『ダブドリ Vol.5』 インタビュー07 元沢伸夫(株式会社DeNA川崎ブレイブサンダース)&平将貴(NATIONS代表)
発売中の『ダブドリ Vol.5』(ダブドリ:旧旺史社)より、今回は元沢伸夫さん&平将貴さんのインタビューの冒頭部分を公開いたします。
DeNA川崎ブレイブサンダースの元沢社長とバスケットボールメディアのキュレーションアプリ『NATIONS』の平社長の対談です。共にIT出身でスポーツ業界に身を投じたという共通点を持つ2人が、ビジネスという視点から日本バスケを語ります。
平 もともと僕ら皆そうなんですけど、NBAのコアファンなんですよ。
元沢 え、そっちのつながりも長いんですか?
大柴 そうですね。
平 SNSの住人なんです、僕ら。大柴さんがメンフィス・グリズリーズ、僕がロサンゼルス・レイカーズのファンです。
大柴 マイナー球団だったのに渡邊雄太が入ってきて、ラッキーって感じですね。
元沢 NBA好きな方って、正直あんまりB.LEAGUEに関心なかったりしませんか?
大柴 僕、B.LEAGUEができるまで国内にあんまり興味なかったですね。できてから見るようになりました。
元沢 そうなんですね。
大柴 はい。それでは、始めましょうか。
平 まず、僕が『NATIONS』というキュレーションメディア(特定の切り口でインターネットにある情報を選定し、公開するメディア)を立ち上げた経緯から。スポーツビジネスにはチケッティングとスポンサード、マーチャンダイジングと放映権といった4つの大きな入り口があります。それ以外のマネタイズ(収益化)ポイントをどうやって作ればいいかな、っていうのがあって。もともと『GREE』などデジタルの会社にいると、マネタイズポイントをどう作るかみたいな部分を考えがちじゃないですか。そうなったときに、「それが生み出せるようなアクションが取れるといいな」っていうところで一つ、キュレーションの形でまず始めて。業界に入りつつ、いろいろとそのタッチポイント(顧客とコンテンツの接点)を探して行こうっていう趣旨で始めました。
元沢 なるほど。
平 僕は大学時代から、そういった業界に入っていこうって決めていたんで。10数年の準備期間を経て、満を持してってところで入ったんです。僕自身も『NATIONS』をメディアとしてやりつつも、別の会社で経営コンサルタント、今は西宮ストークス(B2リーグ)の社外取締役もやったり、けっこう幅広く活動しています。
元沢 そうなんですか。
平 経営者目線を生かしたいっていう気持ちがあります。プラス、もともとのバックグラウンドがNBAオタクですから。
大柴 ハハハハハハ。
平 日本のバスケと海外のいいところをどうやってミックスして、より日本のバスケ界を盛り上げられるかといった意義で活動しています。今回は経営目線みたいなものもいろいろ交えながら、新規参入の『DeNA』元沢さんとその辺の建て付けも作りながら、対談できたらいいなって思ったのが背景です。
大柴 よろしくお願いします。
元沢 はい。むしろいろいろ教えていただきたいですね。バスケはほんと、素人ですから。
大柴 競技自体は、ということですね。ずっと野球畑なんですか。
元沢 野球は小学校のときに、2、3回少年野球チームでくらいのレベルです。中高サッカー部です。
大柴 あ、そうなんですね。
元沢 はい。スポーツはもう全般好きで。当然野球もバスケも大好きなんですけど、自分が競技者としてやってるって意味だとサッカーが一番長いんですよ。
平 サッカーだとやっぱり、欧州サッカー見たりとか、けっこうしますか。
元沢 今も見てます。でも「(リオネル・)メッシ、ハットトリック」とかウェブのニュースとかで見て、動画とかを見るくらいです。
平 でも多分、それが一般的ですよね。
元沢 はい。緩く好きなレベルです。あんまり「俺サッカー好きなんだよ」って、ちょっと恥ずかしくて言えないぐらいです。「やってました」ぐらいですね。
大柴 ちなみにJリーグはどうですか?
