見出し画像

メダルを取ったのは、障害者の新人たちでした。


「アビリンピック」をご存知ですか?これは《ability(技能)+Olympic》の造語で、「JEED(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)」が実施している「障害者技能競技大会」のことです。100人近い社員がいるダイナンには6人の障害者が働いており、そのうち2人が、今年のアビリンピックの大分大会に出場しました。今回は、障害者を取り巻く企業の現状と、ダイナンの目指すこれからについて、お伝えしたいと思います!by ダイナンnote編集部
※アビリンピック「障害者技能競技大会」にならい、この記事では「障害」と表記しております。

障害者雇用に、力を入れているわけではない。

ダイナンnote編集部(以下、編)アビリンピック。全国障害者技能競技大会。昨年に続き、ダイナンからは2度目の出場ということですが、正直初めて知りました。
ダイナン代表 但馬(以下、但馬)実は、私も去年知ったんです。JEEDと関係が生まれまして、出ませんか?と言われて。全国大会だと結構出場者が集まるんですけど大分はそうでもなくて、盛り上げたい、ということで。
 ホームページを見てみると、今回2人が出た「洋裁」の他に、ワープロ、表計算、オフィスアシスタント、 ビルクリーニング。喫茶サービス、製品パッキング、 写真撮影、喫茶サービス…ハンダづけにフラワーアレンジメント、コンピュータープログラミングなどなど、仕事になる技能を競うんですね。

但馬 元々、企業には法定雇用率と言って、障害者の方を何人雇ってくださいね、という決まりがあるんです。今は2.5パーセントやったかな。40人以上雇用している事業主は1人以上を雇用しなければいけない、という。以前から少しずつ上げていってて、うちは90人以上だから、法律では2人以上。でも、今うちで働いてくれてるのは6名かな。
 一般の企業と比べて、ちょっと高いですよね。
但馬 そうですね。慌てて雇用しようとする会社もある中で、法律で決められている数字を超えられているのはいいことかな。あと、やっぱり会社は社会の縮図なんで。若い人も年配の人もいれば、外国の方に、障害がある方もいるっていうのはいいですね。いていいじゃない、って。うん。いるからいい。
 社会の縮図だ、って、企業メッセージでも言ってましたもんね。
但馬 障害者雇用に貢献しているということで取材の依頼が来るんですが、特別に力を入れているというスタンスではないので、基本はお断りしてるんです。でも1回だけ、テレビの取材を受けたことがありました。 その時、突発的に出たのは「障害者に優しくて、働きやすいというのはですね、健常者にも優しいはずだ」というコメントで。イヤイヤ受けた取材だったんですけど、我ながらいいこと言うなと思いましたね。
 いやいや、確かにそうですよ。最近、飛行機に乗った時に、トイレのドアに片手が使えない人用の器具が付いていたんですね。それはモノの話ですけど働く環境だって、障害がある方に優しい職場は、健常者にも優しい職場だと思います。
但馬 そう、障害がある子供を育ててるお母さんがうちで働いてるんですよ。そんなこともあるから受け入れたいし、社会的な認識も高まればいいなとは思ってます。あと、私の知人がてんかんのお子さんをお持ちなんですが、親としてすごく引け目を感じてらっしゃるように見えるんですね。雇用契約を結ばない「就労継続支援B型」の仕事だけでいいです、って。こっちから見れば全然問題なくて、たくさんいろんなことができるのにな、と思うので、そういう方々に対して、もっと挑戦の機会を作れたらいいなって思ってますね。

採用の決め手は、色々なところにある。

 今回アビリンピックに参加されたのは、6人のうち、2人だったんですね。
但馬 そうですね。3年目の塩﨑くんと、2年目の副(そえ)くん。この2人は支援学校の学生の時から実習に来てくれて、その時に就労できると判断したので働いてもらってます。2人とも、子供の靴のラインで半自動機の担当をしてくれてるんですが、大会は手で作業しなきゃいけないんで。でも挑戦してみたら、意外と手でもいけるねっていう発見もあって、可能性が広がるなって思いました。

