コーチングの「裏ルート」でリフレーミングをする

 連日リフレーミングに関する記事を書いています。それぞれ単独でも読んでもらえます。理解を深めたくなったら他の記事もどうぞ。おすすめです。

リフレーミングとは、ある状況や経験を別の視点から捉え直すことで、新たな意味や解釈を与える手法。言わば、同じ絵画を別の額縁(フレーム)に入れ替えることで、全く異なる印象を与えるようなもの。

リフレーミング

 今日のテーマは『コーチングの裏ルート』。そしてそれを使ったリフレーミングです。

人の行く裏に道あり、花の山

投資業界の格言

 ではありませんが、コーチとしては普段はあまり通らないルートにも、その良さがあるものです。表ルートの良さも知った上で、時には必要に応じて裏ルートでの関わりもできるコーチでいてください。

表ルートの復習

 表ルートはGROWモデルをイメージして貰えば良いです。

(大目的)→ゴール→リソース→オプション→アクション

コーチングの表ルート

 例えクライアントが問題を語り始めても、何とかこのルートに乗せて考えてもらうのが、ザ・コーチングコミュニケーションなのです。詳しくは以下の記事をどうぞ↓

 表ルートでのアプローチは以下のような感じですね

CL「ちょっと人間不になっちゃって、職場でもうまくコミュニケーションが取れなくて」
CO「そうなんだ。本当はそれがどうなったらいいんだろうね?」(ゴール)

表ルートの例

 こんな風に迷わず『表ルート』に乗ってもらうのです。そして『表ルート』ならではの景色を見てもらう。それがコーチングのやり方なのです

「何があった?」は裏ルートの入り口

  実は「何があったの?」のような背景をきく関わりは『裏ルート』の入り口です。分かっていて使うのは良いですが、意識せずに使っていると、表ルートのパワーを活用しくくなるので、気をつけてください。

 では「何があった?」から裏ルートのリフレーミングに入っていく様子を見てもらいましょう。

CL「ちょっと人間不信になっちゃって、職場でもうまくコミュニケーションが取れなくて」
CO「そうなんだ。。何があったの?」(背景)
CL「同僚が僕の陰口を言っているという話をきいてしまって」
CO「そっか。。。そんなことがあったら、確かにどう関わったらいいか考えちゃうよね」

何があったの?

 どうでしょうか。マイルドな関わりすぎて、何をしているんだか良くわからないという方もいるかも知れませんが、これは結構面白いやり方なので覚えておいてもらいたいです。

 コーチは「何があったの?」と背景をきいたあとで、

「そんなことがあったら、確かにどう関わったらいいか考えちゃうよね」

 と言っています。

 裏を返せば

 「そんなことがなかったなら、あなたは迷うことはない」
 「そんなことが起こる前は迷っていなかったはず」

 ということを言ってるんです。もっと言えば

 「陰口をいわれるという不幸な出来事によって、今は迷っているけど、本来あなたはちゃんと関われるはずだし、そうしてきたはず」

 ということを含意しているわけです。こうやって小さくリフレーミングが始まっているのです。ささやかだからこそ、クライアントも抵抗することなく、少しずつ変化していきます。

 もう一度、最初から見てみましょう

CL「ちょっと人間不信になっちゃって、職場でもうまくコミュニケーションが取れなくて」
CO「そうなんだ。。何があったの?」
CL「同僚が僕の陰口を言っているという話をきいてしまって」
CO「陰口?」(具体化)
CL「あいつは自分勝手で好きなことばっかりやってるみたいな」
CO「そっか。。。そんなことがあったら、確かにどう関わったらいいか考えちゃうよね」
CL「本当にそうで、他には誰に言っているんだろうとか、聞いた人たちはどう思っているのかなと思うと、どうしていいか分からない」
CO「どうしていいか分からないっていうのは?」(具体化)
CL「表面的な話はできるけど、なんかそれ以上話せなくって」
CO「どんな話がしたいの?」(肯定形)
CL「いや、別に普通の雑談とか。。。。(沈黙)」
CO「どうしたの?」
CL「あぁ、なんか仕事のことで相談しにくいんだな、って思って」
CO「どうして?」(根拠)
CL「好き勝手やってるって聞いてるかも知れないから」
CO「そっか。これまでだったらどうしてたの?
CL「いや。普通に『ちょっときいて欲しいんだけど』『お願いしたいことがあるんだけど』とか」
CO「それじゃダメなの?」
CL「まぁ、ダメじゃないけど」
CO「けど?」
CL「どう思われるかが気になるかな」

展開例

 どうでしょうか。コーチはクライアントの話をききつつ

「どうしたいの?」→「これまでどうしてきたの?」→「じゃあどうしたらいいんだろうね?」

 みたいな流れをつくっています。先ほども説明したように

 「陰口をいわれるという不幸な出来事によって、今は迷っているけど、本来あなたはちゃんと関われるはずだし、そうしてきたはず」

 という前提を置いているので、このようにも展開できるわけです。

 クライアントは最後「どう思われるかが気になるかな」と言っていますが、「じゃあ、どうしたらいいんだろうね」とか「どんな言い方したらいいと思う?」とかでチェックメイトではないでしょうか。

