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家賃0円ハウス|第2回|誰でも探せる0円空家の見つけ方

 キルケゴールの『死に至る病』でこんなことが書かれていました。

〝人生とは問題を解決するためのものではなく、目の前に現れる神秘をただただ味わい尽くすものである〟

 いまそのページを探そうと本をパラパラとめくっています。どこにもありません。隈なくさがても見つかりませんでした。もしかするとそんなこと書いていなかったのかもしれないです。わたしのつくり出したミュトス(創作物語)かもしれない。もしくは今、精神に浮かんだ神秘なのかもしれないです。
 
 こんにちは。作家の村上大樹です。わたしはいま因島に家賃0円のシェアハウスをつくろと企画しています。光熱費もゼロです。まったくお金がかからないワールドを創造したいと思っています。

 家賃0円ハウスの連載、公開から数日で1000ほどのアクセスがありました。ありがとうございます。まだ家賃0円ハウスの場所は見つかっていません。しかし運動が起こっています。読んでくれた人たちから色々な感想をいただいています。

「ボロボロと涙が出た」
「勇気が湧いてきた」
「ワクワクがとまらない」
「こんな生活したい!」

 などなど。文字を体に感化させた反応で、あなたに湧き水が溢れたなら、わたしはこんなに幸せなことはありません。わたしはテキトーに生活しているだけです。やりたくないことを一切やっていないだけです。楽しさのみを味わっています。作家と名乗っていますが、個人的には無職のような気分で生きています。わたしは何者でもありません。それが最大のエネルギーです。きっと誰にでもできます。あなたは大丈夫です。わたしの生活は極端なので、まずはちょっとしたことから始めてください。東京の世田谷に住んでいたとき、ずっとバイトしていましたが無職だった期間が半年ほどありました。10年ほど前でしょうか。いまほど堂々と生きてなかったので、後ろめたさとどんどん増えてくる借金に押しつぶされそうになっていました。そのときには将来が不安で、作品をつくることもままならなかったです。毎日ネットでアルバイトの求人広告を閲覧する日々。
 わたしはこのままではいけないと思いました。思い切ってネットをみるのをやめました。街や公園を散歩することにしました。毎日1時間だけ歩くことにしました。生活をガラリと変えるのは難しいと思い込んでいる人は、明日からプレッシャーなく変えられることから始めてみてください。午前中の街は都会でも少し静かです。公園では鳥たちが鳴いています。太陽の光が暖かいです。草が生えてます。ちょっとだけその草をかき分けてください。そこには土があります。触ってみてください。匂いをかいでみてください。風を感じてください。あなたに何かが湧き出るはずです。わたしは体が軽くなりました。行動を起こさなければ人生は変わりません。しかしその行動とは大それたことでなくても大丈夫なのです。いつもより長く睡眠するのもいいです。生活にあるちょっとしたことです。朝起きたらいきなり大声で笑ってみるのも最高です。ベランダに出て朝日を5分浴びるだけでも変わります。窓を綺麗に掃除してみてください。何かを始めてください。できたら毎日できることがいいです。飽きたら辞めてください。漠然とした不安をかかえながら生きているあなたは、きっと真面目で優しすぎるのです。真面目は素敵なことですが、不安な人にとっては有害になるときもあります。どうか真面目をほどほどにしてください。飽きたらやめたらいいのです。わたしはすぐに辞めます。空間は空白を嫌います。世界はそのようにできています。嫌な会社に行く必要もありません。飽きたり嫌になって何かを手放すと、空っぽになった空間を埋めるために新たな何かがやってきます。すぐに見つかるはずです。その何かを次はやってください。そうやって少しずつ変化してください。一気に変化できる時期もやってきます。そのときのために恐れない練習をしてください。それは毎日に起こる少しの変化を楽しむことから始まります。

