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教員の働き方改革から考える部活動の現在地と未来予想図(#1)

本日は、学校における教員の働き方改革から考える部活動の現在地と未来予想図というタイトルでまとめてみたいと思います。
(書き進めたら膨大になったので複数回に分けさせていただきます)
文科省や各自治体における各種施作を否定する意図はなく、今後のキャリアにおいて教育活動へ興味があるアスリートや若手ビジネスマン、そして将来教育現場での就業を目指す学生に情報が届くことを目的として記していきます。

長時間勤務の現状

まずは、社会問題の一つとしてあげられる「教員の長時間労働」に関する情報から整理をしていきたいと思います。
一般的に「教員の仕事=教壇に立ち、生徒に対して高い専門性を有する教員が授業を行うこと」というイメージは浸透しており、現に日本の教育水準はそのきめ細やかな指導により確かな実績を積み上げ続け、OECDによるPISA(Programme for International Assessment)の学習到達度調査等においても高い教育水準を誇ることが明らかになっています。国際的にも日本の教育は大変に誇らしいものである反面、この素晴らしい教育の背景には教員の授業準備や生徒指導に代表される広範囲な業務をカバーしている現状があり、学校現場における業務実態は想像を遥かに上回る多忙さを極めています。
文部科学省はこれまでにも、働き方改革の前提となる情報集約として各教育委員会と連携し、「教員勤務実態調査」なる学校現場における労働状況の把握に取り組まれてきました。(2020年度実施の調査においては18都道県の52市町村が在校等時間を「把握していない」という別な意味での実態が露呈した調査でもありましたが…)また、民間団体においても勤務実態について調査を行っている団体が複数存在します。
※後述する文科省施策は平成28年度実施を元に策定されており、次回実施は令和4年度を予定
【ざっくり情報まとめ】
☑︎条例や規則で定められた一ヶ月以内の学校内における時間外勤務の上限45時間を       6割の教員が超過している
☑︎教頭の7割、主幹教諭・教諭の約6割が過労死ライン超過の勤務実態
☑︎ストレスを感じる度合い・疲労感等においても他公務員より高いスコア
 であったりと、現場の悲鳴が定量的にも可視化されている状況があります。

これらの調査結果には当然ながら様々な要因が存在しています。
教員の徹底した授業準備と広範囲で細やかな指導、授業時間数の増加、外部人材活用の促進遅れ、プログラミング教育の必修化やGIGAスクール構想によるタブレット学習の推進などに代表されるように100年に1度とも言われている教育改革の真っ只中でもあります。
これらと共に長時間労働の要因として頻繁に取り上げられるのが部活動の過熱化による長時間勤務・休日勤務の存在です。
次項ではその部活動に的を絞って整理を進めていきたいと思います。

注)給特法の教職調整額など法制的な側面の課題も存在しますが、今回は大項目として業務量、その中でも部活動に焦点を当てた記事とさせていただきます。

過熱する部活動と顧問を務める教員の目線

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甲子園・サッカー選手権・春高バレー・ラグビー花園 高校年代における運動部活動には数多くの象徴的な大会が存在します。数々のドラマが生まれ、目の前で必死に戦う選手たちのこれまでの努力を想像し心動かされるシーンに溢れます。更には多くの民間企業がスポンサーとなり大規模な露出を行い、民法各局も注目選手から大会結果まで懸命な報道で大会期間中の熱量は凄まじいものがあります。
生徒たちにとっては多くの犠牲を払って目指してきた舞台であり、中にはアスリートとしてのキャリア人生を手にする契機となる生徒も居ます。
学校側としても特色ある活動として生徒募集の追い風となる事例も少なくありません。文科省は部活動の意義については以下のように記しています。


【部活動の意義】
☑︎学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するものであり、学校教育の一環として、学習指導要領に位置付けられた活動
☑︎スポーツ、芸術文化等の幅広い活動機会を得られると共に、体力や技能の向上に資するだけではなく、教科学習とは異なる集団での活動を通じた人間形成の機会でもある。部活動は多様な生徒が活躍できる場であり、豊かな学校生活を実現する役割を有する。
(スポーツ庁. 『学校の働き方改革を踏まえた部活動改革【本文】』,2020 より抜粋)

仲間と力を合わせ頂点を目指すその姿は青春そのものとも思われる部活動ですが、プレイヤー・サポーターとしての視点から目線を変えて、顧問を務める教員目線になるとそこには負担軽減を求める声が集中しています。
【前提として】
☑︎インターハイ・全中連、甲子園や選手権などに出場しているいわゆる強豪校と呼ばれる学校だけが部活動を行っているわけではない
☑︎部活動の競技・指導経験を有する教員が配属していない場合も非常に多い
☑︎休日の活動は教員の勤務を要しない日である
☑︎部活動の運営・設置は法令上の義務ではない
という前提に加え、前項の長時間労働の現状を読み返してみると部活動顧問という役割の負担軽減を求める声にも納得ができます。

確かな意義と期待効果のある部活動をどのような方策で未来に繋いでいくのか。
それはすでに「教員の頑張り」だけでカバーできるレベルにはなく、環境面の整備と人的リソースの積極的な投入は喫緊の課題でもあると言えます。
次回は部活動を専門的スタッフとして支えることが期待される部活動指導員の役割と文科省が提言する部活動改革に焦点を当ててまとめていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

注)私立学校が強化目的で優れた指導者・競技経験者を教員として採用している場合や、公立学校の中でも部活動指導に熱心に取り組まれている教員の方々もいらっしゃいますので部活動指導をすることそのものを否定する意図はございません。私自身も部活動に育ててもらった経験があり、在り方を見つけながら価値を継承したいと考えるタイプです。

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