見出し画像

「猫背=悪い」は本当か? :“正しい姿勢”という幻想を見直す

私たちは長い間、「猫背は悪い姿勢だ」という考えを刷り込まれてきました。背筋を伸ばすことが「正しい姿勢」であり、それが健康に良いと信じ込んでいる人も多いでしょう。しかし、これは本当に正しいのでしょうか?

この記事では、「猫背=悪」という一般的な認識を問い直し、より本質的な視点から姿勢を考えていきます。

「正しい姿勢」という固定観念の罠

まず、「良い姿勢とは何か?」という問いを考えてみましょう。

私たちは学校や職場で「背筋を伸ばしなさい」と指導されます。フィットネスや整体の世界でも、「良い姿勢を保つことが大切」と言われることが多いです。確かに、背筋を伸ばすことが適切な場面もあります。しかし、「それが唯一の正解」と考えてしまうと、かえって身体の自由度を奪ってしまう可能性があります。

姿勢は“動的”なもの

そもそも、「姿勢」とは静止した状態を指すものではなく、動きの中で変化するものです。スポーツを例に考えてみましょう。

・サッカー選手がプレー中にずっと背筋を伸ばしていたら、俊敏な動きができない。
・格闘家が「猫背にならないように」と意識し続けていたら、相手の攻撃をうまくかわすことができないでしょう。
・音楽家が演奏中に「正しい姿勢」を意識しすぎると、指の動きや腕の動きがぎこちなくなるかもしれません。

本当に大切なのは「どんな姿勢でも取れること」、すなわち「姿勢の選択肢が多いこと」です。

猫背は本当に悪いのか?

ここで本題に戻りましょう。「猫背=悪い」という考え方は、なぜ広まったのでしょうか?

猫背が問題視されるのは、多くの場合、「長時間その姿勢で固まること」による弊害があるからです。

例えば、
・デスクワークで何時間も同じ姿勢を続けると、肩こりや腰痛が生じることがある。
・スマホを見続けることで頭と首が前に出てしまい、首の動きが悪くなり「ストレートネック」と診断される。

しかし、これらは「猫背が悪い」のではなく、「同じ姿勢を続けることが悪い」のです。

実際、日常生活の中で「猫背が必要な場面」も多くあります。
例えば、
・デスクワークで、猫背の方が腕や手の動作効率がいい。
・スポーツの場面では、猫背で準備している方が素早く動けることが多い。
・リラックスする時に少し丸まった方が自然で快適。

このように、「猫背でなければならない場面」もあれば、「猫背でいてはいけない場面」もあります。つまり、猫背は単なる姿勢のバリエーションの一つであり、それ自体を善悪で判断することはナンセンスなのです。

本当に問題なのは「猫背しかできないこと」

では、なぜ「猫背が悪い」と言われ続けるのでしょうか?

それは、「猫背が悪い」のではなく、「猫背から抜け出せなくなること」が問題だからです。

例えば、長時間のデスクワークやスマホ操作で、
・背中が丸まり、伸ばせなくなる
・呼吸が浅くなり、首や肩の緊張異常につながる

こうした問題が起こるのは、「猫背のまま動かないから」であり、「猫背になること自体」が問題ではありません。

要するに、「猫背になること」ではなく、「猫背以外の姿勢を取れなくなること」が問題なのです。

「姿勢の選択肢を増やす」ためにできること

では、猫背と上手に付き合いながら、姿勢の選択肢を増やすためにはどうすればいいのでしょうか?

① 長時間同じ姿勢を続けない

どんなに「良い姿勢」でも、長時間同じ姿勢を続ければ身体に負担がかかります。1時間ごとに立ち上がったり、軽く動いたりすることで、身体の硬直を防ぐことができます。

② 体幹を鍛える

体幹の筋力が低下すると、姿勢をコントロールする能力も落ちます。プランクやスクワットなどの基本的なトレーニングを取り入れることで、自然に姿勢の選択肢を広げることができます。

③ 猫背を意識的にコントロールする

猫背が悪いのではなく、猫背を「選べない」ことが問題です。例えば、
・わざと猫背になってみる→その後、背筋を伸ばしてみる
・意識的に姿勢を変える習慣をつける→背中を丸める、伸ばす動作を交互に行う。

このように、「自分の意思で猫背を作る」「自分の意思で抜け出す」ことができると、姿勢の自由度が高まり、身体への負担も減ります。

まとめ:「猫背=悪」という固定観念を捨てる

私たちは、「猫背は悪い」「良い姿勢をキープしなければならない」といった考えにとらわれがちです。しかし、重要なのは「良い姿勢を保つこと」ではなく、「どんな姿勢も取れること」です。

猫背は悪い姿勢ではなく、単なる姿勢のバリエーションのひとつ
問題は「猫背しかできない状態」になること
大切なのは姿勢の選択肢を増やし、自由に動ける身体をつくること

「良い姿勢」とは、単なる静的な形ではなく、状況に応じて変化できるものです。猫背もその一部として受け入れ、より柔軟な身体の使い方を目指していきましょう。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集