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エスカレーター立ち止まり対策AIから考える未来の幸せな可能性

おはようございます。自分の好奇心にドライブされて知らないことを調べるのが大好きなだっくです。

タイトルに「ん?!」と思ったあなた、僕と同じアンテナがありますね!しばしお付き合いくださいませ。

さて、結論からまずお伝えしましょう。名古屋のエスカレーター右側歩行禁止はやっぱり条例だけだと周知が行き届かないし、その場の喚起だけだと権威性が無いのでいずれも足りない。両輪があってこそ成功の兆しが見えてきた。結構何か一方だけで上手く行かないという施策も多くて勿体ないから見習うべきところが多そう。では、そのことについてお伝えしますね。

名古屋市が2023年10月に施行した「エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」は、日本の都市文化に新たな風が吹く可能性を見せています。この条例は、エスカレーターでの立ち止まりを義務付け、長年の習慣であった「右側空け」の慣行を見直す画期的な取り組みです。

これが先日の調査で驚異の90%の履行実績をたたき出したというにわかに信じがたい結果を出したそうなので、その背景についてお話しします。

今日も今日とてイメージ図をAI様に描いていただいたのですが過激すぎてウケてます。なんだこれ。

名古屋の「エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」とは

エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」とは令和5年10月1日施行されたエスカレーターの安全な利用の促進を図り、もって市民が安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与することを目的として制定された愛知県名古屋市の条例です。

★エスカレーターの利用者は、右側か左側かを問わず、エスカレーターの踏段上に立ち止まって利用しなければなりません(義務)(第8条)
★エスカレーターの管理者等は、利用者に対して、立ち止まった状態でエスカレーターを利用するよう周知しなければなりません(義務)(第9条)

名古屋 エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例

実はこの趣旨の法律は別に名古屋市だけの十八番(おはこ)ではなくて、埼玉県エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例などは、令和3年3月30日の施行のため、名古屋市の方が後発です。

実際上記の名古屋市の公式ページを見てみれば分かりますが、失礼ながらパッとしません。

ライドライトナゴヤ

啓発ポスターやキャッチフレーズの募集、消費者庁の情報や外国人向けのページ、右側歩行問題関係情報へのリンク、言ってはなんですが素人が作ってももう少し刺さるものを作れるレベルで、この内容が90%というちょっとびっくりな結果に奏功するようには全く思えません。

条例の効果と市民の反応

名古屋市の調査によると、条例施行後、エスカレーターで立ち止まる人の割合が90%を超えたという結果が出ています。しかし、この数字に疑問を呈する市民の声も聞かれます。

実際の観察では、左側に立ち止まる人が多く、右側を歩いて追い越す人も少なからず見られるのが現状です。

市民の中には「だいぶ良くなっている」という声がある一方で、「歩いている人は結構いると思います。9割ではない気がしますね」という意見もあり、条例の浸透度合いについては見解が分かれています。

んー、なんか眉唾なのでしょうかねえ。

調査はどんな感じで実行されたの?

名古屋市のエスカレーターで「立ち止まる人が9割」という実績は、市が条例施行後に行った複数の調査結果に基づいています。

一回こっきりじゃないところは結構マジな感じなので、先程腐してごめんね。単に広報が下手なだけなのかも(あまり謝っていない)

  • 調査の実施場所と方法: 名古屋市は、市内の交通機関や商業施設でエスカレーター利用に関する実態把握調査を定期的に実施しており、利用者の行動を観察してデータを収集しました。

  • 具体的なデータ:

    • 条例施行前(2023年6~7月)の調査では「立ち止まって利用している人」の割合は84.4%でしたが、施行後(2023年11~12月)には92.7%、さらに2024年6~7月には93.3%に上昇しました。

    • 特に右側に立つ人の割合は、2年前の7.6%から23.9%へと3倍以上増加しています

  • 条例と啓発活動: 名古屋市は2023年10月に「エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」を施行し、立ち止まることを義務付けました(罰則なし)。また、「なごやか立ち止まり隊」などの啓発活動やキャンペーンを通じて、利用者への周知を図りました。

