官憲によるヘルメット弾圧を許さない
昨日、首相官邸前で、菅政権による日本学術会議会員任命拒否に抗議する集会が行われました。また、一昨日夜からは同じ場所で菅野完氏が同趣旨の抗議のためのハンストを続けています。
ハーバー・ビジネス・オンライン:菅政権による日本学術会議への人事介入は近代社会の破壊行為。著述家が官邸前で単身抗議のハンストを始めたワケ
記事や中継がもうあるので、本題ではない話をします。
誰もが歩けている公道をぼくだけ歩けない
ぼくはこうした抗議活動を取材するため昨日の午後、現地に行ったのですが、官邸前にたどり着くよりはるか手前の歩道上で、警官に行く手を阻まれました。一般の通行人がみんな通っている歩道です。ぼくと警官が揉めている脇を、一般の通行人は普通に通り過ぎていきます。
原因は、ぼくがリュックに「やや日」と書かれたヘルメットをぶらさげていたことと、行き先や目的を尋ねる警官に対して「答える義務はない」と答えたことが原因でした。もしかしたら後で動画を編集してアップしたりするかもしれませんが、とりあえずその時のツイキャスです。
https://twitcasting.tv/c:daily_cult/movie/644014353
ぼくがリュックからぶら下げていたのは下の写真の3つ並んだヘルメットのうち、真ん中のものです。
ヘルメットをぶら下げていただけで、服装は至って普通。シャツにジャケットだけ(うそ。ズボンもはいてましたよ)。メッセージ的なTシャツを着たりプラカードを持ったりしていたわけでもなく、もちろんゲバ棒も持ってないしフェイスタオルで顔を隠したりもしていません。奇抜な格好でも、「抗議するぞ感」満載な出で立ちでもありませんでした。
官邸前で抗議集会が行われていた真っ最中だったので、警察は警戒を強めていたのだろうと思いますが、往来を妨害する法的根拠はたぶんないし、根拠を尋ねても警官は一切答えません。ぼくは行き先について「官邸前に行く」とだけ答えたのですが、警官から「アポイントはあるのか」などと言われました。官邸前って交差点の名前なんですが。誰か、交差点にアポイントとる方法を教えてください。
理由が皮膚や目の色でなくても差別は差別
通行禁止にされている歩道でも何でもなくみんな普通に通行しているのに、ぼくだけ通らせない。
「差別じゃないか。ぼくの肌の色のせいか!」「皮膚や目の色でいったいぼくの何がわかるというのだろう」(ブルーハーツ「青空」)などと言ってからかったら、警官は真面目な顔で「そんなこと言ってない!」と反論してきました。うん言ってないよ。知ってる。それにぼくの肌の色、その辺にいる日本人の大多数と変わらないし(目の色ちょっと違うけどな)。
坊主頭の通行人が通り過ぎていったので、「あの人だってヘルメットかぶってるじゃないか!」と言ってからかったら、警官はこれにも「あれはヘルメットじゃない!」とマジレス。行動は意味不明なのに真面目です。まるで幸福の科学職員みたいです。
途中から応援に駆けつけた警官から「藤倉さんですよね。私、春まで高輪署にいまして」と言われました。ぼくは高輪署管内の幸福の科学施設前で取材や抗議活動を何度もしています。その一端を幸福の科学の機関誌『ザ・リバティ』が報じてくれています(記事では「違法デモ」と書かれていますが、これはデマ。歩道での抗議活動は届け出不要と高輪署に確認済みです)。
官邸近くの歩道で揉めていたところに上の一件を知っている(たぶん現地で警備にあたったのでしょう)警官が来て、途中から素性がバレたというわけです。
素性がバレたおかげでテロリストでも過激派セクトでもなく「たまにデモることもあるけど本業はジャーナリスト」であることもはっきりしたわけですが、それでも通してもらえません。「爆弾も起爆スイッチも持ってない」と言って両手を広げて見せ、「ヘルメットは武器じゃないし発射装置もついてない」とヘルメットの中を見せても、「オレは酔ってない」みたいに言ってもダメでした(実際に酔っていません。というかお酒飲めません)。
揉めているうちに次々と新たな警官たちが応援に駆けつけてきて、それぞれがぼくに「どちらに行かれるんですか」と尋ねてきます。最初からずっと「官邸前だ」と言っているのに、応援に駆けつけた警官たちにいちいち同じことを答えなければなりません。河野太郎さん、ハンコやFAXを廃止したように、同じ質問を繰り返す警察官も廃止してくれないですかね。
ヘルメットの文字は抗議の言葉でもセクト名でもなく「やや日」と書いてあるだけで、官邸前で声をあげたりする気がないことを説明したら、警官の一人が「それで飲み込めました。抗議活動する人たちもヘルメットかぶったりするもんですから」と。警官から「抗議活動とかをしたことはないんですね」とまで言われたので、そこは正直に「抗議活動やったことはありますよ!」と答えました。
