ポストコロナにおいて、外食業界にIT・デジタル化が必要な理由とは?
いつもの記事テーマとは異なりますが、先日、とあるセミナーに参加してきて、非常に勉強になったので、備忘録的ですがこの記事にアウトプットをしようと思います。
無料のWebセミナーとはいえ、そっくりそのままの内容を書くことやスライドを画像として貼り付けることは出来ないのですが、非常に勉強になるなと思ったので、今回はそのセミナー内の学びついて書こうと思います。
セミナー全体のテーマは、「フードテック」でしたが、その中の講座の1つが、「ポストコロナにおける外食産業のフードテック(IT・デジタルの)を活用する未来」でした。その講座に重点を置いて書こうと思います。
ポストコロナと外食産業の見通し
ポストコロナの外食産業を取り巻く環境ですが、
①個人は消費機会が減り余力がある一方で、企業・法人の消費は脆弱に。
②コロナ以前からの最低賃金の上昇と、原価高騰は避けられない。
➂新たな日常(在宅、非接触、Web上での消費行動など)が定着。
となっています。
給付金の支給、キャンペーンの実施など、政府/行政からの消費喚起や金銭的補償による一時的なバブルが発生しています。
しかし、実店舗で飲食業をやっている企業にとってはマイナス要因ほうが長期に渡って影響をしてくると推察されます。
そのため、「稼ぐ力」のある企業・店舗が行き残っていくとされています。稼ぐ力とは、下記のことです。
稼ぐ力=顧客の様々なニーズに合わせて商品・サービスを効率よく提供し、お金をもらうプロセスをマネジメントする力
コロナを含むこれら飲食店にアゲインストな状況によって、外食店舗の運営は従来の体系・体制には戻れないと考えていいかもしれません。
それは、外食産業におけるストロングポイントやこれまで培ってきたノウハウや投資したリソースが、このままの情勢では、最大限効果を発揮できないというリスクを抱えているからです。
例えばですが、
調理技術・提供パフォーマンス・サービスのホスピタリティ⇒非接触化、商品のデリバリー/テイクアウト化によって活かされない。
セントラルキッチン(設備投資)⇒外食産業の売上減少によって店舗売上減少・閉店によって稼働率が低下する。
FLコントロール⇒原価高騰や人件費の固定化でコントロールが効かない。
などが考えられます。
市場の変化と消費者の変化
また、昨今では外食市場(26兆円)・中食市場(10兆円)・内食市場(35兆円)の境目がなくなってきています。
実際に、
【外食プレイヤー】テイクアウト・デリバリー販売・キッチンカー参入で中食市場に、EC販売・冷凍食品販売で内食市場に進出しています。
【中食プレイヤー】CVSやSMのイートインスペース拡充で外食機能を保有することで外食市場に、ミールキット販売などで内食市場にも進出しています。
【内食プレイヤー】グローサラント店舗が増える事で外食市場に、惣菜強化や半調理品製品開発で中食市場に進出しています。
これらの事を鑑みると、3者がそれぞれ、外食市場(26兆円)・中食市場(10兆円)・内食市場(35兆円)という別の市場なのではなく、
食産業(61兆円)という形を成していると考えられます。
この市場の変化によって、
消費者は自ら選んだ時間・場所・スタイルで、食を選べるようになり、時間と場所の制約から解放されるようになります。
そんなコロナやデジタル普及が引き起こした、消費者の変化に対して、
事業者は外食店舗を運営して得た無形資産(ノウハウ・経験値・予測・顧客との繋がり)を使って新たな、ビジネスモデルを作る必要があるのです。
人手不足の深刻化がもたらす影響
また、コロナ以前からですが人手不足は依然深刻なままです。
これまでの飲食店の運営は、繁閑差を少数の正社員と多数のP/Aの組み合わせによってコントロールをしていました。
しかし、深刻な人手不足によって要員の固定化を進めることで、固定比率が上昇し、損益分岐点が上昇することになります。
外食を含むサービス産業は、時間ごと・曜日ごと・月ごと、など需要に”波”があります。
その波において、黒字の大きさが赤字の大きさをトータルで超すことによって、収益を出すという形が一般的です。
赤字の大きさを小さくする取組みにおいては、これまでは、波に合わせた人件費の調整が主なものでしたが、要員の固定化が進むことにより、コントロール機能が低下してしまうのです。
ここまで書かせて頂いた、
「消費者の時間と場所の制約から解放」と「(人員の)コントロール機能の低下」という状況下において、「稼ぐ力」を作るのに必要なことがデジタル化なのです。
DX(デジタル)化が外食産業にもたらす4つのこと
DXの推進によって、外食産業には4つの観点において変革がもたらされると考えられます。
①波(繁閑差)への対応
②サービス提供と消費の同時性問題の緩和
➂ロングテールビジネスがもつ可能性の発掘
④情報主導権への対応
です。
①波(繁閑差)への対応
この波と呼ばれる繁閑差を少なくする取組みですが、例えば、
◆資本争点率を高め、軽量化(省人化)された店舗を作る
⇒セルフ会計やアプリ注文、または配膳ロボットなどを導入し、少ない人数でもピークタイム対応ができる仕組みにすることで、損益分岐点を引き下げる。
◆顧客の囲い込み
⇒データのデジタル管理、CRM強化システムの導入によって既存顧客との関係性をより強固にし、安定的な売上を確保する。
◆イートイン閑散タイミングの別動機(テイクアウト・デリバリー)確保
⇒ポータルサイト活用、(複数の経路からの売上確保になるため)売上管理システムの導入などによって、閑散タイミング=赤字の時間帯の売上を確保する。