 わたしには何も恥ずかしことはありません。前回の連載で7年前はほとんど無収入だったことも書きました。どんどん素直に書きたいと思います。それこそ知恵の交換なのです。早速、運動が起こっています。キャラバンをもらってしまいました。この連載記事のリンクをSNSに貼っただけです。知恵はあなたの湧き水です。どんどん無料で届けましょう。すると何かと交換されます。SNSを見た因島に住む陶芸家の吉野瞬くんが写真のキャラバンをくれました。

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 キャラバンの中にはアンティークのキッチンがあり、二層シンクと蛇口、コンセントや照明は新品のものを入れてくれているそうです。ありがたいです。家賃0円ハウスで使えるかはわからないですが、うちの畑にどどんと置いてカフェをするのもいいんじゃないかと思っています。山の谷間にある畑でご飯やあたたかい飲み物を提供できたら最高じゃないですか。妻のミワコちゃんは有頂天になっています。わたしが書いたことで家族が幸せになれるのならこんなにうれしいことはありません。畑のカフェ、みなさんも遊びに来てください。
 吉野瞬くんは年下ですが、この島にやってきたときに彼の活動を参考にしまくっていました。彼は生活コストをおさえてむしろ生活を豊かにする天才です。しかも売れっ子陶芸作家なのでボロ儲けしています。わたしがこの家賃0円ハウスで書きたいのは、生活コストを抑えることだけではありません。生活のサイクルを小さくすることで、大きな運動が生まれます。せっかく儲かったのに家賃や維持費でごっそり持っていかれてはたまりません。彼は若くしてそのことに気がついていたのです。彼もわたしの師匠のうちの一人です。因島のソクラテスと呼びたいです。因島ソクラテス瞬くん、ありがとうございます。


 あともう一つ運動が起こりました。わたしが12月末に発売する書籍『生きづらくない人』の予約が30冊ほど一晩で入りました。ありがたいです。いまのところ全部で40冊ほど予約をいただいています。このペースだと100冊は余裕で予約が入ると思います。ありがたいです。家賃0円ハウスの資金に当てさせていただきたいと思います。なかには10冊予約してくれて「手売りで販売したいです!」と言ってくれている人もいます。最高だと思います。10冊予約で1万2千円というプランもあります。定価は2000円の本になりますので、10冊売れば8千円の利益が出ます。どんどんやってください。わたしに許可を取る必要もありません。

※現在予約は終了しています。
 

 わたしはお金を儲けること自体は何にも否定していません。楽しくやってください。前回の連載でも書きましたが、ソクラテス先生は貨幣の交換を欲望や恐怖に任せてやるからいけないと説かれています。この『生きづらくない人』という本はわたしから流れる知恵で書いています。その知恵をお金と交換することは素晴らしいことなのです。それは徳のあるお金の交換だと感じています。なんでしたら100冊セットもあります。10万円で購入できます。定価どうり100冊を買うと20万円になります。なんと10万円もお得です。もしあなたが100冊を売っていただけるなら、10万円をゲットできます。知性あふれる行動だと思っています。どんどん試してみてください。

 わたしはチイサイカイシャプレスの本を書店に置くのを3年前からほとんど辞めています。ときどきいるのです。100冊買ってくれて、配布してくれる方もいます。10、20、30冊、数は人それぞれです。ドカンと何冊も買ってくれてわたしを助けてくれます。だいたい「やべー、そろそろ貯金がなくなりそう……」となったときにそんな素敵な人が現れます。その人たちはわたしを助けたい訳ではありません。本を心底に気に入ってくれて誰かに届けてくれるのです。わたしにとって神さまのような存在です。

