架神恭介/至道流星「リアル人生ゲーム完全攻略本」感想
〇要約
●「解説書」編
1目的=快楽享受量≒幸福点の最大化
2ルール=制約条件としての自然法則等の初期条件
3資源=寿命→お金→財/サービス→経験→幸福点への変換
4戦略=タイプ(性格)による「経験→幸福点」獲得効率の違い
5戦術=ジョブ(職業)による「寿命→お金」の変換効率の違い
●「攻略本」編
1 社会=プレイヤー間相互作用による新たな制約条件
→信用創造=金融技術による複雑性・リスク増大
2 個人イベント=結婚、事故、老化等の変化
3 ビッグイベント=自然災害や人災等による制約条件の大変化
〇疑問点
・ゲーム目的の「幸福点最大化」という「功利主義」の前提は正しいのか?
・ジョブの前提となるスキル構成やスキル取得を可能にする初期条件や初期経験点等についての考察が不足していないか?
・攻略方針が「効率的なソロプレイ」に偏っていて、パーティー戦やギルド戦等の検討が乏しく、「マルチプレイならではの要素」について正しく評価できていないのでは?
・ビッグイベントの選択と評価が趣味に著者達の趣味に走り過ぎていないか?
〇感想
「人生ドラクエ化マニュアル」と似たタイトルながら、方向性は真逆で、人生を「MMORPG」に見立てて、攻略法として人生論を説く書物。
そのため、主体的に「人生をゲーム化して楽しむ」のではなく、「1プレイヤーとして効率的なプレイスタイルの追求」という受動的な内容になっているという印象です。
前半の「説明書」編は、基本的な人生観・人間観の解説で、「功利主義」を暗黙の前提として「幸福点の最大化」という目的、プレイスタイル追求の前提となるジョブやタイプ等を解説しています。
寿命を基本資源として、
寿命→お金→財/サービス→経験→幸福点
という基本原理の説明は非常に分かりやすいです。
しかし、
・寿命以外の資源(才能=初期スキル点の不公平)
・初期条件の違い(社会階層=ステイタスによる初期装備・スキル・所持金の不公平)
等の影響についての検討が足りていないように感じます。
また、「効率的なソロプレイ」に偏重していることから、
・パーティーの形成・運営
・ギルドの形成・運営
等の「マルチプレイの要素」についてほとんど触れられていません。
個人的には、「MMORPG」を参照枠とするなら、パーティ戦やギルド戦、陣営に分かれた大規模戦闘等についても評価や考察した方がより面白くなったのにと残念な気持ちになりました。