第39回文学フリマ東京で売る本 製作日誌13
ようやく、明日、文フリ当日を迎える。12/1はオンラインゲームFortniteのワンタイムイベントが早朝にあり、息子はそれをずっと楽しみにしている。
ワンタイムイベントとは、その時間に世界で同時にゲーム内で行われるイベントで、見逃すと二度と見ることができず、また、ゲームに入るために待機列などが発生し、イベントギリギリにログインすると見れないこともある。
コロナ禍の時に、ラッパーのトラヴィス・スコットのライブがゲーム内イベントであり、ゲーム内なのに、リアルで起こっているような新しい感覚を感じ、衝撃を受けた。
文学フリマもオンラインでやったらどうだろうか、購入すると、電子ならその場で読め、紙版は後日届くというようなものをしたら、いいのではないか、接客の会話はボイスチャットでする、みたいな。それでは一期一会感は薄まってしまうのか、メタバースで本を買うという新しい体験にはなるかもしれないが。
バーチャルでは、物質的な本の味わいはわからないし、紙の質感、ページのめくり感なども、実際に本を開かないとわからないだろう。それに、文学とはアナログでリアルで、非効率性を伴いながら発展してきたのだから。
お金のある企業や経営者は、文学に対するパトロン的な支援をこれまで以上に、積極的にしてみても良いのではないか。社会的にも文学を支援することが美徳であるような土壌ができると良いのかもしれない。文学を支援することが、税金対策に活用できというような実利の伴うスキームがあればすぐに広がるだろう。
紙の本は贅沢な存在だと思う。絶滅してしまうのも時間の問題なのかもしれない。
私は息子を起こすために午前3時に起きなければならない。友達と一緒に見る約束をしているから必ず起こして欲しい、と頼まれているので、文学フリマ前に、このミッションを完遂しなければならない。ですので、もう寝ます。
そして、3時のアラームがなり、息子は自らすぐに起きて居間のゲーム機に電源を入れて、ゲームにログインをしている。私は少し遅れて起き、砂糖を少し入れたホットミルクを作り、息子と一緒に飲んでワンタイムイベントを待っている。
今回はエミネムやスヌープドックなどラッパーとのコラボのシーズンだったので、イベントもライブのような趣旨となるものだという予想が立っている。息子はゲーム内でも流れるエミネムの『ラップゴッド』という高速ラップを習得したいと、「アーサマラマドゥマラマ」などと呪文のようなラップを口ずさんでいる。
息子と初めてワンタイムイベントを見たのは、2020年の4月だった、四年前だった。当日、アメリカはロックダウン、緊急事態宣言下での日本ではおうち時間というものが推奨されて、人類は未だかつてなかったような、今となっては奇妙な時間を過ごしていた頃だ。
ワンタイムイベント目当てで、試しに入れて見たFortniteというゲームに息子以上に私がハマっていた。今では息子はFortniteを友達との遊び場として使っている。私なんかよりも上手い。四年という歳月は、あっという間というようにも感じるが、それなりに色々あったというような記憶もあり、時間の流れの奇妙な性質を感じている。
あと、数時間後には私は、ビックサイトにいて文学フリマに参加しているのだろう。翌日は月曜日だから、終わったあと、遅くまで飲めないことに若干嫌な気持ちを既に持っている。年末進行で仕事が溜まっている。
そんな風に、前倒しで、先のことを予測し、終わりを待つように、生きるということに慣れてしまうことこそ、年をとるということなのか。ただその場、その場で起こる目の前の出来事を新鮮に感じながら、生きることが難しくなってしまった。
今日の文学フリマは、何か面白い予期せぬことが起こらないかと、終わりを待つのではない、新鮮な気持ちで、時間の流れを楽しみたいと心底思った。
4時になり、フォートナイトのワンタイムイベントが始まったので、このあたりでこの日誌は完結とする。
締め切りや期限があることはいいことだとも思う。文学フリマとは、本作りにおける一つの大きな締め切りなのだろう。
OK / こもだつゆ
B6・72ページ
1,000円
12/1 文フリ東京39N33-34 ブース名:ロケット商会の営業会議
Uの列の付近です。ぜひお立ち寄り下さい。
https://c.bunfree.net/p/tokyo39/43494