ちょびっツ/CLAMP
CLAMPの作品で前々から「ちょびっツ」が気になっており、CLAMP展に行ったのを機に読もうと思った。
ネットで中古を買ったら特別パッケージだった。
全8巻と短く、二日に分けて一気に読んだ。
「ちょびっツ」は浪人生である秀樹が拾った人型パソコンちぃとの関わりを描いたラブコメで、ひたすらにちぃがかわいい。
この世界では、人型パソコンは耳だけメカだが、他は外観が人間と変わらない。
作中によると、ちぃは重いが、柔らかさは人間のようだという。
人型パソコンとはいっても、アンドロイドやダッチワイフに近い存在のようだ。
他の人型パソコンの起動スイッチは耳だが
ちぃの起動スイッチは股の中のようだし(おいおい)
主人公の教え通りに言葉や常識を覚えていく様はゲームの「プリンセス・メーカー」を彷彿させる。
「ちょびっツ」の世界では、見た目が整っていて穏やかな人型パソコンと人間の関係は密にあたり
日常生活において、人型パソコンと親友、恋人もしくは家族のような関係の人も多いようだ。
人型パソコンと結婚をした店長は、初音ミクと結婚した人のエピソードを重ねてしまう。
結婚はお互いの合意の上に成り立つものだが、人型パソコンも初音ミクも意思はない。
人型パソコンや初音ミクを愛する気持ちについては否定しないが、片方の気持ちで結婚が決まる点においては“結婚”ということに関しては首をかしげてしまう。エゴを感じるのだ。
「ちょびっツ」はひたすらにちぃのかわいさを堪能しつつ、愛を考えさせられたり、人間や人型パソコンにあるものやないものを考えさせられる哲学的要素(メッセージ性のある絵本から考えさせられる描写は「すき。だからすき。」でも活用していた)がある。
ちぃには秘密があり、秀樹の最終決断により人型パソコンや人と人型パソコンの関係性、運命が変わるというストーリーなのだが(一人の決断が世界を変えるのはCLAMP作品定番である)
その決断について私は色々考えてしまった。
一緒に生活をするうちに、秀樹とちぃは親密な関係になるのだが
ちぃの起動スイッチはリセットボタンでもあるため、ちぃとエッチをすると記憶が消失するということが後に分かる。
秀樹は童貞であり、人並に性欲もあるのだが
ちぃとこれから一生共にするということは
これからエッチをすることができないということを意味する。
秀樹とちぃは恋人というよりは父親と娘に近い完結だ。
ちぃが秀樹の前で着替える時に見えてラッキーというよりは、恥じらいから隠そうとする描写が主で
秀樹にくっつきたがるのはちぃ側であり
秀樹は見守る姿勢が強い。
ちぃと体を重ねたいという欲求は秀樹にはないのだと思う。
ただ、人並に性欲がある秀樹が童貞のまま一生を終えるのは秀樹にとって幸せなのだろうか。
秀樹がAセクシャルならまだしも
エッチをしたら相手はあなたとの記憶を失うという制約は辛いもののように感じた。
他の人型パソコンと人がエッチをするかどうかの描写はないが
そのような制約から察するに、店長ら人型パソコンと親密な関係の方々はダッチワイフのように人型パソコンを抱いたのだろうか。
CLAMP作品に比べたら線の細かさや目の描写、トーン使いは押さえてあるので、少年誌を意識した絵柄になっており、パンチラや胸ちらといった少年漫画のノリを出しつつ
最終的にプラトニックラブを暗喩している作品は限りなく少女漫画らしさ(少女漫画の性質)を感じた。
反面
アンドロイドと人間の恋愛ものは少女漫画でも割とよくあるネタだが、エッチの有無について深掘りした作品は初めて見た。
タイトルの「ちょびっツ」の意味合いが明かされた時、衝撃的だった。
まさかそんな仕掛けとは。
とにかくちぃがかわいくて仕方ないので、ちぃのかわいさを堪能したい人にオススメの作品である。