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「下請取引の適正化について」という要請文
令和6年11月15日付けで公正取引委員会は、下請取引の適正化を促すための関係業界団体等にみだし要請したという。
|要請(通知)の日
令和6年11月15日付け
|要請(通知)者
公正取引委員会
|通知(要請)の概要
昨今の物価上昇等により、外的要因の影響を受けやすい立場にある中小企業・小規模事業者には大きな影響が出ている。
このため、下請事業者と親事業者との間で積極的な価格交渉と価格転嫁を行
うとともに、下請事業者への不当なしわ寄せが生じないよう、親事業者となる会員に対して周知徹底を図ることなどについて、関係事業者団体約1,700団体に対し、公正取引委員会委員長及び経済産業大臣連名の文書(別添)をも
って要請したもの。
|通知(要請)文の内容
発出された要請文は以下のとおり。
(別紙)
親事業者の遵守すべき事項
下請取引を行うに当たって、親事業者は、下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法Jという。)に従い、下記事項を遵守しなければならない。
記
1 親事業者の義務
(1) 書面(注文書)の交付及び書類の作成•保存義務
• 下請事業者に物品の製造や修理、情報成果物の作成又は役務提供を委託する場合、直ちに注文の内容、下請代金の額、支払期日、支払方法等を明記した書面(注文書)を下請事業者に交付すること。(下請法第3条)
• 注文の内容、物品等の受領日、下請代金の額、支払日等を記載した書類を作成し、これを2年問保存すること。(下請法第5条)
(2) 下請代金の支払期日を定める義務及ぴ遅延利息の支払義務
• 下請代金の支払期日は、親事業者が下請事業者から物品等を受領した日から60日以内において、かつ、できる限り短い期問内に定めること。(下請法第2条の2)
• 支払期日までに下請代金を支払わなかったときは、下請事業者から物品等を受領した日から起算して60日を経過した日から支払をするまでの期問について、その日数に応じ、未払金額に年率14. 6パーセントを乗じた額を遅延利息として支払うこと。(下請法第4条の2)
2 親事業者の禁止行為
親事業者は次の行為をしてはならない。
(1) 受領拒否
• 納品された物品等が注文どおりでなかった場合等を除いて、注文した物品等の受領を拒むこと。(下請法第4条第1項第1号)
(2) 下請代金の支払遅延
• 支払期日の経過後なお下請代金を支払わないこと、すなわち下請代金の支払を遅延すること。(下請法第4条第1項第2号)
例えば以下の行為は禁止行為に当たります。
一 受け取った物品等の社内検査が済んでいないことや社内の事務処理の遅れを理由に下請代金の支払を遅延すること。
(3) 下請代金の減額
・ 下請事業者に責任がないのに、発注後に下請代金を減額すること。(下請法第4条第1項第3号)
(減額の名目、方法、金額の多少、下請事業者との合意の有無を問わない。)
例えば以下の行為は禁止行為に当たります。
- 単価の引下げ改定について合意した場合に、合意前に既に発注されているものにまで新単価を遡及適用すること。
- 手形払を下請事業者の希望により一時的に現金払にした場合に、その事務手数料として、下請代金の額から自社の短期調達金利相当額を超える額を減ずること。
(4) 返品
・ 取引先からのキャンセルや販売の見込み違い等、下請事業者に責任がないのに、下請事業者から物品等を受領した後、下請事業者にその物品等を引き取らせること。(下請法第4条第1項第4号)
(5) 買いたたき
・ 同種、類似の委託取引の場合に通常支払われる対価に比べて著しく低い下請代金の額を不当に定めること。(下請法第4条第1項第5号)
例えば次のような方法で下請代金の額を定めることは、買いたたきに該当するおそれがあります。
- 労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置くこと。
- 労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストが上昇したため、下請事業者が取引価格の引上げを求めたにもかかわらず、価格転嫁をしない理由を書面、電子メール等で下請事業者に回答することなく、従来どおりに取引価格を据え置くこと。
- 親事業者の予算単価のみを基準として、一方的に通常の単価より低い単価で下請代金の額を定めること。
- 多量の発注をすることを前提として下請事業者に見積りをさせ、この見積価格を少量発注する場合に適用すれば通常の対価を大幅に下回ることになるにもかかわらず、その見積価格の単価を少量の発注しかしない場合の単価として下請代金の額を定めること。
- 短納期発注を行う場合に、下請事業者に発生する費用増を考慮せずに通常の対価より低い下請代金の額を定めること。
(注)買いたたきの事例等の詳細を解説した「ポイント解説 下請法」も御参照ください。
