「通信傍受に関する国会への報告」について
「通信傍受法第36条に基づく令和5年における通信傍受に関する国会への報告について」という長い表題だがこれは「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律 」(平成11年8月18日法律第137号)に基づいて、この法律の制定時の国会との約束で年次報告をすることになっているのだ。
その内容をちょっとのぞいてみた。
長いみだしだがこれは「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律 」(平成11年8月18日法律第137号)に基づいて、この法律の制定時の国会との約束で年次報告をすることになっている。その内容をちょっとのぞいてみた。
|通信傍受法とは
警察や検察の捜査機関が電話や電子メールなどの通信を当人等の承諾を得ず内緒で受信することを認める法律で、1999年制定された。
近年、薬物,銃器,集団密航,組織的殺人などの犯罪が多発するようになってきたために,これらの犯罪を捜査することを目的に法律がつくられたのだ。
通信傍受という行為はプライバシーの侵害になる場合もあるため,厳しい手続きや常に立会人を必要とするなど,この法律の乱用を防ぐ方法がとられている。
|国会報告等
国会への報告等について、この法律の第36条に以下のように規定している。
報告の内容は、傍受令状の請求及び発付の件数、その請求及び発付に係る罪名、傍受の対象とした通信手段の種類、傍受の実施をした期間、傍受の実施をしている間における通話の回数などを年ごとに報告をし、公開することとしている。
|通信の傍受の必要性
通信傍受の対象となる犯罪は,薬物関連犯罪,銃器関連犯罪,集団密航の罪,組織的殺人,これら組織的な犯罪であり,これらの犯罪はその準備及び実行が密行的に行われ,犯行後にも証拠を隠滅したり,犯人を逃亡させるなどの工作が行われることも少なくなく,それらを実行するための手段として,しばしば電話等の通信手段が悪用されている。
また,犯行に関与した末端の者を検挙しても,首謀者等の氏名や関与の状況について供述を得ることは容易ではない。
通常の捜査方法では真相の解明が困難であるこれら犯罪のための特別な捜査手法として通信傍受を認めることが,今日の組織犯罪に対抗するためには,必要不可欠である。
なお,主要先進諸国のほぼすべてにおいて通信傍受制度に関する法整備がなされており,我が国においてもこれを整備することが国際的要請になっているともいえる。
|通信の傍受は憲法か
憲法第21条第2項は,「通信の秘密」を保障している。
この法律の制定時には国会でも与野党はもちろん政治的な、そして思想的問題から反対等を唱える者も多く様々な議論がされた。
憲法が保障する「通信の秘密」を最大限尊重しつつ、一方,憲法第12条及び第13条の「公共の福祉による制約」の規定から,通信の秘密の保障も絶対無制限のものではなく,公共の福祉の要請に基づく場合には,必要最小限の範囲でその制約が許されるということが憲法解釈上の一般論・常識である。
通信傍受法案は,捜査という「公共の福祉」の要請に基づき,通信傍受の要件を厳格に定め,必要最小限の範囲に限定して傍受を行うものであり,決して憲法に違反するものではないというのが今日的な見解である。
|通信傍受を行うことがきる場合
通信の傍受は
というのが要件である。
さらに,通信傍受は,通常の捜査方法では真相の解明が困難である場合の特別な捜査手法であり,通信傍受以外の他の方法によっては,犯人を特定し,犯行状況等を明らかにすることが著しく困難な場合に,最後の手段として,裁判官の令状を得てこれを行うことができるとされている。
|通信傍受の対象は
対象となる通信は、「電話」に限ることなく,ファクシミリ,コンピュータ通信等であり、いわゆる「電気通信」であって,伝送路の全部又は一部が有線であるもの又は伝送路に交換設備があるものを対象としている。
個々の捜査において傍受の対象となる電話,電子メール等は,電話番号やアドレス等により特定して令状に記載され,それについてだけ傍受が許されることになる。
|年次報告
以上のような前提に立って今回(R5年中の通信傍受に関する年次報告の内容は以下のとおりだ。
◍ 犯罪捜査のための通信傍受に関する法律に基づく報告(令和5年)
令和5年における通信傍受等に関する年次報告記載の内容としては、全国の警察が22事件の捜査で通信傍受を行い、計70人を逮捕した。対象はいずれも携帯電話だった。
内訳は
・覚醒剤取締法違反9件
・銃刀法違反3件
・組織的犯罪処罰法違反1件
など。また、傍受の回数は1万2899回で、期間は延べ828日間
だった。
また、
22年に傍受した5事件で、2023年に計25人を逮捕
したという。
子細はこちらのURLでPDFを確認してみよう。
国会報告資料はこちら (117KB)
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