 ここからは家賃0円ハウスの探し方を伝授したいと思っています。家賃が1〜4万円くらいの空家の探し方ではありません。その空家はネットで検索して空家バンクで探してください。ここで書くのは0円の空家を探す方法です。前回の連載では今まで5軒の0円空家に遭遇した書きました。よくよく思い出してみると7軒ほど出会ってました。因島に住んで7年ですので、一年に一度は0円空家に出会っていることになります。奇跡なんだと感じています。わたしは奇跡を起こすのも簡単だと思い込んでいます。みなさんもそう感じてください。〝かんたんかんたん〟と念仏のように唱えてください。すると体と精神が軽くなります。ふわりと行動できます。
 島に引っ越したばかりのとき。尾道で当時チャイサロンドラゴン(現在はソーシャルキッチン)というカフェを運営していたヒロさんと出会いました。

 彼は0円の空家物件を当時すでに何軒か持っていました。じつは当時から家賃0円ハウスのアイデアはありました。このアイデアをわたしはヒロさんに語りました。自信もなかったので、びくびくしながら言ったと思います。
「それ、めっちゃ最高やん! 物件絶対に見つかるよ!」
 と笑顔で叫んでくれました。わたしはすっかり心が軽くなりました。するとその数日後には家賃0円の家が見つかってました。

 それ、めっちゃ最高やん。

 誰かが何かがやろうとするとき、わたしはそう言うことに決めました。自分が何かを始めるときも何度もいいます。すると上手くいくのです。何かが流れはじめます。心の中でも唱えます。不安な人やまだ若い人たちの行動を大人は絶対に止めてはいけません。もちろん人間同士は何かを否定することも必要です。否定と肯定があるから世界は深まっていくのです。しかし、誰かの行動だけは止めてはいけません。両手をあげて肯定してあげましょう。それから微調整をしてあげるのです。すると知恵が湧き上がります。何度も書きますが、知恵は何とでも交換可能です。最強の経済です。
 
「それ、めっちゃ最高やん」は経済なのです。

 誰かのアイデアにはどんどん「それ、めっちゃ最高やん」と言ってあげましょう。勇気を持った行動を何度でも褒めてあげましょう。自分の作品をつくっているときも、どんどん唱えましょう。「これ、めちゃ最高やん!」するとつくるのが楽しくなります。そうするとあなたの知恵が貯まります。貯まったものは何とでも交換可能です。いいことしか起こらないのです。
 あ、ちょっとまた話はそれてきました。0円空家の探し方でしたね。脱線は必要です。脱線は意識が拡散しているときに起こります。思い浮かんだイメージを萎縮することはありません。わたしはどんどん脱線したいです。人生をはみ出したいと思っています。社会から飛び出しすつもりで生きています。あ、0円空家の探し方でしたね。ふふふ。脱線ついでにもう一つ。断っておきますが、わたしはコミュニティや社会から切り離された楽園をつくりたい訳ではありません。共同体は少数でも腐っていきます。
 人間の数を少なくすれば楽園のようなコミュニティーがつくれるなんてこれっぽっちも思っていません。群れは有害です。だからわたしの家賃0円ハウスは最大で1年間しか住むことができません。わたしは群れることを好みません。人間は出会ったり別れたりするから素晴らしいのです。ときおり一つになれるから楽しいのです。家賃0円ハウスは共同体ではありません。風が通り抜ける場所です。ただただ素直な自分を探せる場所にしたいと思っています。あなたは風になってください。家賃0円ハウスに住んでもらうことがゴールではありません。ここからあなたが巣立つことが目的の場所なのです。人の目ばっかり気にして生きていた人が自分に向き合うための練習場所です。あなたが何かを掴んだと感じたら卒業です。そこからは自分を中心に行動してください。そうすればさらに気楽な生活が手に入ります。人間が集まってそれぞれの個性が発揮できる共同体の最大数は4人くらいまでです。バンドを思い浮かべてください。4人のバンドよりスリーピースのバンドの方が仲良しです。人数が少ないほど人は仲良くなれます。だから今、不安に生きていいるあなたは自分と親友になってください。一人というのは最小限の共同体です。広大な自然です。カオスとなった生態系です。あなたはあなたという国です。自分を大切にしない人を見つけるとわたしは怒ります。それは世界を大切にしていないということでもあります。わたしはほとんど他人に怒ることがないけれど、自分に素直じゃない人には怒ります。たぶんソクラテス先生もそうすると思います。

