ハッピーな教室の育み方〜ハッピーシェアから始めるウェルビーイングな学校改革<後編>
「ウェルビーイングな学校」って、どんなふうにつくっていけるだろう?
そんな問いから始まった本記事。
学校のなかでウェルビーイングの育みにつながる取り組みをされている大同高校(愛知県名古屋市)の先生方のインタビューをお届けしています。
前編では、「職員室」のなかでの取り組みや先生方の変化についてお話を伺いました。
後編では、「教室」に焦点を当て、生徒さんたちを巻き込んだ新たな取り組みについて、インタビューの続きをお送りします!
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<チーム大同高校としてWBCにご参加いただいたみなさま>
※本記事は、2024年7月に実施したインタビューをもとに作成しております。
(聞き手:DAE Masae)
ウェルビーイングを育む鍵は「マインド」と「習慣化」
「指導」から「支援」へ
DAE
はまださんたちは、今年度は1年生を受け持っているとお聞きしましたが、何か新たに取り組んでいることなどはありますか?
はまださん
今の1年生の指導方針は「指導」ではなく、「支援」のマインドを大切にしよう、というふうに共通認識をもって生徒のサポートをしています。どうやって生徒を育てていくのかを考えた時、自分たち教員の生徒たちへの接し方がすごく重要だと思ったんです。
やぎさん
これまで、生徒のできないところばかりに言及して、矯正させるような生徒指導が行なわれてきました。それが良しとされる時代もあっただろうけれど、実際は、自分のできていないところを指摘される生徒も、そのように指導する教師の方もしんどいです。みんながハッピーになるように、もっと生徒の「できているところ」に目を向けて、伸ばしてあげるような「支援」をしていこう。そういうマインドをもって、まずは教員から、自分たちの担当する学年から浸透させていけたらと思っています。
教室・部活での取り組み
はまださん
その「支援」の観点を大切にしながら、1年生の各クラスでは、終礼後にハッピーシェアの取り組みをしています。下校前に少しでもいいので、今日の良かったことなんかをシェアし合おう、というのを自分のクラスでも毎日やっていて。
DAE
すごい、継続されているんですね!
はまださん
正直なところ、毎日続けていると生徒の方もだんだんネタがなくなってきて、停滞したときもあったんですよね。「じゃあどうすれば、自分たちが気持ちよく続けられるようになるかな?」って生徒に投げかけてみたら、朝授業が始まる前の時間の方がモチベーションが高いだとか、それなら昨日のハッピーシェアももちろん良いし、今日の頑張りたいことや目標をシェアしよう、っていうふうに生徒から意見が出てきて。自分もポジティブなコメントを返しながら、生徒たちの自発性をできる限り尊重するようにしています。今のカリキュラムだと朝の時間がなかなか取りにくくて難しさもあるんですが、いかに生徒がやる気になって話してくれるかということを日々模索しながら取り組んでいる最中です。
DAE
ハッピーシェアの継続がクラスを「心理的安全な空間」にしていて、かつ「自分で自分をご機嫌にする」脳の育みにつながるような問いかけが素敵だなぁと思います。
生徒さんたちからはどんなハッピーエピソードが出てくるんですか?
はまださん
本当に些細なハッピーが多いですね。誰々が物を拾ってくれただとか、問題を教えてくれただとか。取り組み始めた当初は、あまり盛り上がらないかもなぁと予想していたんですけど、意外と楽しんでやっています。
今ではもう習慣化されてるところもあるんですよね。周りとハッピーシェアするよ〜って言うと、ぱっと横向いて自然とシェアしている様子もあって。自分の予想と少し違ったことは発見でもあったし、日常のささやかなハッピーに注意を向ける、味わう、という意識の向け方が浸透しつつあることを感じています。
DAE
まさに、習慣化によって脳のフィルターがポジティブなことを拾うように育まれていますね。
やぎさん
僕のクラスでは、生徒が当番制でつけてる学級日誌に、ハッピーだったことを書いてくれる子が結構います。「グループワークでプレゼンテーションを作るときに、コミュニケーションが上手に取れるようになってきて友だちが増えたと感じます。ハッピーです!」みたいな。僕も「ナイスハッピー!」って返すんですけど、「ハッピー」というワードが、クラスの中でちょっと市民権を得てます。
あと、先ほどはまだ先生も仰ってましたけど、やっぱり盛り上がります。たまに、ちょっとおもしろハッピー的なシェアがあると、わははー!みたいな感じて笑ってます。
DAE
すごいβエンドルフィンが出てハッピーな場ですね!
