夏と花火と私の死体/乙一
インスタでおすすめ本として紹介されているのを見て、気になったので購入&読了。
200ページくらいの作品なので2時間でサクッと一気に読めた。
乙一さんの作品は「失はれる物語」「暗いところで待ち合わせ」を読んだことがあり
読むのはこれで三作目となる。
「夏と花火と私の死体」は乙一さんのデビュー作で、書いたのは16歳、デビューは17歳というから
天才はやはり天才なのだと改めて感じた。
これが書ける高校生、凄まじすぎる。
表紙が内容をまさに表しているのだが(表紙が印象的でよい)
9歳の五月ちゃんは親友の弥生ちゃんに殺されてしまい、弥生ちゃんとその兄の健くんが五月ちゃんの死体を隠し、事件を隠蔽しようとするストーリーである。
面白いのは、殺された五月ちゃん目線で物語が語られるところだ。斬新でよい。
健くんは子どもらしからぬ子どもで、おそらくサイコパスなのだろう。
笑顔で楽しみつつ、いかに死体を隠せばいいかを考え、実行していく。
死体を隠す日が花火大会の日なのだが、何度も見つかりそうになりながらも運や機転で乗り越えていく。
読者は弥生ちゃんに自分を重ね、ハラハラドキドキしながら、何度も「いよいよ終わりだ。見つかった。」とスリルを味わえるだろう。
実際には夏場の事件だから腐敗臭で見つかるような気がするし、11歳と9歳の証拠隠滅が完璧とも思えないし、もっと早く見つかる気がする。
実際、緑さんも早い時点で気づいていたに一票。
緑さんもサイコパスのようだから、健くんに同じ匂いを感じ取っていただろう。
血は争えない。
橘家、怖いな。
最終的に緑さんと健くんは結ばれるのだろうか。
同収録で「優子」という短編も読めるのだが
完成度はこちらの方が高いかもしれない。
どこまでが真実でどこまでが妄想か。
それは読者に委ねる形で、ハッキリとは明言されていない。
狂っているのは旦那様に見せかけて清音が狂っている………
と見せかけて
実は旦那様も狂っているのでは?と読者に思わせる構成になっている。
医者は旦那様に合わせているだけに過ぎないのかもしれない。
都合よくあの日だけご飯を食べないとか、食の好みや残食が同じなんてあるだろうか。
清音の力で優子に対してあんな力業ができるだろうかという疑問が残る。
はたまた、残食に関しては妄想も入っているのだろうか。
火事場の馬鹿力、というか
それもまた実の影響でもあるのだろうか。
まさか冒頭の花が、最後に繋がるとは。驚いた。