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ドラマ『僕のいた時間』前編•会うべき人には必ず会える

ドラマの世界で「ラストシンデレラ」
世間を賑わせていた頃、
私はテレビに釘付けだった。
「ブラッディマンデイ」で春馬くんに出会って
「サムライハイスクール」とドラマの中で
いつもかっこいいヒーローだった春馬くんが20代になって年上のお姉さんと「ラストシンデレラ」で
あんな大恋愛をして、そしてその次に三浦春馬が
魅せるものってなんなの?と世間が注目していた頃、
春馬くんが選んだのは「僕のいた時間」だった。

テレビを見ていた彼がALS患者さんとその家族のドキュメンタリーを偶然見て、命や家族のことをドラマで伝えたいとプロデューサーさんに企画を彼自ら持ち込んだそうだ。

「僕のいた時間」が春馬くんと私の関係も一方的すぎるけど決定づけたのだと私は勝手に思っている。

ドラマや作品は時としてその人の人生の中で、
どんなに時間が経っても忘れられないほどの印象を
残すことが出来るものだ。
「僕のいた時間」はそんなドラマだった。

****
拓人(三浦春馬さん)は大学生で就活中。
拓人の通っていた大学は有名大学でもないし
これと言って特徴のある大学生活を送っていたわけでもなかったから
いろんな企業にエントリーしていく中で次々と
「お断り」されていく。
どこからも求められていないと感じる自分に
自信がどんどん崩れていく日々。
大学を卒業するのだから次の進路を決めないといけないのはわかっているけれど、取り立ててやりたいこともない拓人は就活本に載っていたエントリーのやり方を参考に面接の練習をしたりしているけれど、うまくいかない。
実は拓人には地方で病院を経営している医者の父親(小市萬太郎さん)がいて
彼も幼いころには当たり前のように医者になると考えていたのだが、
医者を目指す勉強をすることに挫折して自分よりも
勉強に向いていた弟が、親の期待に応えて医者を目指していたことで自分は期待に応えられなかったという挫折感も抱えている。

面接漬けの日々を送っていたある日の企業で
集団面接中に電話の音が鳴り響いてしまう。
それは拓人ではなかったけれど、困った気配を感じた彼はとっさに自分の携帯ですと、かばってしまう。
それが拓人と恵(多部未華子さん)の出会いだった。

恵は父親が病で早くに亡くなり、母親(浅田美代子さん)はお弁用屋さんで働きながら2人で暮らしている。
母親のことを考えても、大学には奨学金で通っていた彼女は卒業後は返済も始まるし、就職しないといけないと強く思っているけれど、うまくいかない。

その企業にもお断りされた2人は、のちに同じ大学であったことで再会し、とっさに自分を面接中にかばってくれた拓人のことを恵は少しずつ意識してしまう。

再会した2人は今日だけは就職のことも忘れて海に出かけることにする。互いのことを話しながら、幼いころに埋めたタイムカプセルのようにガラスの空瓶に
その時の自分の気持ちをそれぞれに書いてメッセージを残し、その海の砂浜に埋めた。
その時に拓人は「会うべき人には必ず会えるんじゃない?」という大事な言葉を恵に伝える。
その日が2人にとって大変だけど大切な人生の始まりだった。

2人の就職活動はその後もなかなかうまくいかなかった。
友人たちが卒業後の進路が決まっていく中で取り残されたような焦りを覚えながらも、少しずつ関係は近づいていく。

拓人の実家は典型的な地方のエリートで、
父親は医者になれないのなら中途半端に都会で就職などせずに実家に帰って、病院の事務などの仕事を覚え、やがては事務長になり、これから医者になろうとしている弟とともに病院を支えてくれたほうが良いと拓人に告げ、専業主婦の母親(原田美枝子さん)は、父親に言いなりで、跡継ぎの男の子を医者にさせることが自分の役目だと周りや夫からのプレッシャーのなかで子供たち自身を見てあげることが出来ずにいて、今はひたすら拓人の弟の陸人(野村周平さん)が医学部の入試を成功させることしか考えられない。そんな環境の中、両親に自分自身を見てもらうことを早くからあきらめてきた拓人は、ずっと寂しさを抱えている。

弟の陸人は医学部に合格し、東京で暮らすために拓人が親から与えられていた東京のマンションから通学するために上京し、2人で暮らし始める。

拓人はこれまで面接の中で就職に成功するため、
人から借りてきた言葉で、自分を繕うように言葉を重ねていたが、初めて自分の葛藤や自分の未来に対する言葉を伝えたことで企業からの信頼を得て就職が決まる。
恵は卒業するまでに内定が取れず、学生時代からのファミレスでのバイトを続けながら就職活動を続けることにする。