やぎさん
そうなんですよ。最初は、人とコミュニケーションとるだけでも大事な時間という程度の認識だったんですが、思ったより効果がありそう。意外とハマってます(笑)。
むつうらさん
自分のクラスでも週に1回ハッピーシェアリングをやっていて、「脳ってこうなってるから、ハッピーを見つけるって大事なことなんだよ〜」という説明もちょこちょこ付け加えたりしながら。そうすると、なるべくポジティブに考えるように意識したり、「ハッピー」って言葉を口に出してくれている生徒もいるんですよね。
DAE
「ハッピーシェアしよう」だけだと恥ずかしがる子も多い年代だと思いますが、脳のしくみという知識がそこに添えられると、生徒さん自身もより納得感を持って取り組むことができるのでしょうね。
むつうらさん
そう思います。本校が大切にしている「自己肯定感」も、ハッピーをシェアし合うことで少し上がっているように感じているんです。自分のクラスは少人数なんですが、すごい仲が深まってきています。(春の入学〜7月の間に)誕生日会をもう3回くらいやってます(笑)。ビデオレターをつくって、「先生、動画流していいですか!?」「クラッカー鳴らしていいですか!?」っていうやりとりもあったりして、良い空間がつくられていってます。
とりいさん
部活では、「ネガティブなことをポジティブになるように言おう」ということをやっています。誰でも、今日あまり乗り気じゃないな〜、なんだか本調子じゃないな〜っていう日があると思うんです。部活中、その思っていることを直接声に出してもいいんだけれど、「今日は頑張れないけど楽しむぞ」とか、「本調子じゃないけどできる限り頑張ろう」とか、後ろにポジティブな言葉を1個つけるようにしています。実際、以前より休むことが減っていたり、感覚的ではありますが、あえてポジティブを口に出すことで多少なりとも前向きになれるのかなと思います。それに、1人のやる気のない空気ってみんなにも波及したりするんですけど、そういうのがなくなってきているなぁ〜ということも感じています。
DAE
ネガティブからポジティブの言い換えって、表面的だったり逆にプレッシャーに変わったりしやすいですが、本気で「ポジティブに変換しよう!」と意識しているからこそ、ちゃんとポジティブな情報として捉えることができているんだろうなぁと感じました。
きっと生徒のみなさんのポジティブでハッピーな神経回路がぐんぐん育まれていますね!素敵なエピソードたちを共有いただいてありがとうございます。
ハッピーは伝播する
今後の挑戦〜教室から外へ
DAE
みなさんのお話から、一見地味で些細なことなんだけれど、おざなりにせずに、心から向き合ってコツコツ継続すること、習慣化していくことで、ハッピーな変化を起こしていけるということがすごく伝わってきます。
むつうらさん
そうなんですよね。だからこそ、生徒のハッピーな気持ちを保護者の方にも知ってほしいなぁと思っているんです。
自分のクラスでは保護者向けの学級通信を配信していて、日常のハッピーエピソードをたくさん伝えるようにしています。例えば、生徒が日直の名前をイラストと一緒に書いてくれるのでそれをシェアしたり、こんな幸せそうなことやってました!みたいな、ささやかな日常の一コマですね。
はまださん
むつうら先生の保護者への通信は僕もちょくちょく見させてもらっています。めちゃめちゃハッピーな感じがするので、学校外の方々に大同高校のことをもっと知ってもらう取り組みとしてもすごくいいなって感じていました。
むつうらさん
ありがとうございます。発信できるところからしていけたらと思っています。学校全体で取り組むにはまだたくさんの課題はありますが、ちょっとずつ普及させていければなと思っています。
やぎさん
僕も外につなぐという文脈でいうと、生徒たちと保護者の方々が家でハッピーシェアのようなことができると、学校でも家でも、もっとハッピーが広がるんじゃないかと思っています。とはいえ難しい年頃なので恥ずかしさもあるだろうし、それぞれの家庭の事情でコミュニケーションがとりにくい環境のご家庭もある。
じゃあ、どういうふうに広げていこうか?ということを考えたときに、いきなり家庭でシェアし合うのは難しいかもしれないけど、教室でのハッピーシェアを部活に持ち込んだり、部活でのハッピーシェアを違う友だちどうしに持ち込んだり。ちょっとずつ、数珠繋ぎみたいに、1つずつ横に横に繋げていけると、ほんの少しずつ外部にもハッピーなコミュニケーションを波及していくんじゃないかな。そういうふうに広げていきたいな、というふうに思っています。
すべての先生に伝えたいこと・・・
DAE
それでは最後になりますが、「学校をより良くしたい、生徒のためにできる限りのことをしたい」という思いを持って取り組んでいる全国の先生方、どうしたらウェルビーイングな教室・学校をつくっていけるだろうと日々奮闘されている先生方にメッセージをお願いします。
やぎさん
そうですね。「素敵です」をたくさん伝えていただきたいですね。生徒たちの何気ない行動にも、言葉とか動きにも、何か絶対いいところがあるので、それを見つけて、伝えて、生徒が自分自身の価値を見出して感じられるようなサポートをしていくことが教員の役割だと思うし、私自身もそうありたいです。その繰り返しが、自己肯定感を上げることにつながるだろうし、学校全体の土壌の育みにつながると思っています。
とりいさん
僕は、思いついたこと、いっぱいやってみたらいいかなと思います。
みなさん仰ってますけど、ハッピーシェアだって、特に教員全員でやろうとしたときなんか、正直そんなに上手くいくと思っていませんでした(※前編参照)。批判的な感想もあるかもしれないと思っていたけれど、実際やってみたら、驚くほど評判が良かった。
もちろんその逆で、うまくいかないこともあると思います。
何がうまくいって何がうまくいかないか、それこそやってみないとわからないので、「やってみよう」と思ったことはいくらでもやってみればいい。悩むくらいならやってみる。それに尽きると思います。
DAE
大同高校のみなさん、素敵な取り組みをシェアしていただきありがとうございました!
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