自動車運転者を使用する事業場に対して行った令和５年の監督指導、送検等
今回も労働問題。
厚生労働者省が公表した「自動車運転者を使用する事業場」に対して行った監督指導、送致等についてです。
自動車運転者については勤務環境が厳しいといわれていますが、さて、どういう状況にあるのでしょうか？
ちょっとひもといてみます。
｜概要
厚生労働省は、毎年、全国の労働基準監督署等が行っているトラック、バス、タクシーなどの自動車運転者を使用する事業場に対する監督指導（立入調査）や送検等の状況について取りまとめています。
先日、令和5年をとりまとめ公表しました。
｜令和５年の監督指導・送検の概要
以下、厚生労働省の公表データを元に説明します。
監督指導を実施した事業場は3,711事業場。
このうち、労働基準関係法令違反が認められたのは、3,049事業場（82.2％）。
また、改善基準告示※違反が認められたのは、1,999事業場（53.9％）。
※「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」（平成元年労働省告示第７号）
主な労働基準関係法令違反事項は、
（１）労働時間（46.9％）
（２）割増賃金の支払（21.2％）
（３）労働時間の状況の把握（8.0％）
主な改善基準告示違反事項は、
（１）最大拘束時間（39.2％）
（２）総拘束時間（30.7％）
（３）休息期間（28.1％）
重大・悪質な労働基準関係法令違反により送検したのは54件。
｜監督指導の状況
令和５年に全国の労働基準監督署等において、労働基準関係法令違反が疑われる自動車運転者を使用する3,711 事業場に対して監督指導を実施。
その 82.2 ％に当たる 3,049 事業場で同法令違反が認められた。
業種ごとの監督実施事業場数、同法令違反の事業場数及び主な違反事項は、下表のとおりである。
※表中の 内は 、監督実施事業場数に対する 違反率 。以下同じ。
業種ごとの改善基準告示違反事業場数及び主な違反事項は下表のとおりであり、改善基準告示違反が監督実施事業場数の53．9％に認めれた。
｜送致状況
令和５年に全国の労働基準監督署等において、自動車運転者に関する重大・悪質な労働基準関係法令違反が認められた事案として送検した件数は、
54 件であった。なお、業種ごとの件数は以下のとおりである。
なお、送検法条文の内訳では、労働時間（労働基準法第32条）、安全基準（労働安全衛生法第20条）、労働賃金の効力（最低賃金法第4条）が多くなっている。
｜国土交通省との連携
➤ 地方運輸機関との相互通報
自動車運転者の労働時間等の 労働条件の 確保・改善 を図るため、労働基準
監督署等 と地方運輸機関が、その監督等の結果 改善基準告示違反 を相互
に通報 している 。
令和5年は、労働基準監督署等が通報を受けた件数がこの3年間で最も多くなっている。
➤ 地方運輸機関との 合同監督・監査
自動車運転者の労働時間等の労働条件の確保・改善を図るため、労働基準
監督署等と地方運輸機関が連携して、合同で監督・監査を行うことにより、
効果的な指導を行っている。
例年トラック事業が最多になっているようだ。
｜厚生労働省のコメント
厚生労働省では、引き続き、自動車運転者を使用する事業場に対し、労働基準関係法令などの周知・啓発に努めるとともに、法令違反の疑いがある事業場に対しては監督指導を実施し、自動車運転者の適正な労働条件の確保に取り組んでいきます。
また、度重なる指導にもかかわらず法令違反を是正しないなど重大・悪質な事案に対しては、送検を行うなど厳正に対応していきます。
さらに、令和４年12月から、トラック運転者の長時間労働の是正のため、都道府県労働局に「荷主特別対策チーム」を編成し、長時間の恒常的な荷待ちを発生させないこと等について、発着荷主等に対して要請する取組を行っています。
｜おわりに
記載したように全国の労働基準監督署等は、労働基準法令違反の疑われる自動車運転者を使用する事業場の監督指導を行い、その82．2％に同法令違反が認められたという実態を踏まえると、引き続き適正な監督指導を行い、事業場の適正な労働管理を進めていただきたい。
＜参考データー＞
参考：自動車運転者の「改善基準告示」等の主な改正内容
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