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大吉堂読書録・2024年10月

『カブキブ!』(榎田ユウリ)
全7巻一気読み。
好きなものに、とことんのめり込みたい。好きなものの魅力を、みんなに伝えたい。その一心で歌舞伎部設立に奔走するクロ。彼は周りの人間を巻き込む。そして読者をも巻き込む。
ああ巻き込んでくれてありがとう。彼らと共に過ごした(読書)時間はドキドキハラハラして充実し、その頑張りに涙しました。
視点人物をポンポンと変えることで、物語はリズムよく進み、全ての人物に思い入れが生まれる。物語は余白を残し幕を閉じる。このあとまだまだ彼らは頑張り楽しみ進んでいくのだろうと余韻を残しながら。
面白かった!!

『読むのが怖い!』(北上次郎×大森望)
2000年代のエンタメ本のガイドなので正直古いです。でも昔のガイドを読むことで、その時代にその本がどう受け取られていたかがわかり面白いのです。
また、ふたりの好みや読書傾向が全く違うので、同じ本への評価が異なるのも楽しい。読みたい本も増えた。

『ぼくのあいぼうはカモノハシ』(ミヒャエル・エングラー、はたさわゆうこ・訳)
児童書やまんがでお馴染みの居候もの。その魅力が詰まっている。
ドタバタ騒動だけでなく、オーストラリアに単身赴任の父を想う少年と、故郷に帰りたい喋るカモノハシ、ふたりの心が交わる様にキュンとする。

『かつら文庫の50年 石井桃子さんがはじめた小さな子ども図書』(東京子ども図書館)
記念行事のスピーチなどをまとめた本。
文庫活動、子どもたちにいかに本を伝えるかの基本となるもの。それを屋台骨として、それぞれの文庫を、子どもたちと本を繋ぐものを、皆が築いていくのだろう。

『三途の川のおらんだ書房 迷える亡者と極楽への本棚』(野村美月)
死者に最後の一冊を選んでくれる書店。
実在の本が出てくるが書誌的な話というより、本屋を舞台にした人情話。湿っぽくなり過ぎず楽しく読む。
さて最後の一冊ならば、好きな本を読み返すか未読の本を選ぶか。悩ましいですなあ。

『中学生からの絵本のトリセツ』(川口かおる)
読むだけではない絵本の楽しみ方や魅力を実例を挙げながら伝える。
表紙の絵を楽しみ、物語の内容に心を通わす。絵本はシンプルな表現だからこそ、人間の持つ根源的な感情を丁寧に表すことができるのかも。
古めの作品ばかりの紹介なのは仕方ないのかな。

『ノベルダムと本の虫』(天川栄人)
世界中の本が集まる図書館を有する「物語の王国(ノベルダム)」その設定に圧倒され魅了される。
物語を動力とする機関、図書館を運営する本の虫、中断された物語、謎と企み。何て心惹かれるのか!
なぜ人は物語を欲するのか。物語の力が具象化され心に届く。

『骨董通りの幽霊省』(アレックス・シアラー、金原瑞人・西本かおる・訳)
幽霊省の存続をかけて、少年少女は幽霊を探す。
ユーモアとドタバタで物語を展開させながら、最後にキュンとさせる。シアラー真骨頂とも言えるご機嫌な作品。
しかしイギリスの人は幽霊が好きだよねえ。

『スラスラ描けるマンガ教室 ピリカの魔法のペン』(藤野千夜)
藤野千夜!? と驚き手に取る。
元漫画家の古本屋主人の孫娘が見つけたのは魔法のペン? 
物語上の絵を描くシーンに、マンガというかイラストの描き方を挿入させるという思い切った構成。それをマンガでなく小説で表すのが面白い。

『星読島に星は流れた』(久住四季)
天文学者が住む孤島には、数年に一度隕石が落ちてくる。島に集まった人たち。隕石が落ちて来た夜、事件は起こった。
舞台設定がなんとも素敵。丁寧に描写が重ねられ構築されるミステリ的魅力と、キャラクターの会話の楽しさの融合がもたらす面白さを満喫。

『きんじょ』(いしいしんじ)
作家いしいしんじと、息子ひとひ君の「きんじょ」での日々。
きんじょは広がり深まり収縮し拡散する。あらゆる人や動物や乗り物や音楽や出来事がきんじょにはある。
それに気づくためには、きんじょを楽しむ才覚が必要なのかも。でもそれはきっと誰にだってある。

『皮はぐ者 クロニクル千古の闇8』(ミシェル・ペイヴァー、さくまゆみこ・訳)
4000年前を舞台にしたファンタジーシリーズ。
隕石落下による自然災害を乗り越える人々と、不安を利用する者。ファンタジー要素が、太古の人々の自然観や宗教観を通して見る世界では当たり前のように思える。それが魅力。

『子どもと本をつなぐ 学校図書館の可能性』(高橋元夫、片岡則夫)
子どもと本との出会い、調べ学習についてなど、学校図書館の役割を実例を挙げて紹介する。
楽しむ読書と、学習のためにいかに本を利用するか。
「子どもたちに本を手渡すときには人の手が必要である」との言葉が胸を打つ。

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