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【68枚目】大石晴子『脈光』

大石晴子の1枚目のアルバム『脈光』(2022)

2022年は新譜を積極的に聴いてます。
有名どころですが、宇多田ヒカル、羊文学、tofebeats、坂本慎太郎、ロザリア、デンゼル・カリー、ケンドリック・ラマー、ザ・スマイル、ハリー・スタイルズ…などなど。パッと挙げるだけで上半期に好きな作品がこんだけあります。

大石晴子『脈光』。私の推しのアルバム。あまりレビューを見ないので自分でやってみます。布教活動です。

大石晴子 大阪生まれ神奈川育ち。生活の機微を、美しくも不思議な響きのメロディで歌うシンガーソングライター。早稲田大学のソウルミュージックサークルで出会ったR&Bフィーリング、お笑いラジオ番組のヘヴィーリスニングで体得した鋭利な言語感覚、愛犬家。
個性的且つ芳醇な匂いを醸し出す楽曲群。繊細さと強さ、ポップとブルース、相反するものが揺れ動く歌声は聴く人の胸を打つ、祝福。

プロフィールの通り、繊細さと強さを兼ね備えた歌声。祝福感もあると思います。中村佳穂やカネコアヤノっぽさもある。表現豊か。自由に歌ってる感じ。今作はCleo Sol(クレオ・ソル)『Mother』の影響があるとか。このアルバムも良いっすよ。赤ちゃん抱いてるジャケットのイメージ通り、包容力、安心感が半端ない。クレオ・ソル好きな人は大石晴子もハマるはず。今年リリースされた優河『言葉のない夜に』に近い部分も感じます。

大石晴子『脈光』。幽玄、薄明な音。内省的。ふわっと和風でR&B。綺麗で少し不気味な部分もある。ジャケットもすごくセンスを感じます。「人の肌っぽい何か」と「墨?石?のような黒い何か」が捩れてる。この異質な要素が混ざった奇妙な感覚が音でも表現されてる。参加しているメンバーは総勢14名。中村公輔は折坂悠太のミックス、マスタリングを担当されているそうです。現在進行形でバリバリに活躍している方々。名前をメモって今後もチェックしていきたいです。

高木祥太(BREIMEN)、菊池剛(Bialystocks)、宮坂遼太郎、沼澤成毅

アルバム名の『脈光』は造語だそうです。脈光って人肌の暖かさ、みたいなものを感じる良い言葉だと思います。じわじわ脈打つような光が差し込んでくるイメージ。公式サイトのコメントも好きです。簡潔に作品の内容を説明してくれています。自分も同じ感想。アルバムから癒しのオーラが出てます。

https://oishiharuko.com/myakko

土岐麻子「休みの午後、部屋のなかで布団の繭になって聴くと思います。」
NOPPO (s**t kingz)「大石晴子さんの曲を聴くと、「心の深呼吸」ができます。」

大石晴子「いつ誰がみても眩しいものではないけれど、いま私に光って見えたものを掬い取りたい。
そしてその小さな光を、このアルバムを通じて誰かと共有できたら、私は生きていると強く実感できる気がします。」

特に好きなのは「まつげ」「さなぎ」「立ち合い」です。

1.まつげ

じわーと光が漏れてくるようなイントロ。ベッドの中でまどろんでいるような居心地の良さ。泡みたいな電子音が水中っぽい感じもします。トランペットの音色が優しい。ノスタルジック。さらっとしたドラム。あとベースラインが変態感ある。大石晴子の澄んだ芯のある歌声が最高です。

インタビュー読んで気づいたけれど、割と切迫感あってシリアスなスタートですね。

”苦しくとも致命的ではない熱が まだ続いている”

2.港に船

ピアノのしっとりした演奏からスタート。気軽にステップしているようなギターのフレーズが好きです。初夏に木陰でだらっとしてるイメージ。離島というか港町っぽい。ちょっとダウナー。丁寧で落ち着くドラム。

ピアノは大石晴子の演奏。
曲の元ネタはBill Withers(ビル・ウィザーズ)の“Lean on Me”

3.手の届く

ギターやパーカッションがエキゾチック。艶めかしい。ミステリアス。ラップが入ることで2.3曲目とイメージがガラッと変わりますね。都会的で若さがある感じ。アウトロのだらっとしたお洒落サウンドも好きです。アウトロで息が漏れているのが気になる。

4.季節を渡れ

イントロの歌詞”朝の花瓶の水位を見初めてから~”が印象に残りました。この曲は歌詞が好きです。羨ましいほど幸せな詩ですね。曲もポジティブで感情を音の厚みで表現してるよう。

”朝の花瓶の水位を見初めてから 冷えていた花を撫でて いくつか摘む”
”ガラス越しに蝶がはたはた飛ぶ 羽任せに
ただ好きというだけで二人はまた 微笑んだりする”

5.菜の花

可愛げのあるイントロ。のっぺりしてて気持ちのいいベース。ギターのフレーズは綺麗で楽しい。この曲はベースの主張が強い気がしました。他の曲に比べて音数が少ないのかな。よく聞いたらドラムが無い。絶妙なアンサンブルが楽しめる曲です。マリンバ?の優しい音色もふわっとした曲にハマってます。

”寝返りをして あなたの髭を逆撫でる
ちくちくと返す感触の粒は 予感も待たずに 微塵の光になっていくわ”

6.さなぎ

音外しそうでギリギリなイントロ。歪な感じから徐々に美メロに。1:15~、前向きに曲がスタートするとこでちょっと満足します。ぼやっと靄がかかった状態でふらふらしてる。重めな曲だけど安心感がある。2:55~、盛り上がりが良いですね。閉塞感から徐々に解放されるよう。

”もしもまだかかりそうなら ドアを叩かずに
このまま待っていよう あなたの声は 誰のものにもならないんだから”

“さなぎ”は最後、元のサビに戻れなくてキーが下がってしまっています。盛り上がって終わりたい気持ちは山々だけど、でも落ち着くのもありじゃないか?ちょっと大人になったんで、ということにしてこのままにしちゃいました。

7.echo

インタールード。木材がゴリゴリしてる謎の音。太鼓をさする音だとか。”う~”というハミングも混じってホラー気味だけど不思議と聴いてて心地はいいです。

8.立ち合い

ピアノの演奏とすーっとした歌声が和風な感じ。ドラムやベースが混じるとジャジー、R&Bで不思議。モダンな感じ。聴きこむほど好きになってく個人的スルメ曲です。フェードアウトで消えていくのが儚い。

9.発音

イントロの”発音に恋してたのか”が印象的。改めて大石晴子の歌声、詩は存在感ある。食器が擦れる音、喫茶店の雑音?が混じってて良い雰囲気。ウッドベースが入ってきて、またモダンな一曲です。クール、ダウナーだけど熱を帯びてる。綺麗で怪し気なアウトロが『脈光』のイメージに合ってます。

※大石晴子のEP『賛美』、シングル『ランプ/巡り』も聴きました。こっちも好き。おススメは「Strings」「ランプ」です。どれも『脈光』に比べてエネルギッシュ。本作でもめちゃくちゃ完成されてると思ってますが、次回作はどんなアプローチをかけるのか楽しみです。あと生の映像をもっと見たい。ライブ映えしそうです。


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