冷静と情熱のあいだ
1999年角川書店より同時刊行された、
辻仁成著作「Blu」、江國香織著作「Rosso」。
恋愛の主人公ふたり、男性視点と女性視点を、
別々の著者が描くという企画だった。
辻仁成は、97年「海峡の光」で芥川賞受賞。
99年に「白仏」でフランスの文学賞、
フェミナ賞を受賞する。
江國香織は、独特の文体で、
僕が女性作家で、注目していたひとりだった。
作家が協働しづらいのは、
仕事でもよく見かけていたので、
この企画は本当に画期的だと思った。
とはいえ、純粋に読者として、楽しんだ。
イタリア、特にローマやミラノより、
未踏のフィレンツェが僕は好きで、
この本でますますその想いを強くした。
2001年公開の映画化で、
原作もかなりヒットしたと思う。
フィレンツェを舞台にしており、
映画化にも向いていた。
このふたりは、この作品の執筆後に、
今度は長編コラボをやろうと盛り上がったとか。
辻仁成は中山美穂と結婚してパリに拠点を移し、
江國香織は「号泣する準備はできていた」で、
2004年直木賞を受賞する、対照的な道程。
そして2008年に「右岸」「左岸」を、
集英社から刊行する。
間もなく20世紀が、僕の20代が、
終わろうとしていた1999年、
いつかフィレンツェを訪れたいと思っていた。
そして僕は数年後、
新婚旅行でフィレンツェを訪れる。
どれだけ美しい映像を観ても、
やはり自分の目に焼きついたあの光景が、
色褪せることはない。