大学職員の能力開発
大学の事務職員が「事務作業」を生業とし、これまでの職員像からの脱却を唱えられ随分と久しい。
これまでの大学職員といえば、教授をはじめとする教員らから指示を受け、資料を間違えないようにつくるのが重要な業務であった。
それ自体は重要な業務である反面、失敗しない職員が評価され、むしろ意見をいう職員は有難い反面「腫れ物」のように扱われることも多い。
それに社会的に見れば大学職員は、未だに「事務員」や「スタッフ」といった位置付けは否めない。
それらも背景として、2017年スタッフ・ディベロップメントの義務化がされたことは周知の通りである。
スタッフ・ディベロップメントは、法令上でいえば職員だけでなく教員も含まれる。助成事業の一環として、教職協働を名目に研修等を実施している大学も多いのではないだろうか。
ただ、教員との温度差は存在していて、つまり教授する側とそうでない側は、未だに相反し合っていると身をもって感じる。
上杉は、近未来の大学職員のあるべき姿として「①大学に愛着を持つ職員、②変化に前向きな職員、③学習し向上する職員」の3点を挙げている。
至極当然のことを言っているようにも感じるが、個人の能力開発を大学内の研修に依存し、与えられた仕事の本質的な理解を無視し続け、招いた結果とも捉えることができる。
つまり、大学職員も個人の能力開発を意識する必要がある。
玉川大学出版部によるシリーズ『大学SD講座』では、大学職員が業務内外で効果的に能力開発を行うための施策が描かれている。
例えば、大学職員が「研修講師となる」ことも必要だ。大学職員を対象とした研修の場合、研修慣れしている安心感から教員の他、専門家を招くことも多い。
しかし、学内で生じている課題の解決を目的とした研修であれば、学内事情に詳しい職員がもっとも研修講師としてふさわしいはずである。本書を読み進めていくと、教職協働という言葉だけが先行した結果、本質から目を逸らし、曖昧さを招いているとのではと気付く。
予定調和の議論ではなく、双方が水平的な関係性から意見を述べ合う場こそ必要であり、その役目を職員が担う必要があるのでは?とジっとしていられなくなる。
職員も教員も大学組織に務めるサラリーマンだ、なんて陳腐な言い方かもしれないが、本書は能力開発のための糸口だけでなく、事例・コラムを交え丁寧に描かれている。
最後までお付き合いいただき
ありがとうございました。
Twitterもやっています。@tsubuman8
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