Sandal Ebio(サンダル•エビオ)

短編など雑文を書く、出版社勤務。 文フリ東京39で売る本を編集中。

Sandal Ebio(サンダル•エビオ)

短編など雑文を書く、出版社勤務。 文フリ東京39で売る本を編集中。

マガジン

  • オリポピア観光協会 製作日誌

    文学フリマ東京39で、売る本の制作日誌です。家庭内を出版編集部にし、日々のことや本にまつわることを織り交ぜながら綴る。

最近の記事

第39回文学フリマ東京で売る本 製作日誌12

 文フリの本が届き、完成の余韻に浸り終え、最近私はポケポケを息子とやっている。ポケポケは20枚のポケモンカードで手軽に対戦できるポケモンカードのアプリで、パックの開封感がリアルだし、開けたカードは自動で整理してくれ、手に入れたカードのファイリングもアプリでできるので、紙のカードよりもこっちのほうがいいんじゃないかとさえ思えてくる。  そこで思うのだが、電子書籍が新しい技術としてやってきた頃のことだ。ソニーや楽天のコボ、バーンズノーブル書店の端末など沢山の電子書籍リーダーが作

    • 第39回文学フリマ東京で売る本 製作日誌11

       2009年の8月末から9月半ばまで、当時はまだ籍を入れておらず同棲していた妻と二人で、インド旅行へ行った。  妻は小さな映像制作会社で、過酷な働き方をし、疲れ切っていた。会社に長めの休みを貰ったため、私たちはこの旅行を計画した。  私は、地方公務員となり終わらない悪夢のような毎日を過ごしたのち、一年で辞め、町の本屋で働いていた。地下のある2フロアの店舗で、チェーン展開はしていないが、外商にも力がある地域に根差した普通の本屋だった。その書店は今でも残っており、文化の発信地とい

      • 第39回文学フリマ東京で売る本 製作日誌10

        ブース N33-34 ロケット商会の営業会議 『OK』 著:こもだつゆ 発行:オリポピア観光協会 B6 72ページ  私小説 限定100部 編集とブックデザインなどをやりました。 冒頭の試し読みページです。

        • 第39回文学フリマ東京で売る本 製作日誌9

          ブースはN33-34 になりました。 表紙のデザインなどが固まり、 DTPをしている。 この3連休中になんとかしたい。  ちょっと前からたまに歯が痛く、歯医者が嫌いなので、ほっておいていたら、痛みが増えてきて、流石に行かなければと思っていたら、妻が予約してくれた。  ものすごくいい歯医者が近所にあり、あんまり長く通わないスタイルで、麻酔は最新のもので表面麻酔をした上で、ホチキスのような水鉄砲みたいな感じで全然で痛くなく、本当に良い歯医者さんで、もう10年以上通っている。歯医

        マガジン

        • オリポピア観光協会 製作日誌
          12本

        記事

          第39回文学フリマ東京で売る本 製作日誌8

           前回の日誌から日にちが空いてしまったが、本の制作作業は進めている。妻とは数回の小競り合いが起こった。  妻は本をどうしても100部作りたがった。私は「そんなに作っても売れないって、せいぜい50冊くらいだろう」と言う。妻は、「いや、100部作った方がいい」と言う。私は反対した。妻は「100部作らないならこの本は作らなくていい」と言う。「100部作り、それを全て文フリに持ってゆく、そして、全部売れるまでは家に帰らない」と私は言った。  私は、本作りのため、インデザインのサブス

          第39回文学フリマ東京で売る本 製作日誌8

          第39回文学フリマ東京で売る本 製作日誌7

          「ナイス!」「これ使って、そっち先お願い!」チャットをしながら息子は友達とシューティング系のオンラインゲームをしている。  同じ学校の同級生、習い事の友達、それからその友達など、顔を知らず、直接会ったことがない友達もいる。地域を跨ぎ、学年も超えて、彼らは数珠繋ぎにゲームの中で出会った。それが今の小学生の遊び方だ。  eスポーツという呼び名もすっかり浸透した昨今、コロナ禍も経て彼らのリアリティーは現実世界とは別のもう一つの世界がありそこで強く結ばれている。会話とゲーム内の行動だ

          第39回文学フリマ東京で売る本 製作日誌7

          第39回文学フリマ東京で売る本 製作日誌6

           「もうこれ以上はない」と妻は毎回言い、私は、「じゃあもう完成だね、最後に印刷して見るから、完成のつもりで見るから」と言って、印刷をした原稿に、最後の指摘を入れる。すると妻は、私の最後の指摘を見て、いかに私が話を理解していないか、と不満を言う。データ自体にさらに大きな修正を入れてしまう。 「ようやくわかった、さらに良くなった、もうこれで完成だから」と妻は私に言う。私はそれを出力して、最後のチェックを入れる。その指摘を見て妻は、「直したほうがいいと思った指摘もあったけど、このま

          第39回文学フリマ東京で売る本 製作日誌6

          第39回文学フリマ東京で売る本 製作日誌5

           インスタグラムで写真の投稿とともに、添えてある文章に衝撃を受けている。一息で駆け足で一文を綴り、感性だけで推敲もせず、写真投稿のついでに書いたような自己完結型の文章表現だ。女性の投稿者に多く、詩的とも言えない内容だから、その人の頭の中を見てしまったような感じがする。これはもうテレパシーの一種で、チャンネルや周波数が一致し、共感できる人にしか理解できないような文体であり、異質で、不気味だった。  複数人がそういうものを書いているので、これはもう、人類の言語感覚は進化したのかも

