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技能実習生が職場から失踪する?

外国人技能実習生が職場から逃げだしていなくなっているという。しかも1万人近いというから驚きですね。そしてこの制度も変わるようです。


|外国人技能実習生制度

外国人技能実習制度(以下「技能実習生」と表記する)は、出入国管理及び難民認定法別表第一の二に定める「技能実習」の在留資格により日本に在留する外国人が報酬を伴う実習を行う制度です。

企業等の実習実施機関が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施する企業単独型と、商工会等の営利を目的としない監理団体が技能実習生を受け入れ、傘下の実習実施者で技能実習を実施する団体監理型に大別することができます。
https://laws.e-gov.go.jp/law/431M60000010006

出入国管理及び難民認定法別表第一の二抜粋

|技能実習制度のメリット

この制度のメリットは大きく2つあるといわれています。
① 母国への技能移転
② 日本企業の人手不足解消

➤ 母国への技能移転
技能実習の目的は、技能実習生が母国に技術を持ち帰ることによって、母国への技能移転をすることです。
「母国への技能移転」の実現をするために、日本に在留出来る期間は最長でも5年と定められています。

➤ 日本企業の人手不足解消
この制度によって日本の企業も人手不足を解消できるというメリットがあります。

ちなみに、出入国在留管理庁によると、技能実習生は2023年6月末時点で約40万人余りの技能実習生が日本で働いています。

出入国在留管理庁:在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表より転載

|制度のデメリット・問題点?

〇 目的が損なわれる~「労働力」は副産物のはず
技能実習は実習生が母国に技術を持ち帰ることによって、母国への技能移転をすることが目的で、日本企業の労働力確保はいわば副産物であったはず。

しかし実態として、技能実習生を「労働力」として長時間、低賃金で雇用しているという。つまり、制度の趣旨・目的に反する運用が見られるのです。

〇 転籍ができない
技能実習生は原則として転籍することができません。
前記のように技能実習生の制度では、技能実習生は特定の雇用主に紐づけされています。

実はここにも問題があるといわれています。
雇用主と技能実習生という主従関係において、例えば、技能実習生が配属された実習先でハラスメントを受けた場合でも転籍ができないため、実習生が一方的に不利益を被る例が発生しているのです。

|技能実習生がいなくなる?

このようなことにより、技能実習生が配属企業等から失踪してしまい、所在不明、つまり不法残留者となっているのです。

日本で働きながら技能を学ぶ技能実習生のうち、職場から失踪する人は年々増加しています。

2024年1月現在の不法残留者数79,113人、そのうち外国人技能実習生は11,210人となっています(出入国在留管理庁:「本邦における不法残留者数について」)

出入国在留管理庁:「本邦における不法残留者数について」より転載

約11,000人もの技能実習生が不法残留者となっているのはなぜでしょうか?

先に書いたように、技能実習生と雇用主の紐付けられており制度上原則として転籍を認めないということがあるといわれています。

つまり、労働内容、雇用主等の使用実態、過酷な労働条件、職場でのトラブルなどなどから、働く場所を変えたいと考えても原則として「転籍」が認められておらず、結果として国に帰らなければならないことになるのです。

このため、技能実習生は、実習先から逃げだして所在不明となる事例が多いと言われています。

|国の対策

出入国在留管理庁は、そのような実態を踏まえ、現在では「やむをえない事情」がある場合には転籍を認めることにしています。

「やむをえない事情」の具体例として、暴行やハラスメントを受けている、重大で悪質な法令違反などがあった場合に、「転籍」を認めるとともに、ハラスメントなどの被害者がいた場合には同僚の実習生も「転籍」できると認めることとしているようです。

また、外国人技能実習制度に代わる新たな外国人雇用制度として「育成就労制度」に代わります(2024年6月法改正)。

|おわりに

外国人技能実習生の制度は、労働力不足の日本において、研修や実習という名目で労働力を確保するという点ではメリットがあり、技術の取得という面でも海外支援施策ともなり得ると考えています。

しかしながら、実態として雇用主との関係においては当局に救いを求めることがなかなか難しいのではないでしょうか。
そのため失踪する外国人労働者が多いのではないかと推察します。

そしてこの失踪者の中には生活のため、強盗や窃盗などの犯罪に手を染めている人も多いのかもしれません。

国の安全・安心を確保するため、外国人技能実習生制度、そして新たな「育成就労制度」が適切に運用されることを望みます。

<参考>
外国人技能実習生の実施者に対して行ったR5年度の監督指導、送検等の状況

本邦における不法残留者数について(令和6年1月1日現在)https://www.moj.go.jp/isa/content/001415150.pdf

https://www.moj.go.jp/isa/content/001415150.pdf


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