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読書感想文「この世にたやすい仕事はない」

津村記久子の連作短編小説です。本屋で文庫本が新発売されていたので、図書館で借りれるかな、と思い予約して待つこと4か月。ようやく読めました。流石、人気作家。

下記が新潮社公式サイトの紹介文です。
冒頭からちょっと不思議な世界が広がる感じですが、話にスッと入れる文章力は実力ある津村記久子という感じです。
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「一日コラーゲンの抽出を見守るような仕事はありますかね?」ストレスに耐えかね前職を去った私のふざけた質問に、職安の相談員は、ありますとメガネをキラリと光らせる。隠しカメラを使った小説家の監視、巡回バスのニッチなアナウンス原稿づくり、そして……。社会という宇宙で心震わすマニアックな仕事を巡りつつ自分の居場所を探す、共感と感動のお仕事小説。芸術選奨新人賞受賞。
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人気作家の書いた小説なので映像メディアが放っておくわけはなく、ドラマ化もされています。

内容としては前職を一身上の都合でやめてしまった主人公「私」が職業安定所の職員に色々な仕事を紹介してもらい働くのですが、それが何とも不思議な仕事で・・・というものです。

経験する仕事は5つですが、どれも最初は戸惑う内容で、かつ業務的に一見つながりが無さそうで繋がりがある、という不思議。
経験する順番は下記です。

  1. みはりのしごと

  2. バスのアナウンスのしごと

  3. おかきの袋のしごと

  4. 路地を訪ねるしごと

  5. 大きな森の小屋での簡単なしごと

主人公も徐々に仕事に慣れていきその仕事に愛着を持っていくのですが、その過程で不思議なことに気が付き、その原因を突き詰めていくとまた謎が深まるという展開で、1つの章が50ページくらいという読みやすい分量ということもあり、スッと内容が頭に入ってきます。

津村記久子の小説では過去に読んだ「ディス・イズ・ザ・デイ」も大好きなのですが、話の中の空気感は共通ですね。
津村記久子ワールドとでも表現すればよいのでしょうか。
※この小説もとても面白いのでおススメです。


私も転職経験者なので共感できることが多かったのですが、一見無関係に見える仕事でも前職の経験は生かせることも多く、それが現職の仕事の幅を広げたり、新しい仕事の楽しさを発見することもできる、ということを再確認させてくれます。
1度でも社会に出て働いたことがある人には刺さる小説なのではないかと思います。

日経新聞電子版に連載されていた連載小説なので「働く人を主人公にした話を書いてほしい」というオーダーを受けて書いた小説であろうと推測されるのですが、テーマの制限がある中で読みやすく面白い小説を書けるというのは素晴らしい才能だと思います。

この本を読んだ人と内容について語りたいのですが、ここでツラツラ書くとネタバレになってしまうので詳細な内容を書けないのでが非常に残念です。お酒やコーヒーを飲みながらこの小説の内容をネタに話をしたくなる、そんな小説でした。

まだ読んだことが無い方には自信をもってお勧めできる小説です。
是非読んでみてください。

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