でまあ、こうやって見ていくと90%の数字のカラクリもわかってきます。

元々立ち止まっていた人が84.4%ってすごく多いですよね。これって、どこにとは書いていない。つまり、左側に立ち止まっていた人というのが沢山いたことを指していて、エスカレーターで歩く人が差分である15.6%だということを意味していそうです。

この人生を生き急いでいるようなマイノリティが「歩いた方が効率が上がる」「とにかく自分は歩く、邪魔すんな」「歩かないのは頭が悪い」などと暴言を吐いたりしているのでしょう。言っていることが正当性があるかどうかは措くとしても実際に歩いている人というのは意外と元々少ないとうことの根拠として使えそうな数字です。

実際この条例での効果として認めるべきは立ち止まっている人の割合の増加ではなく2年前の7.6%から23.9%へと3倍以上増加していることでしょう。これちっちゃいように見える数字ですが、たった一年で3倍増です。ここはもっとアピールした方が良いです。

90%と書く方がインパクトあるのは分かるのですが、そういった印象に頼り切るのがメディアの不信に直結するのでまじめに考えた方が良いです。

これは裏を返せば、右側を歩く人のが92.4%から76.1%になったいうことです。言っては何ですが、天上天下唯我独尊で右側歩行こそ正義という狂信者達を改宗したことは評価されるべきと思います。

AIによる革新:エスカレーター見守り君

この状況を改善するための画期的な取り組みが、「エスカレーター見守り君」と呼ばれるAIシステムです。

このシステムは、名古屋市が提示する行政課題、社会課題に対して、先進技術を活用した解決策を持つ企業を募集する「Hatch Technology Nagoya」に参加する形で名古屋市に本社を置く有限会社来栖川電算が開発しました。

システムの特徴

エスカレーター見守り君は以下の機能を備えています。

  1. 3D LiDARとカメラを用いてエスカレーター周辺を撮影

  2. AIを使用して人と物の流れを3次元で分析

  3. 特定の利用行動(踏台上での移動、混雑時の追越経路確保など)を検出

  4. 検出された行動に対して、アナウンスなどで行動変容を促す

3D LiDARセンサーというのは、Light Detection And Ranging(光による検知と測距)の略称で、レーザー光を使用して物体や環境の距離、位置、形状を高精度に計測する技術を支えるセンシングの素子を指します。

レーザー光を物体に照射してその反射光が戻ってくる時間を計測することで物体までの距離を数ミリから数センチ程度の精度で算出します。この操作を高速で繰り返すことで、詳細な3Dマップを構築できます。

で、量り取った数字を元にAiで人や物をモデリングして位置として妥当か、動きとして妥当かを判断するわけです。

単に右側歩行していることを検知するだけでは無く、その時のエスカレーターの混雑具合や効率性、追い越しをする際どういった行動をしているかまでつぶさに行動を類型化することが出来ます。

そして、その行動が特定の行動パターンとしてマッチした場合に、アナウンスを行うのです。

エスカレータ見守り君は、違反があるときだけでなく、片側偏重&待機列が発生しているときにもアナウンスを行います。そして、これらの状況が改善されたときには「ご協力ありがとうございます」と感謝も伝えることができます。

エスカレーターを歩く人が半分に!?AIで検知し「立ち止まって」と呼びかける実証実験…課題を開発会社に聞いた https://www.fnn.jp/articles/-/690862?display=ful

これを仮に人間を雇って同じ事を行おうとしたとしましょう。まず、行動を全て平等に見ることは人間お目では不可能です。また、行動を判別することや注意喚起にも属人性が出てしまい担当者毎にムラが出てしまいます。

また、疲労(肉体的にも精神的にも)などもあります。機械であれば電源さえ確保できれば24時間365日でも保守さえしっかりすれば稼働が可能ですし、恐らくかかる経費も機械の方が安いでしょう。

実証実験の成果

2024年1月末から始まった実証実験では、驚くべき結果が得られました。AIによる音声注意の導入前と比較して、エスカレーターを歩く人の数が半減したそうです。

他地域への展開と海外の状況

エスカレーター見守り君の成功を受けて、他の地域からも注目が集まっています。具体的な導入実績や引き合いについての詳細な情報は公開されていませんが、都市部を中心に関心が高まっていてもおかしくないでしょう。

