ー詩と形而上学ーNo.30


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水曜日
マリンバの響きのような
午後六時二十三分
見飽きた残照

形而下の雑踏 
概念として咲く、思弁的な花弁
稲妻が走れば、雷鳴が轟くぐらい
確実に

まるで、柔らかい  
俄雨  雨  雫

アスファルトの香り、八月三十二日の午前中
秋桜の輪郭は正午過ぎには消え去るのだろう
それは、存在する前に

主題がない小説の風景描写のような
水色のビルディングの片隅に
ショートヘアの美しい人
佇んで、沈黙している
空調されている


花の
  完璧に
     無謬な
        全き
          清潔さ
             その、崇高

咲いている
       無垢なままの、意味のない会話が
空気清浄された
       穢れのなき気配が

わたしに似た、誰かがいる
吸気口に吸い込まれ
蒸発した体液が
循環する
    入れ替わる
         誰も気が付かないだろう
虚ろな無

吸い込まれればいい

一層のこと、気流に乗って
空の天辺まで昇っては
乾いていくのだろう
それは、
八月の積乱雲のように



Written by Daigo Matsumoto

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