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Air‐Conditioning 水曜日 マリンバの響きのような 午後六時二十三分 見飽きた残照 形而下の雑踏 概念として咲く、思弁的な花弁 稲妻が走れば、雷鳴が轟くぐらい 確実に まるで、柔らかい 俄雨 雨 雫 アスファルトの香り、八月三十二日の午前中 秋桜の輪郭は正午過ぎには消え去るのだろう それは、存在する前に 主題がない小説の風景描写のような 水色のビルディングの片隅に ショートヘアの美しい人 佇んで、沈黙している 空調されている
白夜 乾燥した花弁の詰められた化粧箱の中にある 十月の心音を録音して、BGMにしている あなたの欲しいものは何色をしていますか 重ねられた嘘だって積み上げて逆立ちしたら それ相応のものにはなるのだろう 壊れそうなものほど、疑いなく信じてしまう 都市公団の団地の8階に住んでいる 裏映りをした散文詩を新聞紙に書いている あの女の子は、優しいお母さんに育てられた 心根の綺麗な子供だった 寂しさも抱き締められた温もりには勝てずに 眠る前にキッチンシンクで歯磨きをしてい
無矛盾 違う 間違う すれ違う この時代の 酸素が馴染まない 君はとても器用だね 効き過ぎた空調機のよう 八月の高い空の天辺 鹿の骨が、割れたような青 金曜日が遠く望ましい憂鬱ならば 快く蝉の足跡の六角形の名残になろう ザッハトルテの、表面のチョコレートの艶で 甘美な祈りの外れた音階で 二度と戻らぬように