夏になればいなくなる
施設長に話しかける時はいつも緊張する。
覚悟を決めて一呼吸置いて話しかける。
その日は珍しく朝普通に会話ができた。
笑顔で圧をかけることも
こちらの神経を逆なですることもなかった。
いつもこうならいいのにな
と思って半日も経たない内に
相変わらずな言い方があり
そう人も関係も変わらないのだと改めて感じた。
夏になったら施設長は仕事をしばらく休むことが決まっている。
転職して2年も経たない内に
私が職場で一番苦手意識がある施設長が
一旦休みに入る。
それは冬には分かっていたことで
もっと先のような気がしていたけれど
もう梅雨に入ってしまった。
梅雨があければ夏になってしまう。
毎日毎日、施設長の言動にモヤモヤしながらも
こうして一年半一緒に仕事をしてきた。
施設長がいなくなれば仕事は楽になる
とは限らない。
代わりの人を雇うわけではないし
別の人が施設長になれば
また施設は変わっていくだろう。
声を荒げることなく
感情を乱すことなく
毎日笑顔で
無意識に圧もかけてくる。
そんな施設長の笑顔も
懐かしく思う日がもうすぐ来る。
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