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少額訴訟手続は便利かも?

交通事故の損害や借家人が破損させた部屋修繕費など訴訟対象となる金額が60万円以下の場合には一般的な訴訟より利便性の良い少額訴訟手続きがあると聞いたのでひもといてみた。


|少額訴訟手続とは

 民事訴訟のうち、少額の金銭の支払をめぐるトラブルを速やかに解決するための簡易迅速に紛争を処理することを目的として設けられた制度である。
簡易裁判所における特別の訴訟手続である(民事訴訟法第368条第1項)。

|少額訴訟の特徴

少額訴訟の特徴を列挙すると概ね以下のとおり。

① 訴訟対象金額が 60 万円以下の金銭の支払をめぐるトラブルに限って利用できる手続。
②  原則として、1 回の期日で双方の言い分を聞いたり証拠を調べたりして、直ちに判決となる。
ただし、相手方が希望する場合などは、通常の訴訟手続きに移ることもある。
③  証拠書類や証人は、審理の日にその場ですぐに調べることができる
ものに限られる。
④  裁判所は、訴えを起こした人の請求を認める場合でも、分割払、支
払猶予、遅延損害金免除の判決を言い渡すことがある

⑤  少額訴訟判決に対して不服がある場合には、判決をした簡易裁判所に不服(異議)を申し立てることができる。
ただし、地方裁判所での再度の審理を求めること(控訴)はできない

|少額訴訟手続とは?

前記したような少額訴訟の特徴があるがこれを以下説明する。

少額訴訟手続とは,通常の裁判手続きでは時間と費用を要することから、市民間の規模の小さな紛争を少ない時間と費用で迅速に解決することを目的として,新しく作られた手続で、60万円以下の金銭の支払を求める訴えについて,原則として1回の審理で紛争を解決する特別の手続である。

60万円以下の金銭の支払を求める訴訟を起こすときに,原告がそのことを希望し,相手方である被告がそれに異議を言わない場合に審理が進められることができるのだ。

➤ 少額訴訟手続の審理
この訴訟手続きでは、最初の期日までに,自分のすべての言い分と証拠を裁判所に提出してもらうことになる。

また,証拠は,最初の期日にすぐ調べることができるものに制限されている。したがって,紛争の内容が複雑であったり,調べる証人が多く1回の審理で終わらないことが予想されるような事件は,裁判所の判断で通常の手続により審理される場合がある。

➤ 和解
少額訴訟手続でも,話合いで解決したいときには,「和解」という方法がある。
話合いによる解決の見込みがない場合には,原則として,その日のうちに判決の言渡しをすることになる。

和解が成立すると,裁判所書記官がその内容を記載した和解調書を作る。
和解調書の効力は確定した判決と同じなので,相手方が和解で約束した行為をしない場合には,もう一方は,和解の内容を実現するため,強制執行を申し立てることができる。

➤ 少額訴訟の判決
少額訴訟の判決は,通常の民事裁判のように,原告の言い分を認めるかどうかを判断するだけでなく,一定の条件のもとに分割払,支払猶予,訴え提起後の遅延損害金の支払免除などを命ずることができることになっている。

少額訴訟手続の判決に対しては,同じ簡易裁判所に異議の申立てをすることができるが,地方裁判所に控訴をすることはできない。なお,少額訴訟手続の利用回数は,1人が同じ裁判所に年間10回までに制限されている。

|少額訴訟の被告(相手方)になった場合

➤ 被告となった場合
原告が被告(相手方)に対して,少額訴訟手続による審理を求める訴訟である。
もし被告となった場合(相手方から訴えられた場合)、裁判所から訴状,口頭弁論期日呼出状,少額訴訟手続の内容を説明した書面等が送られてくる。
その書面をよく読んで対応することが大事である。

これまで説明したように少額訴訟手続は,特別の事情がある場合を除き,最初の期日において,当事者双方の言い分を聞き,かつ,証拠を調べて,直ちに判決を言い渡すのを原則としている。

