刑事告訴・告発 ~その1
最近芸能界では、芸能人を○○罪で告訴したとか、反対に告訴された芸能人が相手方を名誉毀損で告訴したしたというような事案が続いていますよね。
ところで、刑事事件の告訴や告発ってどういうことなんでしょうか?
告訴告発についてちょっと説明します。
|告訴とは
被害者その他法律に定められた一定の者が、捜査機関に対して、犯罪行為を特定して犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示をいいます。
犯罪事実を申告するだけでは足りず、犯人の処罰を求める意思表示が必とされています。
|告発とは
犯人または告訴権者以外の第三者において、捜査機関に対し、犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示をいいます。
「何人でも」告発することができるとしていることから、誰でも告発することができます。
|告訴権者
告訴権は、まず犯罪により被害を受けた者に認められる(刑事訴訟法230条)。
また、被害者の法定代理人にも認められる(刑事訴訟法231条1項)。
親権者が2人いるときはそれぞれが単独で告訴権を有します。
また、被害者が死亡した場合には、被害者の配偶者、直系の親族、又は兄弟姉妹が告訴権者となる(刑事訴訟法231条2項)。
|告訴・告発の方法
告訴・告発の方法は、検察官または警察・司法警察員に対して、書面または口頭で行なうことになっている(刑事訴訟法241条1項)。
※司法警察員とは、巡査部長以上の階級の警察官や労働基準監督官のことをいいます。
条文上は、口頭でも可能となっていますが、構成要件(犯罪の成立要件)を満たすには、具体的な犯罪の事実や被害の内容などの詳細に関する説明が必要となります。
また、手続きの明確性という意味でも、書面が望ましく、警察当局においても、事実上、書面による告訴・告発を求められることが多いです。
|告訴・告発するための必要な条件
○ 告訴権・告発権があること
○ 刑事処罰の根拠規定があること(形式的要件)
○ 裏付けの疎明資料があること(実質的要件)
○ 犯罪事実の申告があること
○ 犯人処罰の意思表示があること
※ 親告罪の場合は、犯人等を知った日から6ヶ月以内であること
※ 告訴人・告発人は実在する人物(組織・団体の代表者を含む)であること
|告訴状は匿名ではだめ?
告訴人・告発人が誰であるかが特定されていないといけないので、匿名で告訴や告発をすることは出来ません。
|告訴状・告発状はどこに提出するのか?
一般的な刑事事件に関する告訴状・告発状は、犯罪発生地を管轄する警察署に提出をします。
検察庁への提出も可能だが、第一次捜査権を持つ警察署の方が捜査力及び人員等からも良いです。
いきなり検察庁へ持っていくと警察署に提出するように要請されることが多いです。
ただし、経済事犯や贈収賄事件、政治家や警察官の犯罪などについては、検察庁が第一次的捜査機関として取り扱うこともあります。
|告訴告発を受けた警察に受理義務はあるか
警察が告訴を受けた場合は、捜査を遂げて、書類または証拠物を検察官に送付しなければならないのです。
判例で、告訴を受理しなかったことは刑事訴訟法241条に違反するとしたものがあります(東京地判昭和54年3月16日)。
一方で民事紛争の解決に捜査を利用しようとする場合や告訴マニアによる濫告訴の場合等もあり、実際には告訴は受理されにくいともいえます。
判例では、申立ての内容その他の資料から判断して犯罪が成立しないことが明らかであるような場合には告訴として受理することを拒むことができるとしたものがあります(大阪高決昭和59年12月14日)。
また、検察官は起訴または不起訴の処分をしたとき、速やかにその旨を告訴人に通知しなければならない義務が発生します。
さらに、不起訴の場合は、告訴人の請求があれば不起訴の理由を告げなければならないのです。
|被害届も告訴も捜査の端緒
犯罪の被害者となったことを届け出る被害届でも、告訴告発も捜査の端緒になり、捜査機関において捜査を開始することになります。
被害届と告訴の違いは、告訴は被害届と異なり
○警察は捜査を遂げて書類等を検察官に送付しなければならない。
○検察官は起訴、不起訴処分をしたときは告訴人に通知しなければならない
○不起訴の場合には、告訴にの請求により不起訴理由を告げなければならない
という義務が発生する点です。
したがって、被害届より捜査機関の捜査の開始を見込むことができると考えられます。
長くなるので告訴告発の概要について記載しましたが、続きは次回に・・・
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