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ソーシャルゲーム依存にどう関わる??

よくある難問

 お子さんのソーシャルゲーム依存は、多くの家庭が直面している問題です。このテーマには、コーチングやカウンセリングをしていると、比較的よく出会いますし、そしてなかなか難しいテーマでもありますね。

 もちろんコーチであれば、このテーマをGROWモデルでも扱うことは出来ます。

 その場合は、
①問題の解決でないゴール&お子さんも望むゴールを描くこと
 「子どもがゲームをしなくなる」はコーチングのゴールとしては望ましくありません。ゲームをすることを問題と捉えて、その問題がなくなった状態をゴールにしているからです。そうでなく、ゲームから離れて、お子さん自身の幸せと感じるような状態を実現していることをゴールとして設定してください。

②スケーリングを活用して段階的な変化を目指すこと
いきなり大きな変化を目指すのではなく、現状を受け入れた上で、徐々に変化を積み重ねていくようなやり方を目指しましょう。ゴールを10点として、現状が3点だとしましょう。その場合、「4点は◯◯な状態」「5点は◯◯な状態」と10点まで記述していくのです。その上で、まずは4点から目指していく。

 みたいなことを大切にしながら取り組んでいくことになるでしょうか。

 もちろんそれでも良いのです。ただ今回は、アドラー心理学の考え方を使って、ゲーム依存についての理解を深めてもらった上でアプローチを考えてみたいと思います。

ソーシャルゲームにハマる理由

アドラー心理学では、人間の行動を「目的論」で説明します。すべての行動には目的があると考えるのです。そして多くの場合、「所属の欲求」と「優越性の追求」から目的が生まれます。ソーシャルゲームにハマる理由を、これらの基本的な欲求との関連で考えてみましょう。

 「所属の欲求」を満たしたい!

 所属の欲求とは、自分が一員であるようなチームに所属したいという欲求です。これは人間の根本的な欲求です。ゲームをしていれば、クラスメイトのゲーム仲間との話題に事欠かないわけです。

 そして例えば、現実世界での友人知人がいなくても、オンライン上では仲間とつながるチャンスを得ることができます。一緒にゲームをするチームに所属することで、所属感を感じることができるのです。

 自分の居場所があり、自分の仲間がいるというのは生きていく上で大切なことです。ゲームという共通の趣味を介して所属感を得ているわけですね。ですから、ゲームへのハマり度を減らしていく、ましてやゲームをやめるとなると、この所属感が得られなくなる可能性があるのです。

  「優越性の追求」をしたい!

 優越性の追求とは、優れた存在でありたい、そのため自分を成長させたい!という思いのことです。そしてこれもまた人間の基本的な欲求です。社会の中で認められ、必要とされるためには、優れた存在でいたいと思うわけです

 ゲームをしていると簡単に達成感を得ることができます。レベルが上がったり、どんどんポイントが加算されたりするわけです。現実世界ではこれほどダイレクトに結果を出すことは、なかなか難しいですね。これもまたゲームにハマる理由なのです。

 そしてゲームは、やっているうちに上手になっていきます。そして自分が上手になったことが、スコアなどによって、ダイレクトに評価されるわけです。そのことにより自己効力感が高まったり、自分が優れた存在であると思うことに近づくのです。

 自己コントロール感も得られますね。ゲームの中では、自分の分身を自由にコントロールできる感覚を得られるわけです。これも現実世界では得難いものですね。

 そして上手になり、結果を出せると、ランキングがアップしたり、多くの人に一目置かれる存在になったりもしますね。それもまた自分が優れた人間であるというふうに思わせてれるのです。

 「所属の欲求」「優越性の追求」の2つについてまとめると、これらはとても強い欲求です。だからそれを満たしたいのですが、現実の世界の中では満たすことが難しかったり、時間がかかったりするのです。それを簡単に満たしてくれるのがゲームの世界であり、だからゲームにハマりやすいのです。

 そもそもソーシャルゲームは脳に大きな快感を生み出させるように設計されており、そのこともゲームにハマってしまう大きな要因となっています。ハマらせるために作られているわけです。

 とはいえ、人がゲームにハマるのは、それだけでなく、上記の2つの欲求など、大切な目的が満たされることも関係しているのです。


では、どうすればいいんだろう?