もし、このような少額訴訟手続による審理を希望しない場合には,簡易裁判所の通常の手続による審理を求めることができる。

その場合には,最初の期日において弁論をするまでに,訴訟を通常の手続へ移行させる旨の申し出をすることが必要なのだ。
なお,少額訴訟では反訴を提起することはできない

➤ 答弁書
少額訴訟手続による審理に異議がない場合には,最初の期日の前までに答弁書を提出しておくと,自分の言い分を裁判所と原告に正確に伝えることができる。

届いた口頭弁論期日呼出状には,裁判が行われる期日が書いてあるので,その期日に,呼出状に記載された法廷に出席する必要がある。
どうしても決められた期日に出席できない場合には,担当の裁判所書記官に連絡をしてみると良い。

答弁書を提出しないまま,決められた裁判の期日に出席しない場合には,原告の言い分どおりの少額訴訟判決が出ることがあるので注意が必要だ。

|裁判の前に準備すること

少額訴訟では,裁判所が最初の期日に当事者双方の言い分を聞いたり,証拠を調べたりして判決する。
訴訟では,双方の言い分に食い違いがある場合,証拠に基づいてどちらの言い分が正しいかを判断することになるので,自分の言い分の裏付けになる証拠は,最初の期日に提出できるように準備することが必要だ。

➤ 証拠類
主な証拠としては,契約書,領収書,覚書のほか,交通事故の場合の事故証明などの証拠書類や,人証といって証人や当事者本人などの供述がある。

証拠の提出について不明な点があるときは,担当の裁判所書記官にお尋ねるとよい。

|少額訴訟終了後

少額訴訟判決は,当事者が判決を受け取った日の翌日から起算して2週間以内に異議を申し立てなければ「確定」する。
確定すると,判決の内容を争うことができなくなるのだ。

少額訴訟を起こした原告の言い分が認められた少額訴訟判決には,「この判決は,仮に執行することができる」旨の仮執行宣言が付されている。
もしも,被告が判決に従わない場合には,原告は,判決確定前であっても,少額訴訟判決の内容を実現するため,強制執行を申し立てることができる

ただし,被告が異議を申し立てるとともに,強制執行停止手続を求めた場合には,その強制執行手続が停止されることがある。

➤ 少額訴訟判決に不服がある場合
原告と被告は,いずれも少額訴訟判決に不服がある場合には,少額訴訟判決をした簡易裁判所に異議の申立てをすることができる。

なお,少額訴訟の判決に付された支払猶予,分割払,期限の利益の喪失,訴え提起後の遅延損害金の支払義務の免除の定めに関する裁判に対しては異議を申し立てることはできない。

異議後の審理は,少額訴訟の判決をした裁判所と同一の簡易裁判所において,通常の手続により審理及び裁判をすることになるが,異議後の訴訟においても反訴を提起することはできないし,異議後の訴訟の判決に対しては控訴をすることができないなどの制限がある。

➤ 異議後の和解
少額訴訟手続及び異議後の訴訟の手続においても,訴訟の途中で話合いをして和解により紛争を解決することができる。
和解が成立すると,裁判所書記官がその内容を記載した和解調書を作る。
和解調書の効力は確定した判決と同じである。

|被告は対応しない不利に?

少額訴訟手続においても,通常の訴訟手続においても当てはまることであるが、
被告が最初の口頭弁論期日に出頭せず,かつ,訴えた人(原告)の主張を争う内容の書面も提出しない場合
には,被告は,原告の言い分を認めたものとみなされ(同法第159条第3項本文,第1項、「擬制自白の制度」という。),裁判所は,原告の言い分どおりの判決をすることになる。

|おわりに

少額訴訟の概要をひもといてみました。
迅速な裁判手続きを進めるための制度なので、60万円以下であればこの制度を活用すると便利だろうと思う。

少額訴訟は弁護士を付けることなく自分で訴訟資料を揃えることでも対応できるという点でも利便性はよいでしょう。
この制度を利用するに当たっては、簡易裁判所で相談にのってくれます。

参考
「ご存知ですか?簡易裁判所の少額訴訟」パンフレット(最高裁判所)https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2023/kansai-leaflet/leaf-kansaishougaku.pdf


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