「映画プリキュアオールスターズF」感想…プリキュアって何?の答え
つい先ほどこんな記事も出ましたが、映画プリキュアオールスターズF、公開から一週間でまだまだ好調な客足だそうで喜ばしいですね。
特に、個人的にもこれまで観たプリキュア映画の中で出色の出来栄えだったと思うので、改めて感想を書き連ねます。
実は今年の「あの映画」と同タイプ
初見の感想はこちらです、で、本日3回目の鑑賞をしてきて、特に大きく印象が変わったわけではないですが、ある気付きがありました。
今回の映画、まず謎の世界から始まり、そこで他作品のキャラ達と出逢い親交を深め、世界の謎が判明してからは総力戦、という流れの物語になっていますが、おわかりでしょうか、
物語の構造が、グリッドマンユニバースと同じ
なんですね。作品をクロスオーバーさせる劇場用映画の最適解の一つ、だと思っていた作品の手法が、ここでも使われていました。偶然だとは思いますが、これもファンサービスを意識した結果なのだろうと思うと納得がいきますね。
世界そのものを変えてしまうような、手の届かない存在。そんな敵に対し主人公たちが持てる力の全てで挑み、勝利する。映画館を出て来た時に、テレビでは観られない満足感を得られるのは間違いない作品です。放送中の作品のどこかに挟まる外伝的な物語、の枠を越えていることが今作の高評価に繋がっているのだと思います。5年前、オールスターズメモリーズでもその「特別感」はありましたが、今回はさらに作品を持ってここまでのキャラクター達が同じ地球の上で生きていることを表現しています。ご覧になった方なら「オールスター」の意義を感じられたことでしょう。
その点でも、次元を超えて作品の垣根がなくなるスペシャル感という意味で、グリッドマンユニバースと同質の、秀逸な作品だと思います。
節々に感じられる、渋い仕掛け
ネタバレになりますが、今回、映画の前日談としてプリキュアは敗北し、地球そのものが消し去られるというとんでもない事実が隠れておりそれが後半になって明らかになります。序盤のロードムービー的な場面からそれを仄めかすような描写が散見され、「実はここは地球だった」と、SF映画のような設定なんですね。ソラちゃんがまなつちゃん、ゆいちゃんと手を繋ぐと微かに記憶が戻ったり、アスミが世界の違和感に気付いていたりと、見せ方一つで結構、ホラーな要素にもなりうる描写があります。そういう意味では他のプリキュア映画と一線を画するヘヴィな世界観になっていて色合いが噛み合わない可能性すらありますが、そこはやはりプリキュアです。ショッキングな事実が判明しても、「元に戻せばいい」と前向きに立ち向かいます。
基本的に女児向けアニメで、ホンワカしているのがプリキュアの世界観です。もし彼女たちが極端にハードな作品の世界に行ったら…泣き崩れて何も出来ないのではないか。などと穿った想像を抱く人もいたと思いますが、この映画でその答えは出ました。
例え世界が滅んでも、彼女たちは未来を諦めない。
という事ですね。
個人的に、プリキュアはセーラームーンの遺伝子を継いでいると思っていますのでそれは解っていましたが、先のCosmosにも負けない残酷な状況で、それでも前を向くプリキュアの強さが、この映画にはありました。
「信じていてね」というメッセージ
今作、全てはプリム…シュプリームの掌の上での出来事だった、という物語な訳ですが、何故全員消し去ったはずのプリキュアが16人だけ残っていたのか。それについてはプリムも驚いた、と言っており明確な理由は語られていません。さらにシュプリームとの再戦で、またもスカイとプリズムだけが残ってしまい絶望する場面があります。ここで二人は、
「何故自分達だけが残っているのか、訳がわからない」
「でもそれに、きっと意味がある」
と考え、自らを奮い立たせます。
これが今作の一番重要なメッセージではないかと捉えました。
思えばここ数年、世の中には悪いニュースが溢れています。
この世には理不尽な事が溢れ、大切なものが壊されたり失くしてしまうことが多々ある。しかし思い出の中に残っていればそれは消えない、取り戻す方法だってある。「残っている意味」を忘れないで欲しい。
5年前の映画では、「プリキュアを応援してくれてありがとう、みんなの気持ちが、プリキュアの力になっているんだよ」と伝えてきているように感じました。今作は、「思い出を抱いて、プリキュアと一緒に生きていこう」という、ベクトルは同じながらより強いメッセージを感じました。
「プリキュアが好き」という自分をずっと信じていてね、そばにいるから。
主題歌「うれしくて」は、まさにそれを歌っていると思いましたし、歌詞にある
「傷さえも愛して そして笑おう」
このフレーズの奥底に、計り知れない「強さ」を感じます。
それが、プリキュアなんだな、とも。
決戦の熱気は、完全に少年漫画
シュプリームとの決戦は、文字通りオールスターでの総力戦になる訳ですが、もう「可愛い女の子」の色は消えて、全員が勇ましく「格好良く」見えます。
親子連れで来ていた男の子が終了後、「もう一回観たい」と言っていたのを聞きました。ズバリ、その熱さに燃えたのだと思います。ここも春のグリユニに通ずるものがありますね。
もう、この最後の戦いだけでも白眉の出来でした。
「プリキュアかぁ」と思う方にこそ観て欲しいと思える作品でしたね。原作が少年ジャンプだったとしても違和感はないものです(笑)。
しかしそんなバトルを経て、結末は実にプリキュアらしいもので、
「何も失われていない」
んですね。それどころか、新しい関係性、物語が始まる…そんなエンディングでした。いつもと違う映画を作ろうとして「らしさ」から外れてしまう作品もありますが、今作はそんな事はありませんでした。
思い切った大胆さと、いつも通りが共存している凄い映画。
ここまでのものを作り上げた東映スタッフの手腕と、その根幹にあるシリーズへの愛に拍手を贈りたいと思います。
惜しむらくは、プリキュア達の絡みをもっと観たかった、もっともっと観たかった。70分じゃ足りない!と思ったことです。逆説的に良い所でもありますが。