「自分に甘く生きろ」これがわたしの哲学です。

 自分をいじめている人が多すぎます。もうやめてください。家賃0円ハウスに住んでまずは一人になる練習をしてください。一人で立てる人間を育てるのがこの家賃0円ハウスの営みです。この家賃0円ハウスを卒業して0円生活を自分でつくってほしいと考えています。
 
 それではやっと本題です。0円家探しは、まず散歩することをオススメしています。なぜなら散歩にお金はかかりません。お金のかかることをしてはいけません。ネットの情報に頼ってはいけません。そこには損得経済の臭いがプンプンするからです。散歩には損得はありません。気持ちのよい景色を歩いてください。ネットではその体感を吸収することはできません。街には匂いがします。色があります。森のなかにもあります。わたしはその匂いが大好きです。嫌な匂いがするときもあります。その場所には0円空家はありません。街を歩く人に挨拶をしてみましょう。家賃0円の家の近くに住む人々は、笑顔で答えてくれます。よそ者を排他的な目で見ません。優しい目をしています。そう感じたら0円空家はもう近くにあります。つぎは家を見てください。

 この家、めちゃ最高やん。

 そう感じる家があると思います。もう湧き水が溢れています。そこに人が住んでいる気配がなければ0円空家の可能性があります。あなたが女性であれば、すぐに行動してください。さらに近所を散歩して、挨拶したら優しい目をしてくれる人に話かけましょう。すると家主さんのことを教えてくれます。あなたが男性の場合は一旦、家に帰ってください。これは男女差別してるわけではありません。わたしだけのルールかもしれません。わたしは髭ズラで見た目が胡散臭いからか、ちょっと不審に思われることがあります。でも大丈夫です。つぎは娘のゆもちゃんを連れてその場所に散歩にいきます。お年寄りや大人はほとんどの人が子どもが大好きです。
「お菓子あげるよー」
 と言って向こうから近づいてくれます。チャンスです。アトリエにしている物件をもらったときもそうでした。そのときは、ゆもちゃんが勝手に空家を掃除しているおじさんの家主さんに話かけてくれたのです。
「なにやってるの?」
 家主さんは笑顔で答えてくれました。わたしはすかさず聞きました。遠回しに聞いてはダメです。
「この家を貸してもらえましんか?」
 単刀直入に言葉を発した方が上手くいきます。すぐに鍵をわたしに預けてくれて「タダでもらってください」となりました。
 空家はなかなか見つからないとか、やっと見つけても家に仏壇があり交渉決裂したり、バカ高い家賃をふっかけられたり、綺麗に改装したら「出ていってくれ」と言われたり難しいと聞きます。たぶんそれは情報に頼りすぎて家を探しているのだと思います。街がいい匂いであること。人が優しいことが、わたしの家探しの基準です。その感覚を信じて探すと交渉も上手くいきます。住んでからも楽しいことだらけです。女性一人でも軽々と探すことができます。男性はパートナーか女性の友だちと探しにいきましょう。子どもと一緒ならさらにいいです。男性でも人に好かれる見た目であれば一人でも大丈夫と思います。あとは自分の皮膚感覚を信じてください。「この家、めちゃ最高やん」という、たたずまいの家を自分の目で探してください。その家はきっと家賃0円です。

