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友達に教えたいリスクとお金の話(4-6)

前回は「なぜ当たらないのか」「当てようとしても市場インデックスに勝つのは至難の業」という話でした。今回は「コラム4」です。「分析」をしても実を結ばない理由である「市場の効率性について」詳しく説明します。

(コラム4)市場の効率性について

 SNSでは「市場は完全に効率的ではない」という投稿を目にすることがあります。確かに、効率的市場仮説はあくまで「仮説」であるため「どんなときでも100%真実」とは言えません。
 ただし、AIなど情報技術の進歩に伴い、先進国の金融市場における効率性は年々高まっているのも事実です。そのため、一部の運用会社では日本大型株のファンダメンタルアクティブ運用(注)を廃止するなどの動きも出ています。
 (注)企業調査などに基づき組入れ銘柄を厳選する運用手法。AIなどによ りシステマティックに銘柄を選ぶ定量的アクティブ運用と対比されます。

 それでも、個人投資家が「自分はプロよりすぐれた投資ができる」かというと、大いに疑問です。それは、投資運用における情報の活用スピードが、プロと個人では圧倒的に違うからです。
 書店で個人投資家向けに販売されている株式投資の指南本としては、株価チャートを分析することを薦めるもの、また複数の指標などから「成長企業を選ぶ」コツを伝授するものなどがあります。
 しかし、こうした分析を行った個人が「よし、買いだ」「売りだ」と判断するのを、他の市場参加者が待ってくれるわけではないのです。機関投資家(プロ)は同じ(かそれ以上の)情報を持っており、判断はほぼ瞬時に行われています。
「だけど、分析しないで買うよりはいいのでは?」と思う人もいるでしょう。「何も考えずにインデックス投信だけ買っておけというのは個人投資家を馬鹿にしている」という意見も聞きます。
 ここで一つの例をあげます。「人より馬の方が走るのが速い」は事実です。しかし「だから通勤、通学は馬で行くべきだ」と言う人は現代にいるでしょうか。自動車や電車で行きますよね。
 株価チャートや会社四季報で「研究」する個人投資家は、この「馬で行く」を市場に対してやっていると言えばどうでしょう。馬でも目的地には着くことができますが、着くころには学校の授業も、会社の就業時間も終わっているとしたら?
 株価は毎日動くので、自分が買った後に上がることも、売った後に下がることもあります。そのため、自分が「馬で通学・通勤している」ということには気づきにくいものです。情報をすでに反映済の株価で取引しても、市場に対する超過リターンを得るための助けにはならないといえるでしょう。

「勉強や分析をして個別銘柄を売買しても市場インデックスに勝てない」と聞いて「勝てなくてもいい、増えればいいんだ」と言う人がいます。「増えればいい」だけなら「市場並み」にしておけば、自分の選んだ銘柄が「負ける」「紙くずになる」は避けることができますね。

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