 もう一例見てみましょう

CL「ダメだ。もう仕事辞めたい」
CO「何があったの?」
CL「結構大きなミスしちゃって。。。しかも2回目で」
CO「そっか。そんなことがあったら、確かに辞めたいって思っちゃうよね」
CL「そうなんだよね。ほんと不注意で情けない。。。」
CO「それでどうなってるの?」
CL「上司が対応してくれてるんだけど」
CO「けど?」
CL「気まずい」
CO「特に何が?」(具体化)
CL「あんまりキツいことは言われてないけど、きっと怒ってるんだろうなって」
CO「そっか。普段はどんなコミュニケーション取ってるの?」
CL「何でも話せる人だし、率直に何でも言ってくれるんだよね。。。あ」
CO「どうしたの?」
CL「いや。今対応中ってのもあるけど、もしかしたら私が凹んでるかもと思って、あまり色々言ってこないのかもしれない」
CO「だとしたら?」
CL「いやー。自分から謝った上で、厳しくフィードバックくださいって言ったほうがいいかな」
CO「そうしたらどうなりそう?」
CL「ちゃんとフィードバックくれそうだし、そうしたら気持ち切り替えて進めそうな気がする」

仕事辞めたい

 「そっか。そんなことがあったら、確かに辞めたいって思っちゃうよね」

 これって反応をノーマライズしているとも言えるわけです。

 ノーマライズ=同じような状況では、他の人にも同じことが起こると伝えること。一般化することで、過度に自分を責めたり落ち込んだりすることを避けようとする

 「そういうことがあったら、そう反応するのは普通だよ。だからそこまで悩むことないよ」

 というリフレーミングでもあるわけです。

このまま行くとどうなりそう?

 さて、裏ルートの2つ目は「このまま行くとどうなりそう?」です。今度は結末をきくパターンです。

 今やっていることを続けると、どんな結末になるかに直面してもらい、

 「じゃあ、どうしたい?(今の行動を続ける?)」

 と相手に問いかけるのです。これはアドラー心理学でいう『論理的結末』というものですね。

 ディケンズの『クリスマスキャロル』でも、主人公スクルージは、今のまま強欲な行動を続けた先の未来を聖霊に見せされて改心しましたね。

 この結末(なりゆき)を見るというフレーミングもコーチングの裏ルートなのです。

CL「コーチになるっていって、独立したのに、全然やる気がでなくて」
CO「そうなんだ。このまま行ったらどうなりそう?」
CL「うーん。貯金が尽きて」
CO「うん。それで」
CL「いや。。。そうしたらバイトとかするかも知れないけど」
CO「うん」
CL「もう。自分に自信なくなって、コーチングどころじゃないかな」
CO「そっか。それでどうなりそう?」
CL「いやぁ。。。妻に励まされながら、でも、いまいち動けなくて。。。最悪ですね」
CO「言ってみてどう?」
CL「まずいですね。なんとかしなきゃ」

結末を見る

 アドラー心理学をやっていると「結末から学ぶ」というのはかなり基本的なやり方なのですが、コーチだとこのルートを選択しない人もいると思うので、そんな場合は引き出しの中にいれておくと良いでしょう。

 クライアントの中には「苦痛回避」の傾向が強い人たちもいて、そのような人たちは、苦痛を伴う結末をリアルに想像したときに、行動のモチベーションを得ることもあるのです。ですから、GROW的なコーチングで動けないケースにアプローチしていくまさに裏ルートと言える関わりでしょう。

 クライアントのタイプわけについてはこちらをどうぞ

 「このままいくとどうなるか」という結末が描けたら

CO「では、そうではなくて、どうなったらいいんだろう?」(ゴール)

 とか

CO「では、まずは何を目指して動くと良さそう?」(サブゴール)

 とか

CO「どんなことからなら始められそう?」(行動)

 などに結びつけていくことができますね。一番のお勧めはゴールを描いて、そこから表ルート(GROW)に入っていくことです。

目線切り替えMAPで裏も表も

 勘の良い方はお気づきかと思いますが、表ルートと裏ルートを組み合わせると『目線切り替えMAP』になるんですよね。

 表ルート=未来++ → 未来+ →  過去+ → 現在
 裏ルート=過去ー → 未来ー

目線切り替えMAPとリフレーミング

 目線切り替えMAPという名前の通り、

 目線を切り替える=リフレーミングをする

 ということで、リフレーミング用のMAPだったわけです。

 目線切り替えMAPについては以下の記事をどうぞ!

 というわけで、目線切り替えMAPを使いながらコーチングをすると、自然にリフレーミングが起こりますし、さまざまなタイプのクライアントにしっかりと変化が起こりますよ。というお話でした。

 明日は「ポジションチェンジこそがリフレーミングの王道である」というテーマで興味深い具体例を交えながら解説をする予定です。お楽しみにどうぞ

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だいじゅ@コーチング脳のつくり方
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