海外では、日本のような「片側空け」の習慣がほとんど見られません。これには文化的背景や安全意識の違いが関係していると考えられます。

欧米では個人の自由を重視する傾向があり、全員が立ち止まることが一般的ですし、安全性を重視する文化が浸透しており、歩行によるリスクが認識されています。

公共交通機関の利用率や都市の人口密度の違いにより、急ぐ必要性が低いというのもあります。

そもそもが狭いところで一斉移動の通勤通学ラッシュという非効率を日常としている日本社会のせせこましくも悲しい社会的背景も大きいようです。

今後の課題

名古屋では、エスカレーター見守り君の2025年度からの本格導入に向けて(本格導入する前提で)、2024年度は主にコストダウンとブラッシュアップを行っているそうです。

エスカレーター見守り君のような革新的なシステムは、都市の安全性向上と文化変革の両面で大きな可能性を秘めている用に思えます。でも、その普及には以下のような課題もあります。

  1. プライバシー保護:カメラやセンサーによる監視に対する懸念

  2. コスト:システムの導入と運用にかかる費用

  3. 技術の信頼性:AIの判断精度と誤検知の可能性

  4. 社会的受容:新しい技術や規制に対する市民の理解と協力

コストに関する課題は結構深刻ですね。センサなどエッジデバイスの価格が高いとか、記録したデータの回収や、システムトラブル時の対応など、オペレーションコストが高いとかというのは、システムならではの部分と保守で根深く汎用的に出てくる話です。

例えば、安いオペレーションセンターの外注もあるはありますが、この手の内容だと現場に近くないと対応内容が乖離してしまう恐れもあります。

技術の信頼性は今後に期待ですね。フィードバックが1 〜2 秒ほど遅延してしまうとか、低頻度ではあるものの、誤ったフィードバックを行ってしまう場合があるそうですが、ここら辺は日進月歩の世界ですからカバー出来そうに思えます。

社会的受容として、音声が高圧的で、利用者に不快感を与えてしまうなどはなるべく刺激を与えず、効果は上げられるものを模索する余地があると思いますし、受け手の方も「悪いことしていたのかも」と思ってもらうプロセスが必要なのかも知れません。

技術だけで全ては解決しないけれど、今後はこういう使い方が増えていくし、そうならなければなりません

エスカレーター見守り君の事例は、AIやIoT技術が日常生活の安全性と快適性を向上させる可能性を示しています。同時に、長年の習慣や文化を変えることの難しさも浮き彫りになっているようです。

冒頭でお伝えしたように、やっぱり条例だけだと周知が行き届かないし、その場の喚起だけだと権威性が無いのでいずれも足りないと思います。何かに頼り切るのでは無く多面的で色々な対策や試行錯誤があってこそ成功の兆しが見えてくるし持続可能性があがっていくのです。

よく一本足打法とかいいますが、それはあまりに賭け要素が多くて個人として成功失敗するような場面なら個人の裁量で行えば良いです。でも、全体に寄与するような場面にはそぐいません。

幸いAI技術もIoTサービスプラットフォームもドンドン進化しています。ですから、これまでこうありたいと思っていても妄想で終わっていたことが案外すぐ実現する可能性が増えました。

ただ一方でどういうことで困り、何を実現したいかは技術者が必ずしも持っていないし、想定とは違うベストマッチもあるわけです。よくよくAIは人の仕事を奪うという脅威論はいつでも噴出していますが、僕は杞憂と思っています。

むしろ今何に困っていてその解決や改善に技術をどうマッチングさせるか、或いは技術以外の方法があるのではと模索するのは当面は人間の仕事です。もっと楽しく前向きに、そして楽天的に飛びついて出来ることからやっていく。そういうあり方が僕は大好きですし、そんな幸せな展開がもっともっと増えるように動こうと思っています。

皆さんはどう思われますか?出来れば、一緒によりよい、より楽しいを話せれば嬉しいです。

ではまた。

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