立ったんですか?
但馬 年度初めかな、一人ひとりの名簿を見てた時ですね。生年月日と年齢、入社年月日とか、一覧になったリストを見る時があるんですよ。その時に「ああ、百合子さん80歳か」と。そこから勝手に考え始めた感じです。
編 100年時代と言われて久しいですけれど、80歳で現役って、百合子さんすごいですよね。
但馬 そうなんですよ。先代の頃からお勤めされてるんで、もう40年前かな。私が小学生の頃から。
編 思いついて、まずどうしたんですか?
但馬 百合子さんは主に子供のTシャツを担当している班にいるので、縫製作業をまとめている課長に相談しました。「百合子さんのお祝いをしたいんだけど、スケジュールや進行の相談できるかな」と。ケーキや花は準備するからと伝えましたね。それで、百合子さんと班が同じ仲良しチームが飾りつけや進行、内容などすべて担当してくれました。
編 そしていよいよ、当日を迎えたわけですね。
但馬 誕生日の日は休日だったんで、休み明けの10月15日にやりました。
編 サプライズで、「全体昼礼をしましょう」っていきなり招集をかけたんですよね(笑)。
但馬 そうですね。百合子さんが動く範囲のところはいつも通り、いるべき人が周りにいて。他のみんなは大広間に集合していた、という。入ってきたタイミングでみんなで歌い出したんだけど、あまりに急なことで百合子さん、端っこから出てきませんでしたね。
編 出勤者ほぼ全員だから、だいたい80人くらいですか。歌われたらそうなりますね(笑)。
但馬 大広間に入ってくるなりすぐ、壁際に隠れちゃったんです。なので、当然ながらハッピーバースデーの曲とタイミングは合わない。ご本人も恥ずかしがって中に来ない。歌が終わる。で、もう1回流す。 というのを、結局3回は繰り返しましたね。
編 3回歌った後に縫製課の課長さんが音頭を取ってくれて、クラッカーが鳴ったという(笑)。
但馬 はい、やっと落ち着いてケーキの前に座ってくれて、80の数字のと、8本立てたローソクの火を消してくれましたね。
歳を重ねての「幸せ」とは。
編 その後は百合子さん、どんなことをお話されましたか?
但馬 まずは、びっくりしましたっていうことと、こんなにお祝いしてもらってありがとうございます。 ということ。あとは、長く働かせていただいてありがたい、これからも健康に気をつけます。みたいなことを話してくれましたね。うん。
編 それを受けて但馬さんからはなんと?
但馬 インスタにちょっと載っけましたけど(ダイナンのインスタは、時々社長がアップしてます!)、80歳まで働かれてるっていうのは最高記録だし、健康に留意してもらって、末永くうちで働いてほしい、記録を更新し続けてほしい。ってことをお伝えしました。あとは...、1年半ぐらい前に、百合子さんは手術をされてるんですね。義理の娘さんが働く病院だったんですけど、幸いにも手術は成功して。その時の第一声が「社長さんによろしく伝えてください」って。それをこう、わざわざ娘さんが伝えに来てくれたんですよ。会社まで。電話とかじゃなくて。手術が決まったことも、術後のことも身内より先にまず私に伝えてくれたことが思い出されます、と、そのことをお伝えしました。
編 身内のように思ってもらえてるってことですね...。とにかく無事で良かった。
但馬 この業種って腕に技術身につければ長く働けるんですね。そうなると、人との関わりがあって、 役に立てる仕事があって、それで対価を得ることができる。いくつになってもできる仕事って、人生100年時代にはとてもいいことじゃないかなって、百合子さんから教わってるように感じるんです。
編 仕事を辞めてしまうと、社会との関わりが一気に減る、って言いますからね。
但馬 うんうん。コミュニティがなくなったり、やらなきゃいけないことがなくなったり。そうなると、社会に役立ってるって感覚も当然なくなっちゃうと思うので。
編 関わりを持てて、社会の役に立てて、対価を得ることができる。その三点、当たり前に思えるようで、とても有難いことですね。
但馬 そう、だから働いてもらえる間は働いてくれればいいと思います。一度、60歳、65歳で辞めるべき、みたいな一般的な風潮で辞めようとされてたんですけど、もう「棺桶に片足突っ込むまでやってください」って、今は冗談半分で言ってます。
編 そうしたらなんて?
