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友達に教えたいリスクとお金の話(3-1)

第3章 「確実に儲かる」ものを教えて!→ ありません。

投資が成功したという話は聞くけれど・・・

「フィリピンの不動産に投資すれば、確実に毎月利益が出ますよね。値上がりもするってことをみんな、知らないんだよね」
 ある日、私はスターバックスでほうじ茶を飲みながら日本史の本を読んでいました。隣の席では30代くらいのスーツ姿の男女と、半パン姿の男性が丸テーブルを挟んで談笑しています。
 スーツ姿の男性がラップトップPCを半パンの男性に見せ、不動産投資の話をしています。半パン姿の男性も快活に、自分の成功譚を語ります。
「一度に2倍にするか、100倍にするかって話なんですよね。まあ2倍を何度もやっていけば10倍にも、100倍にもなるわけですけど。一度で100倍にする方が楽ですよね

 半パン姿の男性はゲームでもするようにお金は増やせると思っているようです。3人は「資産家は、こういう話はあまりしないよね。限られた人にしか知らせない。たくさんの人に知らせる必要はない」と話し、納得した面持ちで去って行きました。
 大丈夫か、この人たち? もしかして一方がもう一方を騙しているのか。それとも、3人とも真面目に投資で儲けるのは簡単だと思っているのか。私には相当怪しい話に聞こえました。

「これをやれば確実に儲かる」「皆は知らない、あなただけに教える」それは金融詐欺のキラーワードです。
もし「確実に儲かる」ものがあるなら、誰にも教えずその人がぜんぶ利益を独り占めするでしょう。いえいえ、その前に「平均的な金融商品の何倍も儲かる」ものが「確実」なわけないのです。だって確実に儲かるなら、多くの人が争ってそれを買い、買値がつり上がるからです。買値がつり上がれば、つり上がった買値で買って一定期間持つことによる見返り(期待リターン)は低くなります。

そもそも「投資」って何?

 個人が自分の資産を運用しようとする場合「預貯金」と「投資」の二つの方法があります。
「預貯金」と「投資」の違いを、金融経済教育機構は下記のように整理しています。

出所:金融経済教育機構(2024年の講義用資料より抜粋)


 預貯金は、運用を始める時に半年後、1年後などの「利率」が前もってわかっています。また、元本も原則として保証されています。
 一方の投資は、運用を始める時に将来の投資成果がわかりません。元本の保証もありません。つまり「投資」をするということは「将来どれだけ増えるか、減るかわからない」「元本保証がない」金融商品にお金を投じることになります。
 そのため「確実に〇〇%上がる」「投資」は存在しません。これをまずしっかり頭に叩き込みましょう。
 「リスク資産への投資」と言うのは、投資に「不確実性(リスク)」がつきものだからです。「不確実なものは嫌だ。確実なものだけで運用したい」なら「投資」はあきらめましょう。

 預貯金のみでの運用は、期待できる利回り(期待リターン)は投資の場合に比べて低くなります。現在の日本のように低金利の環境下では、そのぶんより多くの元本を前もって積み立てなければなりません。若いうちから消費を切り詰めて貯蓄に励む必要があるでしょう。

 詐欺師や違法な勧誘を行う業者は「確実に」「より高い利回り」を得たいという希望につけこんできます。「そういう金融商品があればいいな」という気持ちが「あるに違いない」という思い込みにつながり、多額をだまし取られる、または無意識に高いリスクの金融商品に集中投資して、結果的に損害を被ることになります。
「投資は運用成果が不確実なもの」「確実な投資は存在しない」これをまず覚えましょう。

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