元沢 個人の趣味としては見に行ったことはないです。けど、(横浜DeNA)ベイスターズのときに野球だけじゃなくていろんなスポーツやエンタメが参考になるだろうっていうので、いろんなスポーツを見に行ってたんです。そういう意味では、Jリーグもかなり見てます。
大柴 先程「NBA好きな人ってB.LEAGUE見ないんじゃないですか」っていう質問をされたのは、ご自身も「欧州サッカー見てるけどJリーグは見てなかったよな」っていうのがあったんですね。
元沢 はい。サッカーとちょっと近いところがあるのかなっていう。
大柴 競技としてのレベル差は、まだどうしても埋まんないですもんね。
平 ここからはスポーツビジネスっていうところと、これまでのビジネスで同じ、あるいは似ている部分やちょっと違うところを聞きたいと思います。まずは元沢さんのキャリアと、就任に至るまでを教えてください。
元沢 僕は高校時代から社長以外の職業を考えてなくて、「僕の職業は社長だ」っていう思いでずっといました。大学を卒業しまして、社長業を勉強できるだろうっていう意味で経営コンサルティング会社に入りました。で、3年で辞めて起業するっていう目標があったんで。
平 そうなんですね。
元沢 日本LCA(現インタープライズ・コンサルティング)、ベンチャー・リンクの兄弟会社ですね。合従コンサルのチームで働いてそれをやって、2年半で辞めたんですよ。
平 DeNAの社長室に入る人たちって、けっこうベンチャー・リンク出身いますよね。
元沢 DeNAは今、執行役員が10人くらいいるんですけど、その中の2人はベンチャー・リンク出身ですね。年代も僕と近い。
平 大学のバスケの同級生がDeNAの社長室をやっていて。ベンチャーマインドでしたね。
元沢 よく言えば成長意欲が高いというか、ガツガツしてるんですよね。もう絶対に達成してやる、成し遂げてやる、みたいな。あの意欲は割と強い会社です。そこは今のDeNAも近しいところはあるかなっていう感じはしますね。
平 その後DeNAに入ったんですか。
元沢 そうなんです。
平 2013年に『GREE』がゲーム以外の事業をやめました。ゲーム屋さんになりますってなって。その頃DeNAさんは、もうベイスターズを買収してましたよね。
元沢 2012年のシーズンからですね。
平 僕は『GREE』のあとに『メタップス』っていう会社に入って、それこそ資金調達して、プロダクトを作って、国内外に事業拡大して、JV(ジョイント・ベンチャー)作ったり、IPO(上場)するまで、一通りスタートアップらしいこと全部やらせてもらって、今年から独立したんです。『メタップス』でアプリとかその事業者、お客さんたちのマネタイズサポートとか、コンサルをやってたんで。
元沢 もう毎日見てましたからね、『メタップス』さん。勉強させてもらいました。
大柴 ベイスターズ買収後、元沢さんは急に「おまえ行け」って言われたわけですよね。
元沢 手は挙げてました。2012年のシーズンに、ニュースで初めて知ったんですよ。自分のいる会社がプロ野球チームのオーナー会社になるんだと。これは絶対に面白いドラマがあるだろうと思ってぜひ行きたいと。ただ行かせてもらったのが、買収してからちょうど1年半後ぐらい。買収直後の一番ドロドロしたとこは、残念ながら知らないですね。
大柴 そこを一番見たかったんですね。
元沢 逆にある程度、第1弾のいろんな意味での整理がされて、まだまだ混沌としてる状態で、事業も全然うまくいってない状態。自分が行くからには絶対黒字化してやる、という意気込みで行きましたね。
平 葦原さん(葦原一正/現B.LEAGUE常務理事・事務局長)とかもその辺りで……。
元沢 葦原さんは、ちょうど僕と入れ違いぐらいなんですよ。葦原さんが2012年のベイスターズ立ち上げのときに、前沢さん(前沢賢/当時の横浜DeNAベイスターズ取締役事業本部長)とか最初のオーナーの春田さん(春田真/当時の横浜DeNAベイスターズオーナー)とジョインしてやってたんですけど、いろいろあって1年ぐらいで皆さん辞められていくタイミングで、僕が入りました。葦原さんとは、B.LEAGUEになってからのほうがコミュニケーションを取ってますね。
僕は5年ぐらいベイスターズでやらせてもらいました。最初の1年は社長室というところでいろいろ勉強させてもらって、2年目以降は事業本部長として、事業の責任者として仕切りなさいということで、ありがたい立場でやらせてもらいました。で、今年から今に至ってるわけですね。
平 昨年、東芝さんからオーナーシップを受け、譲渡されるみたいな話のところは、ベイスターズは絡んでなかったんですか。
元沢 いわゆるM&A案件自体の担当はDeNA本社で。途中から東芝さんとの話が本当にスムーズに進んで、お互いの思惑が一致したんですよ。「もうバスケがとにかくやりたい」「やるんだったら神奈川でできればやりたい」と。で、DeNAさんだったらうまくやってくれるんじゃないかっていうのもあって。そこで、誰が社長やりますかっていうのを、ベイスターズの社長と4人ぐらいで話してたんですよ。そこはもう、僕しかいないでしょというので、手を挙げて。
大柴 文字どおり手を挙げたんですね。
元沢 僕は自分にプレッシャーをかけるタイプで、そういうのが嫌いじゃないんです。DeNAって、ベイスターズがありがたいことに、ある程度うまくいきましたというのもあったので。
大柴 いやいや、ある程度って。
元沢 まだまだダメなところ、あるんですよ。なので「成功した」っていう言葉、あまり好きじゃないんです。だから、ある程度存在感を出すことはできました、と。ただ、「それって野球だからじゃん」というのもあって。野球って日本においてはちょっとスペシャルですね。
平 もはや文化ですよね。
元沢 そうなんです。だからバスケもやらせてもらって、もしバスケをすごくいい形で成長させることができたら、見方がだいぶ変わってくると思うんですよね。DeNAのスポーツビジネスのナレッジ(知識)とか、ずば抜けた存在になるなと思ってて。
平 でも、なぜDeNAさんはバスケットをやりたいってなったんですか。卓球とかラグビーとかあったと思うんですけど。
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この後も、DeNAがオーナーになってからの川崎ブレイブサンダースの変化についてなどを語ってくださっています。続きは本書をご覧ください。
ダブドリVol.5の試し読みコーナーは今回で最後となりますが、次号Vol.6が6月4日発売予定となっています。
巻頭インタビューは日本人2人目のNBAプレイヤーとなったメンフィスグリズリーズの渡邊雄太選手です!
現地のコーチや父である英幸氏、また恩師の色摩先生のインタビューもありますので、渡邊選手のことをもっと知りたいという方にオススメの一冊となっています。ご期待ください!