 わたしもこれから物件を探さなければなりません。連載の第一回目では空家情報を募集していました。今回はしません。自力で探すことにしました。この企画の家探し担当の大工のC○さんに任せっきりでもいけません。わたしは島を散歩しました。
 うろこ雲がスローモーションで動きます。風が吹いて雲は回転を早めたように動き出しました。もう少しで12月なのに、日差しは春のように暖かったです。因島の田熊町というところを散歩しました。ここには友人で画家の矢野ミチルも住んでいます。彼の住まいも家賃0円です。おばあちゃんとすれ違います。ニコニコと向こうから挨拶してくれます。街の匂いも好きです。柑橘の香りが漂っています。いつもは行かない道を歩きました。小高い山のようになっています。少し登ると降り坂になりました。空気を吸い込みます。心地よい何かが体に入ってきます。小高い丘の上から、谷間になった森のような場所があります。なんだかこの場所が気に入りました。すぐそこに家賃0円ハウスがある気がします。ですが家は見つかりませんでした。諦めて帰りました。
 帰り道に思い出しました。ふっと湧き出る記憶は何かのお知らせです。尾道の山手で秋にあったマルシェのことです。尾道の山手は迷路のような小道がたくさんあります。そこに小さな古い空家がたくさんあります。小道には猫が通り抜けます。わたしはこの景色が好きです。家の軒先でフリーマーケットをしていました。まるでヨーロッパの街ような風景でした。フランスのリヨンに行ったときのことを思い出しました。山手には空き地も点在しています。そこには畑もあります。畑の中にみたらし団子を出店しているお店もありました。わたしはこの風景に感化されました。尾道の山手に家賃0円ハウスをつくっても面白いと思いました。メインになっていた空き地には、集会場のような建物がありました。あそこは使えるかもしれない。マルシェの主催者のヒロさんに連絡しました。家賃0円ハウスの連載を読んでくれました。実はヒロさんもあの場所で、同じようなことを始めようかと思っていたそうです。生活のすべてが土にかえっていくような暮らし。そのモデルとなるような場所にしたいそうです。流れが起こってます。尾道にあるならわたしは因島でするべきかもですね。
「そういえば、山手に部屋数の多い物件あったけどな。たしか『空家再生プロジェクト』が管理してる物件だったと思う」
 そうヒロさんが教えてくれました。もう流れは起こっています。世界は運動しています。そうなると人間はすぐに動けます。この連載だけ読んでいると、わたしは随分と行動的な人間だと思われるかもしれません。そんなことないのです。普段は人に連絡するのさえ、億劫な人間なのです。しかし完全に流れが起こってます。そのときだけ躊躇のない人間になれるのです。行動するのが不安なあなたにもそんな瞬間が訪れると思います。まずは知恵を貯蓄してください。空っぽになれる時間をつくってください。このことはひつこく何度でも書きたいと思います。知恵は何とでも交換可能です。あなたの湧き水です。そのなめらかな水は何とでも交換できます。
 わたしは「空家再生プロジェクト」の代表の豊田さんに連絡しました。ネットで空家再生プロジェクトのページを閲覧して物件を見ることができるのは知ってました。だけど代表の豊田さんに連絡する必要があると思ったのです。豊田さんには「因島でやったほうがいいのでは?」というニュアンスのメッセージをくれました。
「そういえば、今年の4月から因島にも空家バンクができていて、ネットで物件も見られるよ」
 と豊田さんが教えてくれました。わたしはネットで何かを探すのが苦手ですが、ページを見たほうがいい気がしました。豊田さんの空家再生プロジェクトは尾道で200軒以上の空家を発見して、ボロボロの家を素敵に再生させた経験があるのです。経験を超えた知覚と言っていいかもしれません。わたしはその知性を信じることにしました。


 因島の空家バンクのページの物件を、何個かクリックしました。

 わたしは驚きました。なんと、あの田熊で散歩したときの山の谷間の風景が出てきたのです。わたしはすぐに大工のC○さんに連絡しました。C○さんはその物件を管理している人と知り合いのようです。
「ちょっと聞いてみます。たぶん、外観とまわりの景色はわかるけえ、一回、見にいっちゃってください」

