お金と投資のクイズ(回答)
回答です。正解かどうかより、その理由を理解できるかが重要です。答えがあっていても、理由が違えば、これをきっかけに理解を深めてください。
問1 日本より金利の高い国の外貨預金に預けると、その利息を円に直した時に確実に受け取ることができる
正解は 間違っている(x)です。
外貨預金の利息はあくまでその外貨(豪ドルなら豪ドル)建ての利息です。3か月の定期預金なら、預金を始めた時(S)と3か月後(E)の間に円と豪ドルのレートが変動し、受け取ることのできるリターン(損益)は、(元本+利息)に、為替レートの変動を反映したものになります。
日本より金利の高い国の通貨の預金に円から投資すると、3か月後には円とその通貨(外貨)の金利差に見合う分だけ為替が変動して金利差がなかったものと同じようなリターンに(理論上は)なります。理論通りの動きにならないケースもありますが「確実に」金利差を円で受け取ることはできません。
「裁定」という言葉の意味を知っていれば、この質問には容易に回答できるでしょう。初耳であれば、調べてみてください。
問2 10年間資金を運用して倍にするには年率8%のリターンがあれば十分
正解は 正しい(〇)です。
「72の法則」を知っていますか?72を年数で割ると2倍になる利回りが出てきます。72÷10=7.2%ですから、年率8%のリターンで十分ですね。バブル期以前は、生命保険会社の養老保険でもこれくらいは回ったのですが、いまは・・・ダメですね。
問3 10年間の運用期間の間、前年度より5%マイナスになる年が1年でもあれば、どんなものに投資しても年率8%以上には絶対ならない
正解は 間違っている(x)です。
株式(ここではインデックスファンドへの投資を想定)に投資をしていると、運用期間の間の1年だけ(単年度)のリターンがマイナスになることはよくあります。株式のリターンの振れ幅がそれだけ大きいということであり、1年で10%以上下落する場合もあります。逆に、暴落の翌年度はそれと同様の上昇率を示すなど、下振れもするけれどその分上にも振れるのです。
安全資産といえば短期金利(通常は短期国債利回りですが、簡便的に預貯金の利息と考えてください)になりますが、マイナスにならない資産ばかりに投資していては、アップサイドは望めません。年率8%程度を目指すのであれば、リスクの高い資産への投資を増やすことでしょう。もっとも、リスクが高い資産のリターンがすべて高いかというと、それは違います。
日本の個人投資家が、個別株の短期売買やFX証拠金取引などのギャンブル的な手法を盲目的に信じ、自分の資産を長期にわたって成長するチャンスを棒に振っているのは前回述べたとおりです。リスクに見合ったリターンが得られるものを見分けられるようになることが金融リテレシー(金融の知識)が十分ある状態だと言えます。
問4 上場不動産投資信託のメリットは、実物不動産に比べて少額で投資できることの他に流動性の高さがある
正解は 正しい(〇) です。
不動産投資をうたう本は多いですが、普通の勤め人にとって実物不動産への投資は持ち家に留めておくのが無難です。理由は1)投資に多額のお金がかかる(ため、それ以外の投資ができない)ことと、2)流動性が極端に乏しいことです。また3)不動産投資には手間や費用がかかる点も見逃せません。
1)は理解できるでしょう。持ち家だけでもローンを組んでいる人が大半なのに、それ以外に借金を背負い込むのは愚の骨頂です。
2)の流動性は、不動産投資の信者が無視している最も大きなリスクです。株式や投信と異なり、不動産は売ろうと思った時にすぐには売れません。買い手を見つけるのに何年もかかる場合がありますし、売買の手数料や税金も差し引かれます。
3)家屋・建物は、持っているだけでは価値は下がる一方です(減価償却)。持っているだけで値上がりが見込めるマンションは東京23区内の人気エリアの億ションくらいです。アパートや店舗を経営して利益を上げなければ意味はありませんが、それに多大な労力と経費がかかるのです。素人が片手間でできるほど甘くはありません。
このような欠点をすべて解消し、不動産への投資を可能にするのが不動産投資信託(REIT)です。上場しているので売買は容易ですし、実物不動産に必要な維持コストもかかりません。値動きが激しいからとREITを避ける人もいますが、値動きがあることは流通市場があり毎日売買できることの証左です。
問5 上場している企業の従業員にとって最も合理的な株式投資は、勤務先の株式への投資である
正解は 間違っている(x)です。
分散投資の観点から、まず避けるべきなのが自社株投資です。自分の収入が会社の収益に依存しているのに、投資収益まで会社の収益に依存させるなど、愚の骨頂です。日本のメディアが投資理論を知らず「会社の補助があるからお得」などと自社株投資を勧めるので個人はすっかり信じ込んでいます。一時期の東芝の自社株会がどういう状況だったかを考えれば、自社株投資を避けるのが賢明と言うことはわかると思いますが・・・。
日本の個人投資家が陥りやすい典型的な間違った主な「信仰」は①自社株投資 ②(不要な)生命保険に入る ③不動産神話 ④元本確保神話 ⑤経済や株の勉強(チャート)をしてFXや株式を「当てに行く」ことです。 最近では⑥副業で稼ぐ というのも新たに加わりましたね。やれやれ・・・
④元本確保神話 については、問2,問3を参照してください。元本を確保することを過剰に重視するがゆえに、長期間投資できるのにリスクをとらず、期待リターンが低い金融商品に塩漬けにしてしまう傾向は、②の「不要な生命保険に入る」にも共通します。生命保険会社や銀行が熱心に売っている外貨建て年金商品はまさにこれで、10年程度以上資金を塩漬けにするため、③不動産投資のところで述べた「流動性」のリスクも大きくなります。(この項終わり)