#6. 追いかけた先。(『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』)
気づけば、言葉の響きを探している。
元々学生時代の頃から、小説を習慣的に読むようになり、言葉の海に溺れるようになった。そして、物心ついた時から好きな言葉のひとつが「ピーナッツバター」である。
その魅力は深く語ろうとすると長文になりそうなので、次回に回したいと思う。
簡単に触れるとまず「ピーナッツ」というどこか硬質で男前な感じ、そしてバターはどこか柔らかいとろけるようなそんなイメージが伝わってくる。その二つの言葉が合わさった「ピーナッツバター」は、まさに剛と柔を組み合わせた対にある言葉として、これこそ美しい言葉だと思わせるような魅力を放っている。
そしてちょうどコロナの影響が本格化する前の2月上旬ごろ、『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』という映画が封切りされた。その音の響きに惹かれて、わたしは早速東京・吉祥寺にあるUPLINKまで足を運んだのである。
あらすじ
ツキに見放された漁師タイラー、養護施設から脱走したダウン症の青年ザック、養護施設の看護師エレノアの3人による青年の夢をかなえるための冒険の旅を描いたヒューマンドラマ。3人はザックのためにある目的地へと向かう。
結果、見終わった後の充実感がかなりあった。
ここ最近見た映画の中では、10本のうちに入るくらい好きな映画となった。まず設定が素敵である。ダウン症のザックは、何だかその障害をものともしないくらいパワフルな気概が伝わってくる。
そしてタイラーは最初こそ、不良ぶったような役柄だったのだが、途中から割と真剣にザックの夢を叶えようとして奮闘する姿が見ていてすごく清々しかった。途中、ザックを探しにきた看護師エレノアも加わって、3人の旅は時に様々な事件に巻き込まれながらもなんとか前に進んでいくのである。
劇中は映像がすごく綺麗だった。日の光だとか、自然の中を彷徨う中での景色だとか、展開も早くて一瞬たりとも飽きることがない。その途中途中で出会う人々もなんとも個性的だった。特にわたしは、アマゾンみたいなところで出くわすおじいさんの雰囲気が好きだ。
”人間の善悪は、魂で決まる”
冒頭の方でタイラーが発した言葉である。
確かザックが自分はダウン症だから、決して良い人間ではないんだ、みたいなことを言っていたシーンだったと思う。(ちょっとうろ覚え…)
ひとを作るのは環境だ、ということを誰かが言っていた。
確かにその通りだと思う。劣悪な環境で生まれ育ったら、どうしてもそうした負の状況に自分も追い込んでしまう。でも、そんな環境下の中でもひとりでも尊敬できる人や導いてくれる人が現れて、自分自身も純粋に何か変えていきたいと思うのであれば自然と周囲も変わっていくようなそんな気がしている。
ザックは生まれ持った自身の障害について確かに悲観しているところがある。でもそれ以上に彼の持つ信念には本当に驚かされる。人にはいろんな背景や経験があって、そこから何かを学ぼうと思えばいくらでも学ぶことができるのではなかろうか。
この映画を見た後は、真っ先にピーナッツバターを買いに行った。そしてまた別の機会に、家でゆっくりピーナッツバターを食べながら観たいな、そう思える映画だった。