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友達に教えたいリスクとお金の話(7-8)

第7章では個人投資家が資産形成目的で投資する際に「避けるべきリスク」を見てきました。今回は不動産投資について考えます。

現物不動産への投資 ― 投機ではないが・・・

 書店の「投資・金融・経済」のコーナーに行くと、サラリーマンに土地やマンションなど、現物不動産への投資を薦める本を見かけます。中にはアパートなどの賃貸物件の経営を指南するものもあります。
 現物不動産はたしかに投資の対象ではあります。賃貸できる建物を建てて適切に運営・維持し、賃料などを回収できるのであれば、悪くない投資だと思います。
 しかし私は一般的な会社員やその家族の皆さんには現物不動産への投資をお薦めしません。理由は明らかで、以下の通りです。
1)    一般的な会社員が「借金せずに」購入できる有料賃貸物件が果たして存在するか?最悪の場合、借り入れで他の経済的な選択に制約が生じる。
2)   現物不動産投資を行えば、自身の資産の大半をこの不動産が占めてしまう。他の投資や貯蓄を十分に行うことができず、将来の資金計画が立てにくい。
3)    現物不動産は売りたいと思った時にすぐに売れるものではない、流動性が極めて低い資産。都心の億ションならともかく、一般的な会社員に手が出る範囲の物件で、大きく値上り益が得られかつ費用等を差し引いた後に十分なリターンが出るのか?
 現物不動産投資を行って十分なリターンを目指せるのは、金融資産が5億円程度以上ある富裕層や法人に限られるでしょう。富裕層であれば借入はせずに、優良物件を資産の10-20%程度で入手できる可能性が高く、購入後の流動性が低くても問題ありません。生存中に現金化しない場合はそのまま遺産相続をすればいいだけですから。
 不動産は有価証券と異なり、日々の時価が目に見えない資産です。そのため「安定している」という錯覚を抱きがちですが、実際に売りたいとなった場合、買い手が見つかる保証はなく、見つかったとしても仲介手数料などのコストがかかります。どうしても不動産に投資したい場合は「大家さん」として長期的に賃貸事業に注力して収益を上げる覚悟をもち、余裕資金の範囲内で行いましょう。
 現物不動産と同様に、アート作品や宝飾品、骨とう品、馬主の権利など、その他の現物資産も資産形成には向いていません。理由は不動産に似ていますが、より専門的な知識が必要であり、売りたい時の買い手を探すのはより困難です。アートや宝飾品を買いたいと思うなら、資産運用目的でなく、あくまで趣味と割り切って欲を出さないことです。

次回は第7章のまとめと復習クイズです。

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