◆需要予測の自動化
⇒予約管理システム、需要予測AIシステムなどを導入し、人件費・食材原価などの経費を適切にコントロールすることで、波における赤字を無くす。
などがDX化による繁閑差の波を制御する取組みとして、考えられます。
また、他業種発祥ですが波を小さくする取組みとして、設備・店舗のシェアリングによる損益分岐点の引き下げや、ダイナミックプライシングやサブスクリプションサービス提供による売上繁閑差の最小化などがあります。
②サービス提供と消費の同時性問題の緩和
飲食業を含むサービス業が製造業などの他業種と大きく点は、「サービス提供と消費の同時性」です。
製造業でいえば、製品を安く作り、ストックし、高く販売するという流れの中で、事前に製造する過程において効率化を図ることが出来き、最終的に生産性向上に繋がっていきます。
しかし、サービス業では同時性の問題で、効率化の向上に限界あります。効率性を追い求めすぎると、付加価値が下がり、結果として売上・粗利そのものが落ち、生産性が低下してしまうのです。(生産性=粗利/労働時間より)
また、この同時性は下記のような飲食店ならではの影響を及ぼすことがあります。
【お客様】行きたいお店が満席で入れない ⇔【店舗】店舗キャパシティ(席数)には限界がある
【お客様】注文したメニューと違う商品が来る ⇔【店舗】調理のミス、配膳のミスが発生する
【お客様】ピークタイムに長時間待つ ⇔【店舗】想定以上の来客に対応できるスタッフがいない
【お客様】食べたいメニューが売り切れだった ⇔【店舗】出数を超える注文で提供できない(大幅に待たせる、在庫切れ)
などがあり、これらは顧客満足度の低下と共に、売上ロスに繋がってしまいかねません。
そのため、事前オーダー/事前決済/キャッシュレス決済/自動調理/事前調理/デリバリー・テイクアウト対応などのデジタルツールを導入・活用することによって、
根源的解決には行かないまでも、「サービス提供と消費の同時性問題」を大きく緩和できる可能性があります。
➂ロングテールビジネスがもつ可能性の発掘
これまでの飲食店経営においては、実店舗を持つ事が当たり前でしたので、一定以上の固定費(=賃料・人件費・返済)などが掛かる事が前提となっていました。
そのため、それらを支払って且つ収益を出せる売上確保が、店舗を運営する上でのある種の至上命題となっていたため、売上を確保しやすいマスマーケット(=需要の大きい・マーケットサイズの大きい商材や業態、人口の多い顧客層など)を獲得する業態が成立しえない状況になっていました。
しかし、デジタル化が進み、損益分岐点の低い業態ができるようになれば、
元々マーケットが小さく成立しえなかった、市場内でいうロングテール(健康食/ヴィーガン/宗教食/低アレルゲン/有機栽培野菜/ノーカーボなど)のビジネスモデル化が出来る
という可能性が出てくるのです。
④情報主導権への対応
これまでの飲食業界は、消費者の情報の非対称性により、チェーン店が優位性を発揮していました。
消費者は実体験や口コミでしか店舗を評価できないため、チェーン店は、沢山あるから、見たことあるから安心だろう。あの店は美味しいしコスパが良いらしい。と集客イメージの面で大きな優位性を発揮してきました。
一方で、情報社会化が一気に進んだことで、「誰でも」「簡単に」様々な飲食店の情報(安心感・コスパ・商品内容・雰囲気・口コミ評価など)を得る事が出来る様になりました。
情報社会を武器に転用する仕組み=SNS/アプリ/マイビジネスなど
のようなデジタル媒体を使って構築していく必要があります。
DX化による外食業界の課題解決
上記の4つでは、コロナによって発生した課題感と同時に、コロナ前から課題として挙げられていた飲食業界の元来の課題解決にも寄与します。
①繁閑差の”波”への対策⇒生産性が低い・人手が確保できない
②同時性問題の緩和⇒生産性が低い・食材供給の不安定さ
➂ロングテールの可能性⇒単価が上げにくい・出店困難エリアへの進出
④情報主導権への対応⇒差別化が難しい・大手チェーンという壁
これらの解決はコロナに対応するという短期的問題解決でなく、飲食業界全体のアップデートに期待できるのです。
ホスピタリティ産業としての未来
コロナに端を発する急速な進化ですが、一方で飲食業界は、
ヒトが付加価値を生み出す数少ない産業
という事実はきっと変わっていく事はありません。
他業種でも、小売⇒EC/レンタル⇒オンデマンド/新聞⇒ネットニュースなどデジタルに取って代われた物は多々ありますが、外食業界はあくまで、
外食店の食事 > EC・テイクアウト・デリバリー (コト消費重視)
という関係性はきっと変わりません。
そのため、より強固なサービスを作り、「稼ぐ力」を高めるためには、リアルとデジタルの双方活用・双方向の補完が必要になります。
例えば、
【リアル】店舗では実体験によってファンになってもらう⇒
【デジタル】EC・デリバリーなどのデジタル利用とデータ蓄積⇒
【リアル】データを活用した店舗サービス・商品のアップデート⇒
【デジタル】EC・デリバリーなどのデジタル利用率の向上⇒・・・・
といった形です。
この双方補完をDX(デジタル)化によってアップデートしていくのです。
ここまで長々と書きましたが、あくまで私が体系化した内容ではないので、偉そうですが、皆さんの参考になれば良いです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?