公正取引委員会又は中小企業庁ホームページからダウンロード可能です。
https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu_files/pointkaisetsu.pdf
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/download/pointkaisetsu.pdf
(6) 物の購入強制・役務の利用強制
・ 正当な理由なくして、自社製品、手持余剰材料その他自己の指定する物を下請事業者に強制して購入させたり、役務を強制して利用させること。(下請法第4条第1項第6号)
(7) 報復措置
・ 下請事業者が親事業者の違反行為について公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由として、取引の数量を減じたり、取引を停止するなどの不利益な取扱いをすること。(下請法第4条第1項第7号)
(8) 有償支給原材料等の対価の早期決済
・ 親事業者が原材料等を有償で支給した場合に、この原材料等を用いて下請事業者が製造又は修理した物品の下請代金の支払期日より早い時期に、この原材料等の代金を支払わせたり、下請代金から控除すること。(下請法第4条第2項第1号)
(9) 割引困難な手形の交付
・ 下請代金の支払につき、下請代金の支払期日までに一般の金融機関による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付することにより、下請事業者の利益を不当に害すること。(下請法第4条第2項第2号)
※ 「手形が下請代金の支払手段として用いられる場合の指導基準の変更について(令和6年4月 30 日)」を発出。
今般、改めて業界の商慣行、金融情勢等を総合的に勘案して、指導基準について、業種を問わず 60 日としました。これに伴い、令和6年 11 月1日以降、親事業者が下請代金の支払手段として、手形期間が 60 日を超える長期の手形を交付した場合、割引困難な手形に該当するおそれがあるとして、その親事業者に対し、指導を行うこととしています。
(10) 不当な経済上の利益の提供要請
・ 下請事業者に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることにより、下請事業者の利益を不当に害すること。(下請法第4条第2項第3号)
(11) 不当な給付内容の変更・やり直し
・ 下請事業者に責任がないのに、発注内容の変更(納期の前倒しや納期変更を伴わない追加作業などを含む。)を行い、又は下請事業者から物品等を受領した後(役務提供委託の場合は役務の提供後)にやり直しをさせることにより、下請事業者の利益を不当に害すること。(下請法第4条第2項第4号)
(参考1)令和5年 11 月 29 日、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」についてhttps://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/romuhitenka.html
(参考2)令和6年 10 月1日、「手形等のサイトの短縮について」について
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2024/oct/241001_tegata.html
|おわりに
公正取引委員会がこの種通知を発出するということは、今般の最低賃金の引き上げ等により物価が上昇するなどにより、中・小企業や小規模事業者などが親会社からの強引な取引、下請けタタキなど、不適正な契約などが散見されるということだろう。
そして、中小企業や小規模事業者などの下請け事業者の資金繰りが厳しく倒産する等の事案の発生も懸念されることから、親事業者が下請代金を早期にかつ可能な限り現金で支払い、下請事業者の資金繰りに支障を来さないようにするための施策として行ったものと推察します。
なんとなく最低賃金の賃上げが資源不足による物資の高騰と相まって、悪循環を発生させているような気がするのは、私だけでしょうか?
最低賃金を1500円まで引き上げるという目標を掲げた政府だが、そうなったときに、物価の急激な上昇も予想され、下請け事業者はもとより労働者も賃上げ以上に物の値が上がり、一層生活が困窮することになるでしょうね。
さらには年金暮らしの高齢者にとっては、年金が据え置きなので厳しい値上げに対応できなくなるなど影響が出て、生活保護を受ける者が増加するのではないでしょうか?
経済と国民生活の均衡を図る”目”を持って欲しいのですが、国会議員や高級官僚など、国民生活の中で”汗”を流さない方々には国民の生活水準が目にはいたないのでしょうね。
参考資料
https://www.jftc.go.jp/file/241115nenmatuyousei2.pdf