犬の鳴き声等の被害は ~動物愛護法~
近所で複数の犬を飼っており犬の鳴き声がうるさい、悪臭がする、散歩させている際に尿やふんの始末が十分でないなど、苦情も多いですね。ちょっと調べてみました。
|動物愛護法
動物の愛護及び管理に関する法律(略して「動物愛護法」)では、動物の所有者又は占有者の責務等が規定されている。
|家庭動物等の飼養及び保管に関する基準(環境省の告示)
環境省の告示「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」において、犬の飼養及び保管に関する基準を定めている。
その告示の第4「犬の飼養及び保管に関する基準」において、「犬の所有者等は、頻繁な嗚き声等の騒音又はふん尿の放置等により周辺地域の住民の日常生活に著しい支障を及ぼすことのないように努めること。」としている。(基準第4の3)
つまり、犬の所有者等に対して、動物を激しく鳴くことやふん尿の放置等により周辺の住民の日常生活に著しい迷惑を及ぼさないように努める義務を課しているのである。
|動物愛護法の改正
動物愛護法は数次にわたって改正されてきた。
最終の改正(2019年6月)により数値規制や8週齢規制、罰則の強化、マイクロチップの義務化など、重要な改正が行われている。概略を説明する。
➤ 数値規制(飼養管理基準の厳格化)
悪質なブリーダーやペットショップの抑制が目的。
具体的には、ブリーダーやペットショップなど第一種動物取扱業者に対して、飼養施設の広さや運動スペース、従業員1人当たりの上限飼育数、繁殖年齢や回数などについて規定された。
➤ 8齢規制(幼齢の犬猫の販売制限)
生後56日(8週齢)を経過していない犬猫の販売は禁止となった。
ただし天然記念物に指定されている犬(秋田犬・甲斐犬・紀州犬・柴犬・北海道県・四国犬)は生後49日(7週齢)という特例が定めている。
➤ 虐待の罰則強化
従来の法律では、動物をみだりに殺傷した場合の罰則が「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」に厳罰化された。
また、動物虐待や遺棄をした場合は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」に厳罰化された。
➤ マイクロチップの装着義務化
犬猫の販売業者はマイクロチップの装着が義務化された。
販売業者以外(いわゆる一般の飼い主)は努力義務ですが、迷子になったりした際に飼い主を見つけやすくなることや、安易な遺棄などの抑止が期待されています。
➤ 繁殖制限の義務化
犬や猫の所有者は、適正な飼養が困難な場合には、その犬や猫をみだりに繁殖させないよう不妊手術を行うなどの措置を行わなければならないことが義務化された。
|動物愛護法の違反の場合
ペットが原因で騒音や悪臭が発生したり、動物の毛の飛散があったり、多数の昆虫の発生等によって周辺の生活環境が損なわれているような場合、都道府県知事は、飼い主の義務に違反している者に対し、必要な指導又は助言をすることができるとされている (動物愛護法第25条第1項)。
同勧告を受けた者が同勧告に係る措置をとらなかった場合、特に必要があると認めるときは、都道府県知事は、その者に対し、期限を定めて、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる (動物愛護法第25条3項)。
勧告が出されているにもかかわらず、飼い主がその命令に違反した場合、50万円以下の罰金に処せられる (動物愛護法第46条の2)。
|民法上の動物占有者等の損害賠償責任
飼っている動物が他人に損害を与えた場合には、民法の規定により損害賠償義務が生じる。
(1) 原則
民法は、動物の占有者等の責任について、「動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。」と規定している (民法第718条第1項本文)
そのことから、飼っている犬の嗚き声などによって、周辺住民に精神的損害を与えた場合、飼い主は周辺住民に対して損害を賠償する義務を負うことになる。
(2) 例外
同条文にはただし書きがあり「動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。」との規定されている。
つまり、飼い主は、ペットの管理について過失がないことを証明すれば、責任を負うことはないのだ。
|おわりに
動物愛護法の一部を要約して記載しました。
動物も含め虐待の防止、周囲の住民等の生活権を保障することは、動物も人も同じで重要なことです。
上記以外にも、飼い犬が人を噛んだ場合などには、民事責任と刑事責任を問われる場合(刑法209条、過失傷害罪)もあります。
いずれにしても、飼い主の方は善良な管理を行いましょう。