 わたしは翌日、妻のミワコちゃんと娘のゆもちゃんと空家を観に行きました。わたしが昨日見た小高い丘の上から、谷間に降っていったところに空家はあるようです。丘の上の道路にわたしたちは車を止めました。iPadの写真フォルダにはC○さんが送ってくれた地図があります。5歳のゆもちゃんは地図が大好きです。プーさんのラビットのようです。ゆもちゃんは地図が読める訳ではありません。ただただ冒険が大好きなのだと思います。
「こっちだよ〜」
 ゆもちゃんに導かれるまま、わたしたち夫婦は山道を降りました。道はどんどん狭くなります。森のトンネルのようです。道はもはや舗装なんてされてません。100エーカーの森の世界。ゆもちゃんは笑いながら森のトンネルをくぐります。鳥たちは「いらっしゃい」とでも言っているかのように、きききき、と鳴いてから飛び立ちました。しかし家がまったくみつかりません。森のトンネルを抜けるとずいぶん下の方まで降っていたようです。家が2軒ありました。両方とも誰かが住んでいるのでしょうか? 家に向かっていくと、家の中から洗濯物を干しているおばあさんが声をかけてくれました。
「ごめんね〜。ここは道じゃなくてってわたしん家の敷地なのよ。あなたたち空家を探してるんでしょ。椿の木が生えている家がそうよ。いい匂いがするわよ〜」
 と親切に空家の場所を教えてくれた。おばあちゃんは満面の笑顔です。もう運動は起こっています。

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「この家、めちゃ最高やん!」
 

 家族全員で叫びました。窓から中を覗くと部屋も綺麗です。まき風呂もついています。蛇口から天然の井戸水も出ます。まわりには1000坪くらいの土地があってそこも自由に使っていいそうです。そこに畑と、子どもたちが遊べる公園をつくりたいと強く感じました。家賃0円のシェアハウスはここになるって直観がしています。

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 早速、C○さんに「最高でした!」とメールしました。すぐに折り返しの電話がありました。

「あの家を管理してる人に聞いたら、持ち主は鎌倉に住んでいてもう家を持っているそうなんでわ。もう因島に帰ってくることもないけえ、大樹さんみたいな人じゃったら、タダで使って欲しいと言うとったそうなんよ。鍵をもらっとくけえ、来週の火曜あたりに部屋も見に行きますか? 譲渡の交渉はそれからでええけえ」

 なんとまたもや0円で空家をもらえるかもしれないです。企画書のかわりに連載を始めて、たった2日で思い描いたものを超える物件が見つかりました。翌日、部屋を見に行くことになりました。めちゃ広くて最高です。8DKもありました。かっこいい梁がある屋根裏も部屋にできそうです。収納庫にしてただあろう部屋もお篭り読書部屋とかにできそうです。個別の部屋が最大で8部屋はできそうです。誰でも訪れることができるリビングルームも広い場所にできそうです。動けば流れが起きます。まずは言葉にしてみるのです。ワクワクするとイメージを浮かびます。イメージとは自分の外にまだなくて、これから芽生えるものです。そのワクワクを言葉にすると外界に一つの現実が生まれます。ほんの数日前まで、場所すら決まってなかったのです。何かが現れ始めています。まずは文字にして企画を練ることをお勧めします。イメージを拡散させる練習です。するとやるべきことが見えてきます。若くて不安な人は迷ったらわたしに連絡をください。あなたが思い描いた図面イメージの手伝いをします。これは単なる自慢ですが、わたしが相談に乗ったクラウドファンディングはすべて成功しています。無料コンサルです。わたしはお節介ではなくて知恵の交換をしたいだけです。あなたの図面のイメージを聞いて、どうすれば企画の輪郭がでるのかを考えることで、わたしの精神はより豊かにひろがるのです。あなたのためとわたしのためは同時に起こるのです。

 家賃0円ハウスの場所は仮押さえしました。空家情報はもう大丈夫です。みなさん情報を親切にありがとうございました。家賃0円ハウスに住みたい人は連絡お待ちしています。

 090ー6735ー5815
 chiisaikaisha@gmail.com

 までお願いします。SNSでの連絡でも大丈夫です。と書いたところで電話がなりました。執筆中だったので無視しました。だけどなんとなく気になってガラケーを手に取りました。留守電が入っています。

