
伝説巨神イデオンとの再会・その3
昨年暮れ、都内をブラついて荷物を重くして帰った一日がありました。
先週記しましたように、テレビ版、劇場版とイデオンのBlu-rayをゲットしてその次は、「資料だ!」とオタクの物欲が火を噴いたのであります。中野→渋谷というルートで巡回しました。どこに行ったのかはこの地名で推測してください。
約14年振りの、おかえり

まず中野で手に入れたのが、ラポート社発行の「イデオン大事典」です。昭和57年3月1日が発行日になっているので、映画公開の4ヶ月前に出た本ということになります。テレビ版を振り返りながら、劇場版はこんな内容だよ、みたいに紹介されている書籍であります。昔はブックオフで100円でゲットした記憶のある本ですが、今回は12倍のお値段でした(汗)。
ここで「…ん?」と思った方もいるかもしれません。
「公開前の映画の内容、書いちゃってるの?」と。
そうなんです、実は発動篇のあらすじやシーンも、結構ズケズケ書いてしまっているんですね。「映画・発動篇のポイントはここだ!」などというタイトルのコラムで、キャラがそれぞれこうやって死んでいきますよ~とまで書いている、とんでもない本です。
ここに、イデオンという作品の特異性が表れている気がします。
そもそも、テレビ版の放送時からオチが判っている番組、だったんですね。放送中、1クールが終わった時点での雑誌「アニメック」誌上において富野監督インタビューで、行き着く先はこんな話ですと全てが語られてしまい編集部は先の展開に興味を失くしていました、とぶっちゃけられています。直接的、間接的な表現が混ざってはいますが読めば大体、想像出来てしまうインタビューなんですね。これを掲載したことが失敗だった、という反省と共にあえてそのインタビュー記事を再掲載しているのがこのイデオン大事典です。つまり当時、結構な数の視聴者が思いっきりネタバレを喰らっていたことになります。要はそれを、どう見せてくるのか…というのが視聴動機だった、ともいえるのではないでしょうか。
これは「やらかし」の話?かと思いますが、思えば映像ソフトが一般的でなかった時代はテレビ、映画は一度観たら終わり、の代物であり、内容が判っていても鑑賞の意義が今よりは高かったと想像できます。実際「七人の侍」などパンフレットにあらすじが最後まで載っていたりしますし、当然「ネタバレ注意」なんて注意書きもありません。富野監督も、
「名作はあらすじを知っていてこそ楽しめる」
と、どこかで発言していた気がします。
今とは時代が違う&作品自体が異質だった、の併せ技によって、公開前に盛大なネタバレをされているのがイデオンの劇場版だったんですね。それでも当時、観た人は圧倒されたといいますから、それを作品の品格と表しても良いでしょう。
続けて、渋谷で手に入れましたのが、こちら。

アニメディア別冊「伝説巨神イデオン 接触篇発動篇 全特集」です。
湖川氏描きおろしの表紙がとても素敵です。何度も言ってますが、キッチン大好きなんです、キッチン。
こちらは8月発行となっていますので、映画公開とほぼ同時に出た感じの本でしょうか。で、劇場版中心の内容だと題名に謡っている通り、
ほぼ、全部見せ。
の、内容です。フォトストーリーと称して発動篇の最後までシーン込みで載せています。こちらもまた、未見の人にとっては盛大なネタバレと言っていいでしょう。逆に、鑑賞済みの人にはいい感じに記憶を補完する理想的な資料、ともいえるかもしれません。やはり映画館以外で観る手段の乏しかった時代、こういった本の需要は今より遥かに高かったのであろうと推測できます。
そして極めつけ、渋谷で手に入れましたのが…


まさにイデオンの百科事典、「伝説巨神イデオン 記録全集」全5巻です。
先の大事典の裏表紙に広告が載っていますが、当時通販でのみ買えたマニアの必携書です。4巻までがテレビ版、5巻が劇場版になっていますがより詳しく、またキャスト、スタッフのコラムや資料もふんだんに載っている決定版ですね。これを荷物に入れて家まで帰るのが大変だった。
これらの書籍全て、以前持っていたことがあるもので「買い戻し」になるのですが、まぁ…気持ち半分くらい勿体ないことしたなぁと昔の自分に対して恨み節を吐きながらの、昨年最後のオタク買い物でした。熱がぶり返すとは、こういう事を言うんですね。
エヴァンゲリオンに関するものを処分した時も感じましたが、
「その時の自分には欲しかった、必要だった」と考えるようにしています。
今回のケースは逆ですが深く考えないようにして、心の充足を図っていきます。
アニメが好き、なことは誇っていい
今回二度目の購入となったこれらの書籍を読み返していますと、ほとんどの文章に見覚え、読み覚えがありました。当然ですけども。
そして1982年の世相というか、この頃の世の中の「アニメ」に対する目の厳しさというのも雰囲気で伝わってくるものがあるんですね。
こちら、Youtubeに有志の方がアップしてくれている当時の特番です。急ごしらえ感がありなんともシュールなものですが、これを観てもどことなく、この頃のアニメ、アニメファンというのは「低俗なもの、奇異な人達」と思われていたフシがあるのでは…と私は感じてしまいました。
だからこそ、作品として負けてなるものかという反骨精神を持った富野監督のようなクリエイターがイデオンを生み出した、ともいえる訳ですが。
アニメの文化としての地位が上がり、特に音楽面ではアニメソングがヒットの条件、にまでなっている現代は、基本的にはアニメファンにとって居心地の良い空気があるのではないかと思います。40年前と比較して、の話です。
今や海を飛び越えて世界中で人気があったりする日本のアニメです。
それも一面に過ぎませんが、やはり私は日本に生まれ育ったことを喜ばしいと思っていますし、日本でオタクやってます、を胸を張って言いたい人間なんですね。
あと、個人的にタイムリーでビックリしたのですが、1月3日に劇場版が配信されるようですね。
正月になんてものを見せるんだ、と思わなくもないですが(笑)。
また「イデオン集め」を始めてしまった中で、現代の「良い所」も見えてきた…という、お話でした。