「法定相続情報証明制度」は便利?
家族が亡くなり法定相続が開始される場合に、金融機関などに個人の通帳等の相続開始の届出をしますが、その際の手続きが結構面倒ですよね。そんなときに有効に活用できるのがこの制度です。
|法定相続情報証明制度とは
この制度は、相続人から相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)とともに、戸除籍謄本等の束を登記所に提出して、一覧図の内容が民法に定められた相続関係と合致していることを登記官に確認してもらい、その一覧図に認証文を付した写しの交付を受けることができるというもの。手数料は無料です。この制度は、法務省が相続登記を促進するために、平成29年5月に創設されたものです。
|相続登記の義務化
不動産の登記名義人(所有者)が亡くなられた場合、相続によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされました。
相続登記申請の義務化は、関係法律が改正され令和6年4月に施行されたのです。
この相続登記の申請をするに当たって、所有する不動産が複数の管轄にまたがって所在する場合には、それぞれの不動産の所在地を管轄する法務局に対し、故人の相続関係書類として、戸除籍謄本等の原本の束を提出しなければなりません。
法定相続情報一覧図の写しは、戸除籍謄本等の束の代わりに相続登記に利用することができるため、本制度を利用すれば、複数の法務局に戸除籍謄本等の束を出す必要がなくなるのです。
さらに、他の行政庁や金融機関などの様々な相続関係手続にも利用することができることから、これらの手続においても、戸除籍謄本等の束を何度も出し直す必要がなくなるのです。
|法定相続情報番号とは
法定相続情報番号とは、法定相続情報一覧図の写しの右肩部分に記載される、法定相続情報を識別するための番号をいいます。
令和6年4月1日から、登記申請書の添付情報欄に法定相続情報番号を記載することで、法定相続情報一覧図の写し(証明書の原本)の添付を省略できるようになったのです。
なお、不動産登記以外の手続では、法定相続情報番号は使うことができません。
|法定相続情報一覧図
法定相続情報一覧図の写しは下図のようなもので、これを活用できる手続としては、
・ 相続登記の申請手続
・ 被相続人名義の預金の払戻し手続
・ 相続税の申告
・ 被相続人の死亡に起因する年金等手続
など、様々なものがあります。
利用の可否が分からない場合は、提出先の行政機関や金融機関等に問い合わせてみるとよいです。
|申出の手続き
申出の手続きの概要は以下のとおりです
○ 被相続人名義の不動産がない場合(例えば、遺産が銀行預金のみの場合)でも利用することが可能である。
○ 申出をすることができる者
被相続人の相続人(当該相続人の地位を相続により 承継した者を含む。
○ 代理人として申出ができる者
・ 法定代理人
・ 民法上の親族
・ 資格者代理人(弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海 事代理士及び行政書士に限る。)
○ 申出をすることができる登記所は、次の地を管轄する登記所のいずれか。
・ 被相続人の本籍地
・ 被相続人の最後の住所地
・ 申出人の住所地
・ 被相続人名義の不動産の所在地
○ 申出は、郵送によることも可能である。
なお、申出先は不動産登記の管轄区域による。
申請に必要な書類としては下図を参照してください。
|法定相続情報一覧図の留意点
|法定相続情報一覧図については以下のような点に留意する必要があります。
○ 法定相続情報一覧の写しは、相続手続きに必要な範囲で複数通発行が可能である(例えば、複数の金融機関や不動産登記、株式等に使用する場合など)。
○ 法定相続情報一覧図の保管期間は5年間でありこの期間中は、一覧図の写しを再交付することが可能である。
ただし、再交付を申出することができるのは、当初、一覧図の保管等申出を
した申出人に限られる(他の相続人が再交付を希望する場合は、当初の申出人からの委任が必要)である。
○ 推定相続人の廃除があった場合に、法定相続情報一覧図には、原則、その廃除された者の記載がされない。
被相続人の死亡後に子の認知があった場合や、被相続人の死亡時に胎児であった者が生まれた場合、一覧図の写しが交付された後に廃除があった場合など、被相続人の死亡時点に遡って相続人の範囲が変わるようなときは、当初の申出人は、再度、法定相続情報一覧図の保管等申出をすることができる。
○ 被相続人や相続人が日本国籍を有しないなど、戸除籍謄抄本を添付することができない場合は、本制度は利用できない。
|おわりに
この法定相続情報一覧図については、不動産の相続登記手続きを行う際に、法定相続人等の戸籍謄本や原戸籍などが金融機関等の数に対応する枚数が必要になることが多いが、この制度を活用すると、この一覧図の写しを提出するとで、戸籍謄本等の提出を省略することができるなど、相続手続に係る相続人・手続の担当部署の双方の負担を軽減することができます。
詳しくは法務省のホームページを確認したり、所轄の法務局、司法書士などに相談すると良いでしょう。
参考資料
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001394034.pdf
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001397956.pdf