「大学生です。家賃0円ハウスに興味があって住みたいと思ってます」

 ボソボソと喋って自身なさそうな声でしたが、真がある感じがしました。わたしはすぐに電話をかけ直しました。わたしは住んでいいよと伝えました。彼は大学を休学しているそうです。最高です。それならたっぷり時間はある。まだ家賃0円ハウスの予定地の鍵ももらってもないので、とりあえず遊びにきてもらうことにします。肌で空気を感じることは大切です。現地で人と話すことも楽しいです。家の電気とガスと風呂を使えるようすれば、改装中でも一応住むことできます。ハードコアで住みたい人は寝袋を持参でお願いします。もちろん家賃は0円です。当面の光熱費もいらないです。のちのち電力やガスも自給できるシステムをつくります。すると本物のゼロが手に入ります。改装や畑の開墾を手伝ってくれてもうれしいです。手を使って生活をつくってみると、身体の空間がひろがります。もちろん家賃0円ハウスの改装が綺麗に完成してから住んでも大丈夫です。自分の直観で楽しそうな方を選んでください。
 何かが始まろうとしています。わたしは始まりが大好きです。人生は始まりの連続です。始まりを続けていると継続になります。持続が生まれます。歓喜が生まれます。それを人生といいます。ずっとやりたくないことを続けているのが人生ではありません。それは自分ではなく他人の人生を生きていることになります。どうか何かを自分で始めてください。自分の人生を生きてください。家賃0円ハウスでは時間の使い方は自由です。お金のプレッシャーがない中で楽しいことをやってください。

 次回の連載では物件を0円でもらっているかもしれません。今回は0円の家の探し方でした。書いていると本当に見つかってしまいました。書いたことは真実になります。ワクワクして書いてください。体の力を全て抜いて書いてください。テキトーで自然そのものになってください。言葉じゃ伝わらないって言いますが多分それは言葉を感覚にしていないからです。言葉をあるがままに扱いましょう。言葉に優しくしましょう。言葉に敬意を払いましょう。そうすると苦しい現実は変化します。

 0円空家の探し方をまとめてみたいと思います。ポイントは次の5つです。

①散歩して楽しい気分になる
②街の匂いと風景が好きだと感じる場所に出会う
③すれ違う人たちが笑顔であること
④「これ、めっちゃ最高やん!」というたたずまい家を自分の目で探す
⑤散歩中に思い浮かんだ人に直接連絡する

 ⑤は空家に対する知恵が溢れている2人に連絡しました。何かに困ったらその筋の知恵溢れる人に連絡しましょう。あなたの周りにもそんな人がいるはずです。いないのであれば、環境を変えるときだと思います。知恵のそばに近づきましょう。会う人を変化させましょう。もしくは死者の知恵に触れましょう。つまり本を読んでください。死んだ人の言葉に触れてみてください。死ぬまで書き続けた人の本を読むことをオススメしています。何かをやり抜いて人生を全うした人の言葉は優しいです。肩の力が抜けまくっています。その言葉を体に感化させてください。

 上記の5つのポイントのうちに3つくらい条件が揃ったときに、ある程度は安い空家を探すことができます。完璧に0を目指す必要はありません。散歩はかならずしてください。きっと楽しくて最高の気持ちになります。散歩すれば見つかったようなものです。空家はなかったとしてもあなたは何かを掴むことができます。5つ揃えば、そのときは0円空家は見つかっているはずです。5つだけなのでドラゴンボールを7個集めるよりも随分と簡単です。簡単だと思い込んでください。そうすれは全ては上手くいきます。
 