真剣な眼差しで、普段の仕事に取り組む塩﨑さん。

 お二人を採用するにあたって「こういうところがいいな」って思った点はありますか。 採用の決め手というか。
但馬 そうですね。塩﨑くんは、運動神経がいいんですよね。体操をやってたのかな。 その運動神経の良さが仕事にも活かせるだろうなと思って採用しました。あと、副くんは猫をいっぱい飼ってるんですけど、ほとんど自分で面倒見てるみたいなんですね。毎日餌をやるとか、そういうお世話するとかいうのができれば、 仕事もできるかなと思いましたね。
 生き物の命を預かれる人は、絶対に責任感がありますからね。それで、アビリンピック当日はどうだったんですか?
但馬 時間内に女性用のブラウスを縫い上げる、という課題だったんですけれど、出場者は全部で3人で。女性の方は全部縫い上げることができたんですが、二人は縫い上げられなかったんです。でも、銀と銅でメダルをもらいましたからね。来年からは洋裁の種目がなくなってしまうようなので、他の競技でも出られないかとか、新しくチャレンジできるものを考えたいですね。

編 確かにアビリンピックのように、目に見えて、日付が決まっている目標があると頑張れますもんね。ではせっかくなので、出場されたお二人に一言づつコメントをもらいましょう!

左が運動神経のいい塩﨑さん。右がたくさんの猫のお世話をしている副さん。

大会では袖をつけるのが難しかったです。時間内に縫い終えることはできませんでしたが、母は「すごいやん」って褒めてくれました。嬉しかったですね。縫製の仕事を選んだのは、レゴとか、ものづくりが好きだったからです。入社時にトレーニングがあるのですがその時は母の日が近かったので、巾着袋の作り方を教えてもらいました。その時もすごく喜んでくれました。最近は、できることが一つ増えたことが嬉しいです。今やりたいことは、家族と大阪に旅行に行きたいですね。ユニバーサルスタジオジャパンがありますから。(塩﨑さん)

大会では3時間くらいミシンに向き合うのですが、裾を縫うのに苦戦ました。元々服に携わる仕事がしてみたくて、服を作ってみたいと思っていたところ、支援学校の先生が見つけてきてくれました。普段の仕事では、作業の段取りがうまくいった時にやりがいを感じます。いつ叶うか分かりませんが、家族に恩返しをしたくて。京都巡りをしてみたいなって思いますね。大会では景品にもらったお食事券を渡しました。喜んでくれたので嬉しかったです。(副さん)

挑戦は、必ず誰かが見てくれている。

 お二人とも、すごく家族想いなんですね…。
但馬 最初っから家族思いでしたね。入る前からああいう感じで。去年のアビリンピック、塩崎くんのお母さんが本当に愛おしそうに彼のことを見守っていて。よそと比べるものでもないけれど、健常者の親が子供見る時、あんな風に見ることもないだろうな、と思いながら見てました。
 できることが増えるのが嬉しい、って言っていた背景には、親御さんの見守る眼差しと応援があるからなのかもしれませんね。
但馬 今回アビリンピックに出てもらって、ミシンを手がけする能力もそれなりにあるっていうのが分かったし、新しい仕事をしてるのが楽しいって言ってましたからね。こっちで制限かけないで、色々、挑戦してもらった方がいいなって思いました。

銀メダルの塩﨑さんと銅メダルの副さん。3時間、ミシンと向き合いやり切りました!

以上、アビリンピックと、ダイナンの障害者に対する関わり方についてのお話でした。
「会社は、社会の縮図」という言葉は、ダイナンのCSRのページに記されている言葉です。その後にはこう続きます。「だからこそ、多様性を尊重し『長く、幸せに働いていただく環境』を作ることが一番の社会的責任と考えています」と。前回の、長寿レジェンド百合子さんのお話と合わせて読んでいただけたら嬉しいです。これからも、縮図の細かい部分にフォーカスして、ダイナンがどんな会社かをお届けしていければと思います!
次回は1月25日頃、 何のお話にしようかな・・・どうぞお楽しみに!

いいなと思ったら応援しよう!