          第39回文学フリマ東京で売る本 製作日誌5

          第39回文学フリマ東京で売る本 製作日誌4

           仕事から帰ると、妻の原稿を読み指摘を入れる、翌日、妻は日中に時間を作り、私のコメントを踏まえて、原稿を加筆修正する。そして、仕事から帰ると私はそれを読み指摘を入れる。それを繰り返している。  書いたものを良い原稿にするためのたった一つのやり方がある。書き手以外の人の目が入り、書き直しを何度も繰り返すことだ。作家にとって1番楽しい時間は、初稿を書き終えた僅かな時間だけであり、残りはこの地獄のような修正の時間が待っている。削ったり足したり、元に戻したり、繰り返えすうちに、たま

          第39回文学フリマ東京で売る本 製作日誌4

          第39回文学フリマ東京で売る本 製作日誌3

           私の好きな作家の一人に車谷長吉という作家がいる。『贋世捨人』という作品が私のフェイバリットだ。叔母がシャンソン歌手をしており、学生時代に会場受付の手伝いのバイトをしたことがあるのだが、叔母のファンというある全国紙の新聞記者と話をする機会があった。文学を志していることを伝えたら、車谷長吉のことを教わった。その記者はその作家を「日本最後の私小説家」と紹介した。読んで感想文を送ってよ、と言われた。私はその翌日、早速『贋世捨人』を買って読み始めた。その内容に衝撃を受け、感想文など安

          第39回文学フリマ東京で売る本 製作日誌3

          第39回文学フリマ東京で売る本 製作日誌2

          「クリーミー・クロワッサン」と息子は言う。カードゲームのタイトルだそうだ。  自分の考えたオリジナルキャラクターのカードゲームを作りたいと言う。  確かに、息子とは、以前、オリジナルカードゲームを作ろうという話で盛り上がったことがあるのだが、そのままになっており、気まぐれに息子が何枚かキャラクターイラストの絵を描いただけで、そのまま忘れていた。 私が妻と本作りの話をしていると、息子は、「クリーミー・クロワッサン」の企画のことを思い出し、自分はカードゲームを作りたいと言う。

          第39回文学フリマ東京で売る本 製作日誌2

          第39回文学フリマ東京で売る本 製作日誌1

           私は第39回文学フリマ(2024,12/1,東京)で売るための本を作ろうと思っている。  昨年の2023年11月、東京流通センターで開催された文学フリマにて、大学時代からの友人たちと出展をした。各々が一人一冊本を作り、それを売った。  私たちは、学生時代から呼吸をするように本作りをしてきた。質はどうあれ、好きなことを書き、好きなように本を作ってきた。 「あんたたちのやってることは、クリエイティブライティングだから、少しテクニカルライティングを学んだ方がいい」と恩師からは

          第39回文学フリマ東京で売る本 製作日誌1

          短編小説 "ko ix tuwa oredha!" (5/26読書フェス ピラフ購入者特典、月刊イヌ時代文学大賞受賞作品の続き)

          "ko ix tuwa oredha!" サンダル•エビオ 「キットカット」や「ばかうけ(青のりしょうゆ味)」などが最適だろう、個包装だから。異星人の口に合うだろうか、口があればの話だけれど。 富士宮市の「おかしのまちおか」で配り菓子を吟味するカナコ。地球から参加するのだからこれも欠かせない、最後にカゴに入れたのは地球グミの袋(5個入り)。 オリポピアンジャズジャンボリーのフードブースでピラフ屋の出店をすることになったバー•オールドバス。店のドアには、ザントル・ヴェリシュ

          短編小説 "ko ix tuwa oredha!" (5/26読書フェス ピラフ購入者特典、月刊イヌ時代文学大賞受賞作品の続き)

          タピオカタブラ

          タブラ(ウルドゥー語: تبلہ‎, ヒンディー語:तबला, tabla)は北インドの太鼓の一種である。正確にはタブラ(高音用:tabla)とバヤ(低音用:baya)という2種類の太鼓であり、組み合わせてタブラ・バヤ(タブラーバーヤン)とも呼ばれる。指を駆使し複雑で多彩な表現が可能である。 胴は、高音のタブラは木で、低音のバヤは銅や真鍮などの金属でできている。胴の底は閉じており、壷や器のような構造になっている。皮はヤギ革であり、高音のタブラは中央に、低音のバヤは中央よりや

          カレー戦争

          隠し味にコンソメが使われていることを知ったクマール・ティジットは知らず知らずのうちに信仰の禁忌を破っていたことを知り絶望した。東京のカレー屋で働き始めて三ヶ月、こちらでの暮らしもようやく慣れてきたところだった。ありえないくらい高い物価も受け入れられるようになってきた、だが、仕方なく路線バスに乗る時だけは、どうしても落ち着かなかった、その運賃でクマールの故郷ではターリーランチが腹一杯食べれるからだ。 クマール・ディジットは、六畳一間のアパートで五人暮らし、クマール以外の同居人