 アドラー心理学の基本方針は、

①目的がなんであるかを明らかにする
②目的を実現する建設的な手段を見つける
③その行動を取れるように勇気づける

 というものです。お子さんにとって大切な目的を明らかにし、それを実現することができる良い手段を見つけ、その行動がとれるようにサポートするのです。

 そのためにはまず、受容と共感からスタートしたいのです。

子どもの気持ちを理解しよう

 上に一般的にハマる理由を書いてみましたが、ハマる理由(目的や欲求)は子どもによって様々です。だからぜひお子さんにきいてみてださい。相手に興味を持ち、純粋に知ろうとするのです。

 ・自分の子どもがいま何を求めているのか?
 ・それはどうしてなのか?

 お子さんと一緒に、今ここからスタートして理想の未来に進んでいくためには、これらを理解することは大切だと思います。

 ただ「あなたがゲームしている目的はなんなの?」なんて質問しても、子どもは上手に答えてくれません。自分でもちゃんと把握もしていないと思います。だから

 ・なんのゲームやってるの?
 ・それってどんなゲームなの?もう少し教えて
 ・どこが楽しいの?あとは?

 とか話をきかせてもらいながら、「何が目的なのか?」「うちの子はゲームから何を得ているのか?」を理解しようとするのです。

 え?そんなこと話してくれない??

 だとしたら、そもそも話してもらえるような関係をつくる必要があるかもしれませんね。相手が話をしてくれないうちは、諦めて放っておくか、無理やり相手を変えるしかなくなります。無理やり変えようとしてもうまく行かないですね

 そしてこの相手を理解するプロセスをうまく進めるためには、否定や批判をしないというのも大切です。親は親なりに子どもの将来を思い、それと反するように見える行動を「悪いもの」だとしてしまいがちです。

 でも、そうしてしまうと、相手が素直に自分の気持ちや状態を話してくれなくなるのです。だから否定や批判は止めて、その背後にある欲求や思いを理解してほしいのです。「変えようとするな。理解しようとせよ」ですね!


他の手段を探してみよう

 お子さんの目的が理解できたら、ゲーム以外でその目的を満たす代替手段を見つけてみましょう。例えば

所属感を満たす行動をする:
 部活や習い事など、仲間感が得られるような、現実のコミュニティへの参加ができないかを検討します。どんなチームなら入ってみたいか、どんな人と仲間になりたいかを考えて、どんな行動を取るとそのチームのなかに自分の居場所ができるか考えるのです。

 居場所と同時に大切なのが自分の「役割」です。自分にはどんな強みがあり、どんな貢献ができそうかを考えることで、コミュニティの中での役割を持つことができます。

 このようなことを工夫することで、ゲーム以外の場でも所属感を得られるようにサポートするのです。

成長実感を得る機会をつくる:
 次は現実の世界で「達成感」「成長実感」を得ることについて考えましょう。勉強でもスポーツでも趣味でも構いません。お子さんが好きだったり興味があることで、彼らがしっかりと成長していることに気づいてもらうのです。

 そのためには、小さな目標設定とフィードバックが大切です。比較的簡単に達成できるような目標をつくり、その目標の達成を応援するのです。本人が自分で工夫しながら目標に向かっていけるようにサポートしてください。そして、本人の成長や変化をフィードバックするのです。

 あくまでもフィードバックはポジティブなものにしてください。小さくててもポジティブな変化を見つける目を養うことが大切なのです。そのためには、私たち大人が相手の良い変化や成長を、小さなものでも目ざとく見つけて、相手にフィードバックするのです。

 そうして少しずつ自信をつけていったら、次第に目標の射程を伸ばしていきます。無理のない範囲で長期目標を持ち、そこに向かって進んでいくことができると、より長期的な視点をもち計画的に動けるようになってきます。

 現実世界は即時の成長実感が得にくい側面がありますが、長期的な変化を作ることは可能なので、それが感じられるようになると、現実世界の課題に取り組むモチベーションもあがるのです。

 こうして現実世界での成功体験を増やしていくことをサポートしましょう


家族の絆とコミュニケーション


家族の時間を取ろう
:
 家族ですごす時間を少しずつ増やしましょう。物理的に一緒にいるだけでなく、心理的に接触している時間を増やすのです。お互いに関心をもって話をするだけでもいいのです。まずは子どものゲーム以外のことにも関心をもって、考えてることや感じていることを聞きましょう。

 家族でやってみたいことや、目標をつくるのもいいですね。夏休みに◯◯に行って、××しよう!とかでもいいのです。お子さんが関心がありそうなことで皆でできることを探しましょう。