但馬 「もういらない、って言われるまで頑張ります」って言ってくれてますね。
80歳、レジェンドは記録更新中。
編 ちなみに今、60歳以上の社員さんって、どれくらいいるんでしたっけ?
但馬 10人ぐらいかな。約一割ってとこですね。定年が65歳になったんで、その年になったら一年おきに続ける意思を確認するようにはしてますね。急に辞めると言われても、後の人を探したり、育てたりしないといけないので。
編 働こうと思えば自分の意思で長く働ける。その選択肢があるっていうのは改めていいですね。
但馬 その点、異色の人も1人いますね。60歳で定年になってダイナンに来た男性です。お洋服が好きで、若い頃は縫製工場にいたのかな。 前職は、確か大手食品メーカーやったかな。定年になってわざわざ長崎から単身赴任でうちに来て、アイロンかけてらっしゃいますからね。本当にいいんですか?って、一応はちゃんと聞きましたけどね。うん。夫婦の幸せの形や関係性も、それぞれでしょうから。
編 インスタには、百合子さんのことを「レジェンド」って書いてましたけど、次のレジェンドは誰なんですか?
但馬 再来年、80歳になるタチバナさんという方がいますね。その方も僕がちっちゃい頃からいらして、 タチバナさんには双子の娘さんがいるんですけど、その二人もうちで働いてます。
編 親子二世代で!三世代勤務もない話ではないですね。年を重ねると、技術が蓄積されていく一方で、例えば目が見えづらくなったりして細かい作業がしにくいとか、やっぱりあるんですかね。
但馬 確かに、糸を通しづらいとかはあると思いますけど、勘で通しちゃいますからね(笑)。この人たちに任せたら、これだけの仕事はお任せできる、っていう絶対的な安心感はあります。人生経験も豊富ですから。百合子さんなんかは結構コミュニケーション取られる方ですから、きっと若い人の話を聞いてあげたり、アドバイスしたりとか、してるんじゃないかな。「おばあちゃん、こう言ってるから」みたいな感じで。
編 レジェンドは、みんなの頼れるおばあちゃん的な存在だと。
但馬 うん。おばあちゃん、つったら怒られますから…。「人生の先輩」ですね。うん。先輩。誰よりも人生の先輩ですから。
後日談〜百合子さんインタビュー「好きだから、続いてきた」。
編 後日、百合子さんにインタビューする機会をいただきましたので、ぜひお読みください!
ダイナンで働いて44年になります。但馬社長が3、4歳の頃かな。会長に連れられて、ちょろちょろ工場に来てた時からです。一度、65歳くらいで辞めようとは思ったんですが、当時夫を亡くしたんですね。家に一人でいてもやることもないし、但馬社長のお声がけもあっていつの間にかこの年まで働いてきました。やっぱり、好きだから続いてきたのだと思います。昔から編み物をしたり、子供のものを縫ったりしてきましたから。あとはみんなとの交流ですね。
誕生日は思ってもみなかったので、本当に嬉しくて涙が出ました。私の名前にちなんで、百合がメインの花束と、立派なケーキをいただきました。あとは、似顔絵の入った膝掛けです。とても大きなもので、1m四方はあるんじゃないでしょうか。もったいなくてテーブルに飾ってますけれど、額に入れたいなと思っています。いつ辞めたらいいか、頭をよぎることもありますが、社長には「まあ、そう言わんでください」と言っていただけますし、こんな職場他にないですから。必要とされる限り、続けられたらと思っています。(百合子さん談)
以上、80歳のレジェンド、百合子さんのバースデー・サプライズのお話と、ダイナンが考える働き方や、歳を重ねてからの幸せについてのお話でした。 ハーバード大学による75年以上にわたる追跡調査でも、「私たちの幸福と健康を高めてくれるのはいい人間関係である」と結論づけられていました。百合子さんのように、「役に立てているという実感が持てる関わり合い」こそが、健康的な長生きの秘訣なのかもしれませんね。
では次回は、「ダイナンの若手がアビリンピックに挑戦!」の予定です。お楽しみに!