ついこないだ、ぼく1人で国会や官邸の前に立ち首からiPadをぶらさげてZoom参加してるデモ隊の「自粛要請するなら金よこせ!」等のシュプレヒコールをトラメガでと流す「リモートデモ」ってのもやったし。
5年前は「ハルマゲドン」が議員会館に入れた
2015年。安保法案に反対する学生たちが参議院議員会館前辺りでやはりハンストをしたことがありました。そのとき、ぼくは今回の「やや日」と書いたヘルメットとは別の「ハルマゲドン」と書いたものを持参して現地に行きました。用事があったのでヘルメットをリュックに付けたまま参議院議員会館にも行きました。入り口の荷物検査の担当者がヘルメットを見て一瞬「あ?」みたいになったのですが、「何々反対とか(という文言)じゃないからいいか」と言って通してくれました。その時のヘルメットが下の写真です(撮影は別の場面。かぶっているのはぼくではなくポルコ・ロッソさんです)。
5年前は「ハルマゲドン」ヘルメットですら議員会館に入れたのです。それが今回は、「やや日」と書かれただけのヘルメットを持っているだけで公道を歩くことすら許されない。
30分近く揉めたでしょうか。最後は警官が同行することを条件に通してくれることになりました。
ぼくは最初から、抗議や批判の意図はあるけど官邸に突入したり大声で騒いだりする予定ではありませんでした。抗議活動をさせないこと自体、法的根拠が不明ではありましたが、警官5、6人に囲まれながらおとなしくVIP気分で「総理官邸前交差点」までたどり着きました。官邸の門の前で警官に「ここで大声あげてほしくないとかってことなんですよね」と話しかけておちょくりながら。
警察は抗議弾圧どころか嫌がらせ目的
現場に到着してからは、警察の対応が抗議活動をさせないためどころか、抗議活動をしようがしまいが関係者には嫌がらせをする、というものであることがはっきりわかりました。ハンスト現場から官邸側の歩道に歩いていこうとすると、一般通行人は何も言われないけど抗議関係者(と警官にみなされた人)だけ止められる。
菅野完氏のハンストの脇でネット中継したり買い出しに行ったりしていた人(ヘルメットは持っていない)が官邸側に面した道路でタクシーに乗ろうとしたら、警官がタクシーなんか走ってない別の道路を指差して「あっちでタクシーを拾え」などと要求していました。言われた人はさすがにキレて警官に詰め寄っていました。官邸前の交差点近くのどの地点で誰がタクシーに乗ろうが、官邸への脅威や危害なんか一切ない。それを予見させる行動ですらないのに。
逆方向ですごかったのが、官邸に飯を配達しに来たらしきチャリ。もちろん警官に制止されないわけですが、それどころか警官たちの眼前で信号無視して交差点を渡って官邸に入っていきましたからね。警官たちは一切それを咎めない。
抗議関係者と警察がみなした人間には法的根拠なく嫌がらせをし、官邸に出入りする人間が目の前で法を犯すのは黙認。
札幌では安倍晋三の演説時に野次った人が排除された問題を一生懸命世に訴えている人たちがいます(ヤジポイの会)。もちろんこれは民主主義の根幹に関わる重大問題です。ただ、警察というのは抗議や批判への弾圧にとどまらず、抗議活動をしていなくても関係者とみなせば差別的に往来まで制限する。政治的な行動をする(と警察がみなした)市民には政治的ではない行動も許さない。
権力を誇示するならこっちも抵抗を誇示しないと
日本学術会議の会員任命を菅内閣が拒否したことについて、ハンスト現場で菅野氏がこういうことを言っていました。
「権力を持っている奴らは、権力を振るうだけではなく、権力が振るえることを誇示するための行動もとる」
官邸前の警察の嫌がらせも、そういうものなのかもしれません。ならばぼくにとってヘルメットは、権力による不当な嫌がらせに屈しない意思を誇示するための必須アイテムということになってきます。
もともとヘルメットに強いこだわりはありませんでした。第三者から見ても意味不明で、そこに何か重大なメッセージを見出す人もいないと思います。クッソどうでもいい話です。しかし、クッソどうでもいいことすらできない社会って、重要なことができない社会よりさらに一歩進んでヤバいと思いますよ。
菅野完氏「でもさ、藤倉さんのヘルメットって、セクトというよりタイマーズなわけですよね」
藤倉「まあそうではあるんですけど、発端は、早稲田祭や東大五月祭なんかで幸福の科学の講演会に入場拒否された時に、このヘルメットかぶって突入するって企画だったんですよねえ。だから起源は“学園紛争”」
官憲によるヘルメット弾圧と闘うため、これからもむやみにヘルメットをぶら下げて(なんならかぶって)うろつこうと思います。
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