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友達に教えたいリスクとお金の話(6-4)

いよいよこれから、個々の異なるライフステージに合わせた資産運用の仕方を学んでいきます。まずはケーススタディ1です。

投資割合を決めるー定年を過ぎた高齢者の場合

 まず、老後に十分な貯えがすでにある田中さんの場合です。すでに定年を過ぎて定期的な収入がなくなっており、これからは「増やす」ことより「減らさない」ことが重要です。生活費は公的年金だけではおそらく足りず、預貯金の取り崩しが必要になるため、一定程度資金を「寝かせる」ことが必要な投資には向いていません。
 田中さんにとって重要なポイントを整理すると以下の二つです。
1) いつでも現金化できる「流動性
2) 「増やす」は不要、「減らさない」つまり「安全性

 この二つを満たすのは、預貯金(円建ての普通預金または定期預金)しかありません。リスク資産に投資をしないのはもちろんのこと、新しい保険契約も結ばない方がいいでしょう。保険契約は収入がある時の急な死亡に備えるためのものであり、すでに収入がなくなっているのに新たな契約を結ぶ意味は乏しいです。新たな保険契約はむしろ定期的な出費を増やすことになり、有害でもあります。
 定年を迎える高齢者は、金融機関の絶好のターゲットです。10年間資金を固定する保険契約などを勧められますが、流動性が大事なこの時期に、資金を固定して「流動性」を犠牲にする契約は避けるべきです。もし定年後にも「増やす」必要があるのなら、保険契約より流動性の高い金融商品を選ぶ方がいいでしょう。

保険会社や銀行の営業員は「相続税対策に」などと巧みに保険契約をすすめます。
高齢者にとって資金を長期間固定するのはNG。同じ利回りをもっと流動性の高い他の金融商品で期待できないのか、ちゃんと調べればよりよい代替商品が見つかります。

 なお、今後の物価上昇で蓄えたお金が目減りするのでは、と心配な場合は、NISA枠を活用して資産の一部を世界株式インデックスファンドに投資するのも一つの方法です。すでに述べたように、株式への投資には10年程度以上の期間が必要なので、この先10年間生活費に当てなくていい範囲の金額のうち、多くても3割程度未満の割合に留めるように気をつけましょう。

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