『現代ウクライナ短編集』を読んで
ウクライナのことをあまり知らないな、と思い、『現代ウクライナ短編集』を手に取った。
(↑群像社のHPでは分野がロシア文学になっているのはいいのだろうか?)
ロシア文学は読んだことがあるけれど、ウクライナ文学は読んだことがない人は結構たくさんいるんじゃなかろうか。想像していたよりも読みやすかった。
私が中でも気に入ったのは、『新しいストッキング』、『しぼりたての牛乳』、『友の葬送』。
『新しいストッキング』の書き出しがすごいので読んでほしい。
もうこんな風に始まったら、読まずにはいられない。最初はこの夫腹立つなと思いながら読んだけれど、最後はとても痛快でコミカルだった。医者、グッジョブ!
『しぼりたての牛乳』は、お母さんが浮気してできた子供の目線から書かれたお話。自分のことを私生児だなんて思わない女の子の健気さ。なんで周りの大人たちはこんなに嫌な奴なんだろうか。これは読んでいて最後の最後までこの子が不憫でならなかった。でも、この女の子は本当にピュアで、疑うことなんて知らないうちは幸せでいられるのかもしれない。
『友の葬送』は、わずか7行(!)だけの物語。でもそれで十分すぎるほど。
当たり前にいた人がある日死んでしまう。その人がいるのがあまりにも当たり前すぎたから、死んだことさえ忘れてしまう。けれど、もうその人はいないことに気づく。
これが一番のお気に入り。私も死んだとき友達にこういう風に思われていたい。
全体的に、結構人間の嫌なところとかも書かれていて、正直、ハッピーエンドの物語が無いように思えたけれど、日常に生じる出来事の数々(それらは倫理にもとるものもある)がリアルに感じられた。
人々の日常から織りなされる人生というドラマを垣間見ている気分になれる。