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友達に教えたいリスクとお金の話(4-2)

4-2は「コラム3」です。運用会社がリスク量を一定に保つ理由について書いていますが、読み飛ばして4-3に進んでも構いません。

(コラム3)投資目的に合ったリスク量の維持が大事な理由

 運用会社が当初取り決めた投資目的に沿って、資産配分を大胆に変えることをしない理由はなんでしょう?具体的に見てみましょう。
国内債券に投資するファンドAのリスク(リターンのぶれ)量を「1」とすれば、国内株式に投資するファンドBは「5(あるいはそれ以上)」とっている(下記グラフを参照)といえます。

ある公募投資信託の交付目論見書から、当該ファンドのリターン(左端)を削除したもの。
日本株、先進国株などのリターンは各資産を代表するインデックスの実績リターンです。

 株式のリターンが高くなりそうだという理由で、ファンドAが一部分でも株式に投資すればリスクの量を「1」以内に抑えることはできません。
 増えたリスク量により、リスクが「1」の時よりリターンが向上するかもしれませんが、逆に大きく損をすることもあるからです。
 ファンドを買った(契約した)投資家の期待の範囲内にリスクが収まらないので、たとえリターンが向上したとしてもそれを「よい運用」とはいえないのです

 リスク資産への投資には「不確実性」つまりリスクがつきものですが、個々の投資家がとることのできるリスクの量は、この後第6章で見るように投資期間(資金を固定できる期間)の長さと、投資家ごとに違う「リスク許容度」で投資家ごとに異なります。
 例えば、リスク許容度の低い投資家向けに作られた特定のファンドAがとるべきリスク量が「1」単位なのに、ファンドマネジャー(運用担当者)の相場観で、そのリスク量を「5」単位に増やすことは、契約違反であり、より儲かる可能性があったとしても、運用会社としては決してやってはいけないことなのです。
 このように、個々の投資家やファンドによってあらかじめ定められた投資目的の範囲内で運用する運用会社の義務を「忠実義務(フィデュシャリー・デューティ)」といいます。忠実義務は資産運用業者にとって最重要ともいえる義務で、これに違反すれば金融当局により業務停止や登録取り消しなどの行政処分を受けることがあります。 
 映画やテレビドラマで、自分の勘に頼って大胆な賭けをするファンドマネジャー像を見て「個人の相場観に沿って売買するのが運用」と思っているなら、それは大きな勘違いです。

テレビドラマや映画は話を面白くするために、大胆な賭けをするファンドマネジャーを描きますが、実際の運用は組織的かつ慎重な作業です。


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