 さて0円の家は見つかりました。この文章をここまで読んだあなたにはもう心のなかに現れているはずです。つぎは0円生活の楽しみ方を書きたいと思います。ちょっとだけお金もあったほうが楽しいです。お金の生み出し方も書いていきたいと思っています。知恵をお金と交換する方法は無限にあります。生活費をゼロに近づける方法も森羅万象には溢れています。生きるとはバイトや労働するだけではありません。手を使って楽しむことです。次回はもっと具体的に書きたいと思います。またまた極端なことを書くつもりですが、かなり簡単な方法です。誰にでもできると感じています。

 ここで家賃0円ハウスの第2回を終えるつもりでしたが、また寄り道をしたくなりました。それは冒頭のキルケゴールの言葉、

〝人生とは問題を解決するためのものではなく、目の前に現れる神秘をただただ味わい尽くすものである〟

 についてもっと考えたくなったからです。
 夕飯後にだらだらとYouTubeで観ました。ある動画に厳つい赤色のメガネをかけたヤクザみたいなオッサンが出てきました。オッサンは昔、人身売買をしたり金貸しをしたりして、ぼろ儲けしていたそうです。悪いことは人殺し以外なんでもやったと仰ってました。その後、違法の人身売買が摘発されました。長い間、服役していたそうです。出所後は「人のために生きたい」と自然に思ったそうです。それから新宿で駆け込み寺のような場所を運営します。そこには精神に闇を抱えた人、家庭内暴力に苦しむ人、さまざまに人が現れます。インタビュアーは聞きます。
「その人たちの問題って解決することはあるんですか?」
 オッサンはこう答えました。
「かんたん、かんたん。目的持ったらええんよ。それは何でもええ。どんなささいなことでもええんや。目的あったら人は救われる。これはオレかなり確信を持ってるね。だからまだ自分が定まってない人には、一回帰って考えてこいって言うねん。つぎにきたときにその子が自分なりの目的を見つけてたら、絶対に人生は好転するね」

 わたしは妙に納得してその動画を見ていました。問題は設定次第で解決するようです。「目的」という設定が必要です。不安で苦しい人は目的をつくることをお勧めします。先ほども書きましたが、大それた目的でなくても大丈夫です。明日は散歩してみるとかでもいいと思います。明日から、いえいえ今日からできそうなことを考えてください。思いつかない人はわたしと一緒に考えましょう。いつでも気楽に連絡ください。数年、引きこもっていたけど、わたしと連絡を取り合うようになってから毎日散歩できるようになった子がいます。その子は散歩中に撮った写真を毎週月曜日にわたしのもとへメールで送ってくれます。わたしはその写真の牧歌的な風景に心が洗われます。知恵の交換をしています。ささいなことから始めてください。困ったら遠慮なく誰かに頼りましょう。誰かに甘えてみる。それを目的にしてもいいのではないでしょうか。
 もちろんキルケゴールの「目の前に現れる神秘を味わう」という思想に救われた自分もいます。わたしは欲張りなのでこの2つを自分の核として、しばらく飽きるまで行動したいと思います。ネットで見つけたこのおじさんの動画、もう一度探したのですがどこにも出てきません。オジサンは幻だったのかもしれません。わたしのなかに生まれた神秘というミュトスだったのだと感じています。

 現実に立ち現れる「神秘」と「目的」をテキトーに楽しむ。これを人生の設定にしたいと思っています。

 家賃0円ハウスには「目的」と「神秘」があると感じています。わたしはまず連載をして0円生活の楽しさを書くという目的を持ちました。するとその翌日に物件が見つかるという神秘を体験しました。電話やメールをいただき、すでに3人ほどの人が家賃0円ハウスに入居希望をしてくれています。わたしのことをまったく知らない人です。まだわたしの単なる空想ですよ。ふふふ。それを信じて連絡をしてくれるなんて、神秘でしかありません。運動が起こってます。あとは家賃0円ハウスを現実に連れてくるために書くだけです。次回の連載では物件の契約までできているでしょうか? 乞うご期待です。それではまた。


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