社会に出たことで立場が変わった拓人と恵はその関係がぎくしゃくしながらも仲直りを繰り返し、少しずつより関係が近づいていく。
企業に就職を考えていた恵は、母親がボランティアしていた老人施設を手伝ったことで弱い立場に立つ人たちをサポートできる自分の特性に気が付いていく。

仕事やプライベートが充実し始めた拓人は、気のせいかと思っていた自分の体の異変に少しずつ気が付いていく。
そしてとうとうALS患者であることを専門医(吹石満さん)に告げられてしまう。

皆さんはALSと筋ジストロフィーの違いがお分かりですか?
映画「こんな夜更けにバナナかよ」の鹿野さんは筋ジストロフィー。
筋ジストロフィーは遺伝子の異常で正常な筋肉が作られなくなることで筋肉の低下が起こり、
拓人のALSは原因は筋肉にあるのではなく、
筋肉に命令を出す神経に異常が起こる病気だということだそうです。

****
自分の将来が医者になれないばかりか最終的には自分のことが自分では、なにひとつできない体に少しずつ変わっていくことを知った拓人は、恵に負担をかけることを嫌って、たったひとりで別れを決断し
恵に病気がばれてしまう前に別れを告げます。

それは長い闘病生活を小さな子供を抱え、ずっと家族のために戦って恵のお父さんを一人で看取り、その後、恵の幸せだけを願っている彼女のお母さんのためでもありました。

恵は、拓人の別れの言葉を素直には、受け入れられませんでした。
やっと自分の将来のやりたいことが決まり、そこでは恵は必要とされている。
けれど「飽きたんだ」と言われた拓人の言葉を跳ね返すだけの自信が恵にはその時はありませんでした。

やがて少しずつですが体が衰えていく拓人。
昨日できたことが今日いきなりできなくなっていくことはどんなにか怖いことだったでしょう。

それを相談できる家族も恋人も、拓人にはいなかったのです。唯一大学時代の友人まもちゃんだけが拓人の心に寄り添ってくれました。

自分自身を支えるだけで懸命だった拓人と、
医学部に入ったものの勉強だけをして来て、それ以外を全てお母さんに依存していた弟の陸人が、人の気持ちが理解できずに大学で孤立してしまい、引きこもり状態になってしまいます。

そんな陸人をなんとかしてしてやって欲しいと
責めるお母さんに、やっと拓人は「こんなカラダになってごめんね」と自分の病気を伝えることが出来たのです。

拓人に別れの理由もはっきりと知らされないまま
別れた恵は拓人の先輩(シゲ先輩)に交際を申し込まれて拓人への想いを振り切るために思い出の海辺にやって来ました。
ふたりで埋めたガラス瓶のメッセージを掘り出すために。
一生懸命砂浜を探す恵はどうしても瓶を探しきれません。思わず拓人に電話をかけてしまいます。
ひさしぶりに声を聞いても当たり障りない会話しかできないふたり。

実は拓人も同じ時に海辺にいて
恵より先にガラス瓶を掘り出していたのでした。
海の家で見つからないように隠れて会話する拓人。
拓人にとってそのガラス瓶は恵の代わりになってくれるほどの大事なものになっていたのです。

この時のロケハンの様子を見たことがあります。
冬の寒い海でガラス瓶を探す恵。
カメラには入らないように冷たい風が直接多部未華子ちゃんにふきつけないようにスタッフが
風除けで覆っています。
その幕をスタッフと一緒に持つ春馬くん。
いつでも春馬くんの優しさも気遣いも変わらないんだと思いました。

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少しずつ病が進行して、自分の足で歩くことが難しくなっている拓人は車椅子生活を送っています。けれどいつでも自分の出来ることへの目標を持ち続けている彼は友人まもちゃん(守•風間俊介さん)が見つけてくれた、車椅子サッカークラブに入ることにします。
拓人はあっという間に溶け込んで
楽しく車椅子サッカーを楽しんでいます。

そこに今では介護士になり、ALS患者の
訪問介護士をしていた恵が偶然に
ネットで知り合いになり、情報交換していた
拓人の友人のALS患者さんの付き添いで
車椅子サッカーをしている体育館にやって来ます。
恵は、そこで初めて拓人もALS患者であったこと。
どうして拓人が自分と別れたのか、やっと理解できたのでした。
そして拓人に告げるのです。「会っちゃったね」と。
会うべき人とは、必ず会える。
あの海での言葉が蘇り、そして恵は自分が
介護士になって拓人を守る存在になるべくして
この仕事についたのだと理解したのでした。

※※※※
車椅子サッカーを体験した春馬くんは、その時に
実際に車椅子でサッカーをしている障がい者の方と触れ合ってその車椅子に頼まれてサインを残したそうです。今でもそのサインは大事にされていると聞いたことがあります。
恵との再会のきっかけになった
ALS患者役の河原さんは、天外者でも共演されていたように思います。

長くなりましたので後編に続きます。
続きも読んでいただければ
とても嬉しいです。

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ろーず
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