アーティストのセルフブランディング : 作家ができること、できないことを考える
彫刻家の大黒貴之です。
これからは個人の時代だと聞くことがしばしばありますが、これは同時に個人で全ての責任を負うことを意味していると解釈しています。
ですので、アーティストも自身で情報を発信したり、記録を残すことは少しずつでもやっておくほうがいいのではないかと考えています。
その意味で、情報が整理されて蓄積されいくWebサイトやブログ、またnoteのようなプラットホームはとても価値あるものだと思います。
一方で、1人でできることには限界があることもまた確かなことです。
自分には何ができて、何ができないのをよく知り、できないことは信頼できる第三者に委ねることもまた大切なことなのかもしれません。
作品の評論は誰がするべきなのか?
「だいこくさんもね、自分で自分の作品の評論をすればいいんだよ」
もう10年くらい前だったと記憶していますが、現代アートの評論家と名乗る人からそのように言われたことがあります。
じゃあ、アート界の評論家の仕事とは一体なんなのだろう?と考えたことがありました。
ごく稀にアーティスト、キュレーション、評論、プロデュースなど1人で何役も行うアーティストがいることもまた確かなことです。
もう一方で、ある彫刻家の方からこのように教わったことがありました。
「評論家は価値の無いものに価値をつけていくのが仕事の1つだ」と。
アーティストが活動記録を残す重要性
関西にザ・プレイというハプニングをする美術家集団がいます。
1967年から関西を中心に活動を続けてきました。そして結成から50年後となる2016〜2017年にかけて大阪国立国際美術館で回顧展を行いました。そのザ・プレイの中心的存在である池水慶一さんは教員の勤務をしながら、ザ・プレイの活動を続けてきたのですが、その活動の記事やレポートを50年以上もずっと記録してきました。
その膨大な文章や画像、映像などの記録が先の美術館の回顧展につながったと言っても過言ではないでしょう。
芸術家の活動というのは、作品はもちろん、実績や作家の歴史、つまり作家の物語そのものなのです。
ですから、その記録を残しておくことはザ・プレイの記録のように何十年も後に効いてくるのだと思います。そのときは誰も見向きもしないような作品や行動でもそれを記録し、残しておくことは非常に重要です。
なぜなら芸術家の仕事は何十年にも渡る作家の人生そのものでもあるからです。
そしてそれらの記録や資料が「発見される」ことによって、ギャラリーや美術館での展覧会や作品購入につながっていく可能性があるからです。
作家はどこまで自身でブランディング活動をするべきなのか?
セルフブランディングという言葉が出てきてもう久しいです。
自身の活動を世の中の人に知ってもらうために広報宣伝は必要ですし、インターネットの登場でそれが容易にできる時代になったのですから出来る人はドンドンやっていくほうがいいと僕は思います。
ただセルフブランディングはある一定のラインまでは到達できるけど、その後はどうしても「第三者」つまりフォロワーが必要になると思うのです。
かつてマルセル・デュシャンはこのように言いました。
「アーティストが生み出す作品だけで完結するのではなく鑑賞者が創造的行為に加わることによって芸術作品が完成する」
「作品を生み出すのはアーティストであるけれども後世に作品を残していくのは鑑賞者という第三者なのである」
つまり「価値」というものは一人だけで形成していくものではなく第三者の創造的な介入が必要になってくるということです。
特に、最初の強力なフォロワーの存在は大変重要だと感じています。
アーティストという仕事をするのであれば、同じ業界のギャラリストやコレクター、キュレーター、アーティストということになります。
どの業界の人でもそうですが、現代アートも同じで、最初の重要なポイントして、まず自分という人物と作品が、そのワールドの中で「発見される」そして「発表される」が挙げられます。
僕の作品の最初の発見者は、ドイツで出会ったアーティストでした。その人は今ベルリンにギャラリーを構えるギャラリストとして仕事をしていて僕の作品の取扱いをしてくださっています。
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引き続き穏やかな一日となりますように。
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