 そして、できたらそのことに関して役割をもってもらってください。まずは本人が簡単にできたり、楽しくできること。そしてできたらその役割で達成感や貢献感を得ることができるように工夫してあげてください。

 そうすることで、家族のつながりを感じるだけでなく、役割をもって貢献する感覚が得られることになりますね。そしてもちろんイベントごとだけでなく、普段から家庭における役割ももってもらい、それをすることで貢献感や達成感、成長実感をもってもらえるように関わるのです。

 こうしていくことで、お子さんは自己効力感を高め、同時に家族への信頼感も高めるのです。

 大ベストセラー『嫌われる勇気』でも言われているように

 ・わたしはできる
 ・人々は仲間である

 と思えるようになることが大切なのです。そのことによって人生の困難を切り開いていく勇気が得られるのです。まずはそれを家族のなかで初めて欲しいのです。

ルール作りを考える

 必要に応じてゲーム使用のルールを作りましょう。ルールで大切なことは「合理性」「平等性」「合意性」です。

 合理的であり、誰がきいても納得感のあるルールであること。子どもだけを縛るのでなく、家族全員に共通のルールであること。そして何より、子どもが納得し、合意するルールであること。

 このことを念頭に置いて、話し合いを通じてルールを作ってください。手間はかかりますが、このようなやりとりを通じて、子どもは人と話し合い、合意し、ルールを守って生きていくということを学ぶのです。

 まずは状態のよいときに、余裕をもった時間を用意しましょう。お子さんには事前に話し合いの目的を伝えておきましょう。

 いまゲームをどんなふうに使っているのか、どうしたいと思っているのかについて十分に話をききましょう。ゲームには良い点もあるのです。勉強や能力開発になるものもありますし、単純に面白いということだってゲームをする素晴らしい理由です。

 ゲームによって生じている問題があるならそれを具体的にリストアップしましょう。担当している家事が出来てない(遅れてる)、寝るのが遅くなり朝起きられない、宿題ができてない、ご飯の時間に遅れる。。。。お子さんの意見もきき、あなたの考えていることも明らかにしましょう。

 ポイントは批判や非難をしないことです。単に問題や課題だと思われることを列挙していきます

 その上で、目標設定しましょう。ゲームの使用に関しても、家事や勉強や部活、家族でやりたいことなどに関する短期、長期の目標を明らかにしましょう。

 そして、その実現のためには、ゲーム使用に関してどんなルールを決めれば良いか一緒にアイディアを出し、決めていくのです。繰り返しになりますが、「合理性」「平等性」「合意性」に気をつけてください。

 必要に応じて例外も決めておくと良いです。「長期休みの場合は◯◯」「お年玉については××」とか想定されるものがあるなら、決めれば良いのです。

 試行期間を作るのもおすすめです。まずは2週間など時間を切って運用してみてから、一緒に見直すのです。またルール改定に関する取り決めをしておくのも良いですね。半年ごとに見直すとかです。

 ルールは具体的で現実的なものがいいですね。そしてルールを厳密に守らせることを目的にしないように注意してください。あくまでもお子さんのセルフマネジメント能力を向上させることを目的にして、段階的に成長していくことをサポートするほうが上手くいきます

おわりに

 ゲーム=悪。禁止すべし。では、親子関係も損なわれますし、お子さんが自己効力感を得て、セルフマネジメントしながら未来の目的に向かって生きるようなことには近づきません。

 ぜひゲームを通じて、お子さんとわかりあい、協力し合って、未来を切り開いていく体験にしてもらいたいのです。

 コーチがそんな気持ちで親子の成長プロセスをサポートしていこうと関わると良いのではないかな、と思っています。

 最後に。現代社会では親も子もそれなりのストレスや不満を抱えています。ですから、ストレスケアをサポートするのも大切です。そもそも自分軸で生きていない場合には、自分軸をはっきりとさせて、そこに向かっていきていくことをサポートすることも大切です。

 私たちコーチ自身がゲームを問題として、その問題を解決しようとしていることに気がついたら、視野を広げて、クライアントの長期的な幸せのために、いまできることをやっていきましょう。

そして、専門の医師や心理士の助けを得る必要を感じたら、クライアントがしっかりとそれらの社会的リソースを活用できるようにサポートしましょう。

僕たちと家族の未来を変えるコーチングの実践力をあげたい方は



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